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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー大魔界の異常ー
156/208

 150 違和感とごまかし


 〜〜〜〜〜


 「言っただろう?僕はもう1人の君、悪魔だよ!」


 エクサーのは刃物で背中を投げられた感覚と共に悪寒を感じた。

 もう1人のエクサーの笑顔は恐怖を与えるのとは裏腹に純粋無垢であり、ただ本当に己の喜びに笑っていたのだ。


 右の額から禍々しく後ろに捻じ曲がった角。爪と発達した犬歯。筋肉質でありながらそれを皮膚下に抑え込んだ体のスマートさ。悪魔と呼んでも全く差し支えのない状態だった。


 もう1人のエクサーは勢いよくエクサーを投げ捨てた。


 「僕は君だ!ただし悪魔のね。僕は君の身体(なか)で息を潜めていた悪魔の人格だ。詰まるところ君は人間の人格と言ったところだろう。」


 エクサーは薄く耳に入ってくるもう1人の自分の言葉を聞きながら、呼吸を整えるので忙しかった。

 そして、ある程度呼吸が戻ってくると、もう1人の自分を純粋な怒りの下、睨んだ。


 「君は知らないだろ。君の過去がどうなっているのか、生い立ちがどうなっているのか。教えてあげよう。それを知れば、どういうことかが分かるはず。」


 もう1人のエクサーはエクサーに手を伸ばし、頭を掴もうとした。

 エクサーはそれをパシッと一撃で払った。そして、もう1人の自分に拳を叩き込もうとした。


 「はんっ…」


 だが、そんなものは儚く散った。

 悪魔の状態のもう1人の自分に攻撃が届くことはなく、衝撃波で軽々と吹き飛ばされた。


 「くっ…!」

 「言っただろう?今の君に魔力や魔法は使えない。それは今僕の力だからね。君には年相応の身体能力よりも少し低い程度の()()の力しかないんだよ。ただ(ノーマル)の人間と悪魔とでは絶対に埋められない差ってのがあるだろ?それがこれ。このまま君を痛めつけ続ければ、いつかは主導権は僕に移るだろうけど、痛いのは嫌だろ?僕だって嫌だ。だから、僕が僕に送る譲歩として、説得をしているんだ。さぁ、所有権を渡してくれ。」

 「…断る!お前のことを僕は僕と認めない!!」

 「…そうか。」


 もう1人のエクサーからいきなり笑顔が消えると、エクサーを勢いよく蹴り飛ばした。


 「際限の無いこの精神世界に本当にそれが無いかを知りに行こうじゃないか!知るのは僕としても好きだからね。」


 そう言ってもう1人のエクサーは蹴り飛ばしたエクサーに追いつき、蹴り飛ばしを繰り返し、どこまでも進んでいった。


 〜〜〜〜〜


 地獄・クリスト城(23階)


 (さぁ、そろそろ気づいてもらわなければ。)


 エクサーの今の状況を全く知らないA2は割と呑気めで対処し切れると希望を抱いていた。だが、それもそろそろ心配の域に入る。


 エクサーの暴走癖にはとある理由があったのだ。A2はそれが何故かを知っていた。だが、それを解決する術はエクサー自身でしかない。そのため是が非でもエクサーに解決してもらうしか無いのだ。それは今後、魔力を使う者として生の道を歩む者としての避けては通れない障害物だった。


 だからA2はそれにエクサーが自分で対処する機会を与えるために、あえて苦しんだエクサーを傍観した。


 「!」


 ここでA2はエクサーの微細な変化に気づく。理由はわからない。ただ、長くを共にしたエクサーの雰囲気が一瞬、風に煽られた火のように微弱に揺らいだように感じたのだ。


 (まずいかな?)


 A2は勢いよく移動していた体を、視認できない結界の床で滑るように減速し体を止めた。結んだ白髪は後ろに(なび)き、A2はそこでディクトを仕舞い、無抵抗に堂々と突っ立った。


 エクサーはこれに突っ込んでくる。無抵抗であれば攻撃しない選択肢はどこにも無いからだ。


 すると、エクサーの攻撃が当たるか当たらないかのギリギリの瞬間に、A2は口を開いた。


 「『ショック』」


 『ショック』はエクサーの強固な守りを上回り、エクサーを気絶させることに成功した。A2のあの無抵抗にも見えた行動は、エクサーに『ショック』が効くほどまで、魔力を貯める目的があったのだ。


 エクサーはドサッと倒れた。


 〜〜〜〜〜


 「死にかけじゃないか…」


 真っ白な空間で血こそ出ていないものの、大きな傷口や青ずみのあるエクサー。それをもう1人のエクサーは見下ろす形で立っていた。


 もう1人のエクサーはあまりに人間の自分が弱い存在かを認識させられた。それはそうだ。魔力という人間の持ち得ないエネルギーを使って仕舞えば、人間など造作が無いのだ。


 「生い立ちを教えようか…そうすればきっと、君も僕をわかってくれるはずさ。」


 もう1人のエクサーはしゃがみ込んだ。

 エクサーは耳では聴こえているが、今、何をされても抵抗する力はあらず、無抵抗そのものだった。


 「まず、なぜ僕はこんなに特異な存在なのかを教えてあげよう。それは…人間としての君は一度死んだからだ。なんのことかわからないだろう。だが、これは事実だ。君は一度、人間としての君は生まれ落ちて1年で死んだんだよ!!だから僕が生まれた!!大丈夫だ。心配しなくても、今、教えてあげるからねぇ。」


 もう1人のエクサーは微笑んで次の言葉を話そうとした次の瞬間。


 「!」


 何かを感じ取ったのか、周囲を警戒し、あたりを焦った様子で見回し始めた。


 「はぁ…クソッ…!今日はここまでみたいだ。もう少しで君を抑え込めると思ったが、横槍が入ったみたいだ。でも大丈夫…」


 すると、両者の体が光の粒子となり始めた。


 「次会った時は、絶対に完全なものにするからね。」


 〜〜〜〜〜


 「やっ!おかえりエクサー。」


 目を覚ましたエクサーはの視界に映るのは、視界の半分に見える天井ともう半分のコチラをニコニコ覗き込んだA2の顔。目に入る情報からして、どうやらエクサーは今、仰向けになっていることに気づいた。

 A2は結界術を解除し、元の部屋に戻したようだった。


 頭がぼやぼやする。眠気の無い寝起きのような感じだった。

 そんな、頭でエクサーはA2に聞いた。


 「ねぇ、A2。」

 「ん?なんだい?」

 「僕って一回死んだの?」


 A2はこの言葉に動揺を見せず、表情は一切変わらなかった。ただ、なんとなく何かを押し殺しているような、噛み殺しているような気がした。


 「…お疲れのようだね!じゃあ、なんで今の君はここにいるんだい?そうなってしまうだろ?ねぼすけさんでは困るよ。さぁ、みんなの元に帰ろうじゃないか。」


 A2はエクサーの前に手を差し出し、立ち上がる手助けをしてくれた。だが、やはり違和感はある。話すスピードがこの話を深掘りさせないために早い気がした。


 エクサーは違和感を抱えながらA2の手を取って、立ち上がった。


 そして、2人で部屋を後にした。


 ーー終ーー



 なんか『もう1人の自分』『もう1人のエクサー』とか打つのがめんどくさいです。

 なのでこの2つを『ドッペルゲンガー』とでも呼びます。厨二臭いですがそうします。

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