129 到着!ミカエル親衛隊!!
天界・天国の扉
フルシアンテに軽く手玉に取られ、死の寸前まで追い詰められたロテぺの元に、ミカエルの派遣した『ミカエル親衛隊』の4人が到着した。
首から上を吹き飛ばされた倒れたフルシアンテの体は、頭を失っても尚、ぬるぬると首のない状態で立ち上がった。そして、吹き飛ばされた顔を再生した。
「あ”あ”ぁ…いきなり頭なんて吹き飛ばしやがって。腹に魔力備蓄しといてよかったわ。」
フルシアンテは話し方こそ少しフランクだったが、ミカエル親衛隊を見る目はいきなり頭を吹き飛ばされたことによる怒りが宿っていた。
「悪魔の分際で…天界に地を踏むなど一体どういうつもりだ?」
『ミカエル親衛隊・主席』エクリエルは、眼鏡をクイっと指で上に上げると、フルシアンテを睨み返した。
「すまなぁ、お前の攻撃でおまけに血も染み込んじまったわ。」
フルシアンテは煽り返すように、自分の首から吹き出て地面に付いた血を踏んづけて染み込ませた。この行為はエクリエルを露骨に逆撫でする行為だった。
「やはり…お前達悪魔は粛清に値する。存在そのものが…」
「へっ、随分と偏った思想をお持ちのようだ。悪魔の方がまだ聞き分けがいいと思うぜ?表面上でも歓迎ぐらいはするからよぉ。」
すると、エクリエルの背後から誰かがエクリエルを強く蹴り飛ばした。
「ちっ…!」
エクリエルは少し踏ん張って耐えた。この場の誰も一瞬の出来事すぎて理解に落とし込むに至らない蹴りの速さ。その蹴り主はフルシアンテの隣に現れた。
「ナールガ…オレの獲物だろうが。」
「黙れ、うだうだおしゃべりしてるお前が悪い。」
「は?ふざけんな。」
「だが、もう戦線布告した。お前は残り物とでも遊んどけ。」
ナールガは一直線にエクリエルとの戦闘を始めた。
「フレリエル、俺たちも始めるか?」
金髪の長髪を逆立てた髪型に鋭い目。ゆったりとした白い服にマントを身に付けている。長い下にピアスを開け、耳にも大量のピアスを開けた、一見すると悪魔に近い容姿をした天使はフレリエルに聞いた。
この天使はカイエル。『ミカエル親衛隊・四席』を任された天使だった。
「そ、そうですね。」
それに少しおどおどとした返答をする天使がフレリエル。『ミカエル親衛隊・次席』の天使で和装に身を包み、丸眼鏡の先に見えるパッチリとした目。少し気弱さの感じられる天使だった。
「…」
この何も喋らず、フルシアンテを睨む天使はトロリエル。口元まで隠れるフード付きの白いパーカーをつけた天使で『ミカエル親衛隊・三席』の天使だった。
「フルシアンテ、おっ先〜〜。」
どこからかラズロの声が聞こえた。ラズロはフレリエルの近くに姿を現すと、フレリエルをどこかに連れて行った。
「ちっ、つえぇ奴取られちまった…お前でいいか。」
フルシアンテは主席、次席と強い天使を早い者勝ちされ、落胆していると、とりあえず、手応えのありそうなカイエルの方に挑むことにした。
そして、残ったトロリエルは逃げながら淡々と天使を殺すキキガノの元にワープした。キキガノは目の前に立ち何も話さないが、殺意だけは向けてくるトロリエルを見て、一層めんどくさそうな顔をした。
「あのさぁ、僕何もしてないんだよ?勝手に君たちが排除しに来るから捌いてるだけで、ほっといてくれれば何もしないのにさぁ。とりあえず、悪魔だから排除って人間みたいに単調で一方的な判断すぎない?自己防衛の権利もダメなのかぁ。」
トロリエルはうだうだとしゃべる目の前の悪魔に怒りを抑えられず、突っ込んで行った。
「はぁ…これだけ言ってもこうなるか…しょうがないね。」
そう言ってキキガノもトロリエルを迎え撃った。
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天界・ガブリエル宮
「ふんふんふんふ〜〜ん。」
A2は鼻歌を歌いながらガブリエル宮に姿を現していた。
「おい、貴様!侵入者の悪魔だな!!そこで止まれ…ぐおっ!…」
ガブリエル宮の見張りの天使たちにも当然、悪魔が天界に侵入してきたことはすでに伝わっており、明らかに天使とは正反対のオーラを醸し出すA2は真っ先に天使たちの攻撃の的になっていた。
そんな天使たちをA2は魔法を使うことなく、魔力で押し潰して殺し進んで行った。
潰された天使たちから流れ出た血でA2の歩く足元は真っ赤に染まり、そこを容赦無く通るA2はレッドカーペットの上を歩いているようだった。
「お邪魔するよ。」
そんなA2は見張りの天使たちを余すことなく殺し、ガブリエル宮の入り口に立った。
コンコンッ
一応、礼儀として扉のノックは忘れず行い、A2はガブリエル宮の中に入って行った。
A2が入って思ったことは案外中は綺麗に整えられているということだった。いくら精神的に不安定なガブリエルとは言え、お付きの天使はいるためだろうか、ホコリ1つもない状態で清潔に保たれていた。だが1つ門ん区をつける場所があるとすれば、照明が弱く、ややくらいと言ったところだった。
中はやけに静かだった。少しぐらい中にいる天使が襲ってくる可能性があると思っていたが、そもそも他の天使がいる気配もない。流石に少し警戒せざるを得ない状況だった。
「おや?」
A2は自身の周囲に流れる違和感を感じた。なんというか平衡感覚が薄く感じるような、少し浮遊感のある感覚を覚えたのだ。
すると、A2の目に映る景色が、万華鏡の中にいるような綺麗で不規則な虹色の世界に変わった。そして、その景色はいきなりブラックアウトすると、水面に落ちた雫のような波紋と共に、A2はどこかの一室にワープさせられた。
そこは薄暗く、ホコリ臭い。何かに引っ掻かれたような傷を残すカーペットや壁。そんな部屋の窓際の椅子に何かが純白の羽根に包まれて座っていた。
『何か』というのはそれが何なのか誰なのかがまったくわからないからで選んだ言葉であり、実際のところ羽根がある時点で天使であることは分かりきっていたことだったが、A2もその『何か』に?を浮かべるのだった。
すると、いきなりその純白の羽がゆっくり開くと、中から椅子に体育座りで座り、顔をうずくめる白い肌に緑髪の少女の天使が姿を見せた。
目は泣いた後なのだろうか、少し浮腫んでいるようでいるように見え、目の下は少し赤らんでいた。食事も摂っていないのだろう。露出して見える体の各所は痩せ細っていた。
だが、それでも美しさは残っていた。この弱々しさがある種、生き生きとした美とは正反対の貧美な美しさを醸し出していたのだ。
少女の天使は椅子に体育割をした状態でうずくまった顔をA2に向けた。
「あなたが侵入者の悪魔…」
少女の声は弱々しく細く、それでいてどこか心地よさを感じる声だった。
「そうです。A2と申します。お見知り置きを。」
「…そう…なんのよう?」
「フフフフフッ…話が早くて助かるよ。あなたに1つ提案をしにきたのです。受け取ってもらえるかは分かりませんが…きっとお気に召すと思いますよ。」
「…早く言って…さもないなら殺すわよ。」
「おぉ〜、怖い怖い。では、本題に入りましょう。私の願いを聞いてください。そうすればあなたの愛したサタン…いや、ルシファーに会わせてあげますよ。」
「!!」
天使は思わず椅子を後ろに飛ばす勢いで立ち上がった。
「信用してください。あなたの前に嘘をつきにきたなんてそんな非常識なことはありませんからご安心を。『天使長・ガブリエル』さん。」
そう、このA2の目の前にいる天使こそ、『天使長・ガブリエル』その人だった。
ーー終ーー
フレリエルとトロリエルが出てきましたが、この章の最初にA2の両サイドにいた天使と同一人物です。その頃と比べて、若いとかそういうことは全くないのでまったく同じだと思っていいです。