142 過去と別れ
地獄・???
ミカエルに魔術と魔力の半分を没収されたA2達5人は、名の無い草原に落っことされた。
草原で草を食す動物達はいきなり落ちてきたA2達に大ビビり。颯爽と足音を荒げて逃げて行ってしまった。
「イタタタ…久しぶりだよ、尻餅をつくのは。」
A2とラズロとキキガノは尻餅をついて着地、フルシアンテは顔面からいった。
「顔、壊れちまうわ。」
フルシアンテは激痛の走る顔面をペタペタと触った。
A2は自身から魔術と魔力の半分が失われたことをひしひしと感じていた。この2つを失うとなんと言うか、何かを失ったという浮遊感に近いものに襲われていたのだった。
「いやぁ、ミカエルって結構容赦ないんだねぇ。」
ラズロは笑いながら立ち上がった。
「まさか、本当にやってくるとはね。」
その次にキキガノも立ち上がった。
ナールガは気絶しているために反応は見せないが、それ以外の4人は魔力の半分と魔術を没収されたことに特に怒りを見せるわけでもなく割と他人事のようだった。
もちろん2つを没収されたことは痛手ではあったが、まず前提として莫大な魔力量を持ち合わせている4人にとっては、魔力が半分残っているだけでも十分すぎる量だったのだ。だから、4人は特に取り乱すことはしなかった。
すると、ナールガが気絶から我に帰ってきた。そして、A2は覆っていた『バリア』を解いた。
「あぁ?どこだ?」
「おはようナールガ!」
ラズロは覗き込むようにナールガに話しかけた。
「ん?なんだ?」
ナールガは体に違和感を覚えた。
魔術と半分の魔力を没収されたことを知らないナールガには身に覚えの無い浮遊感が体を支配していた。
その様子にA2達はことの事情を話したのだった。
すると、ナールガは大激怒した。
「なんでだ!止められたことだろうが!」
「そんなに怒らないでくれよ。」
「A2、特にお前だ!状況がどうなっていたかは知らない。ただ、確実に状況を打破するだけの力がお前の魔術にはあっただろ!!」
「確かにねぇ〜。」
「クソが!やっぱり俺はお前が嫌いだA2!」
ナールガはA2の胸ぐらを掴んだ。その形相は怒りを体現しているかのよう。一方のA2は特に何食わぬ顔で笑っていた。
「ちょっと2人ともやめn…」
ナールガは止めに入ろうとしたキキガノを睨みつけると、衝撃波で吹き飛ばした。
「痛いなぁ。」
キキガノが立ち上がると、キキガノの頭は180°回転してしまっていた。それでもキキガノは平然と立ち上がり、首を元に戻した。
「A2。お前のその楽観的な部分が大嫌いだ!」
「私は君が好きだけどね?面白いから。」
「チッ…」
ナールガは掴んでいたA2の服と一瞬だけ一層強く握ると、力を緩めて手を離した。
そして、A2に無言で背を向け、歩き出した。ナールガはこの場所から帰ろうとしていた。
「じゃあね〜ナールガ〜〜!」
ラズロは元気よく手を振った。
場違いにもほどがあったが…
そのナールガの後頭部にいきなり何かが投げつけられた。
「ってぇなぁ…」
ナールガは血管を湧き上がらせて振り返った。
「それあげるよ。今の私には必要の無いものなんだ。友との別れの品と思って持って帰ってくれ〜。」
ナールガはイラつきながらそれが何かを見ると、布に包まれた何かだった。
ナールガは嫌々それを拾い上げ、布を捲ると中には何かの右腕が入っていた。
「えぇ!それ『サタンの右腕』じゃん!あげていいのぉ〜?」
「言っただろう?今の私には必要ないんだ。」
ナールガはそれを再度布に包むと、無言でどこかに『ワープ』していった。
「ん”んっ、あ”ぁ〜〜。解散だ解散!眠ぃわ。」
フルシアンテは伸びをした。
「これからみんなはどうする気だい?」
「慰安だ慰安。適当な場所で慰安タイム突入だ。」
フルシアンテはどこかの落ち着く場所で戦いの疲れを癒す気だった。
「僕は…旅行でも。」
キキガノはプラプラする気だった。
「私は決まってないなぁ〜。私も慰安したいなぁ〜。」
ラズロはチラッとフルシアンテを見た。
「来るな。お前が来ると落ち着けん。」
「私は別にいいけどねぇ。」
「供給過多はやめろ。需要がねぇ。」
A2はそれをニコニコと見守った。
「A2はどうするの?」
「私は…便利屋でもしようかな?」
「え!じゃあ今度何か頼むね!」
「本当にできたらにしてくれ。」
「できるよ!」
4人は黙って顔を見合わせた。
「君たちとはここでは終わらない気がするよ。」
「じゃあ、また会おう。」
そう言って4人はクルッと同時に背中を向けると、それぞれ方向に歩いて行った。
その4人は顔こそ見えないがどこか満足げな顔をしていた。
「おい!お前、ついてくるな!」
「いいじゃな〜い。」
「離れろ!抱きついてくるな!!」
ラズロとフルシアンテの喧嘩を聞きながらA2はどこかにワープしていった。
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話は現在に戻る…
地獄・バステカン城
「ってな感じが巡り合いかしらねぇ。ねぇ〜。」
ラズロはフルシアンテに同情を求めた。
「まぁクッソなげぇ話だったけどな。」
「あ〜悪口言ったぁ〜。」
「あ〜悪かった悪かった。」
エクサーは初めてA2と言う悪魔を少しだけでも知れた気がした。
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A2達五芒星が解散して10年後…
地獄・サランカス
ここには女の悪魔の方が異様にくっついているカップルがいた。
悪魔達でごった返すサランカスの中でこのカップルは通行人に少し嫌な顔をされようともお構い無しに悪魔達をかき分けて進んでいった。
そのカップルはお目当ての混んでいるカフェに入ると奇跡的に空いていた外に置かれたテーブルと椅子に座った。
「ねぇ〜何にする〜。」
「なんでもいい。」
「なんでもいいが困るのよねぇ。」
イチャイチャしながらメニューを見るカップル。そこに1人の白髪をまとめた赤眼の悪魔が話しかけてきた。
「すまないね。混んでいるので相席しても?」
「どうぞどうぞ。」
「すまないね。」
その悪魔は椅子に座って、胸ポケットから新聞を取り出し読み始めた。
「あのぉ〜、何か頼みますか?」
女の悪魔の方が座ってきた悪魔に聞いた。
「あぁ、紅茶をティーポットでお願いできるかな?」
「は〜い。一緒に注文するわねぇ〜。すみませーーん!」
女の悪魔の方が店員を呼び、一緒に注文をした。
「ねぇ、あなた名前は?」
「私のでいいかい?」
「それ以外に誰か?」
「ハハハ!そうだね。」
「私の名前はA2。よろしく。」
「A2?不思議な名前〜。」
この悪魔こそA2であり、相席しているカップルこそが、後のS,BとF,Dだった。
ーー終ーー
こんなに長くなるとは思ってもいませんでした。
な〜〜っげ。
一応過去は終わりです。とりあえず疲れました。
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ちなみにキキガノは放浪の中でI,Bに出会ってます。