127 リベリオン(?)
「レボリエル、初めて聞いた〜〜。」
キキガノを除いた4人の耳にはどうやらレボリエルという天使の名は初耳の様子だった。
「でも、なんでそのレボリエルって天使がオーラムサイトたちを助ける?そんな義理はどこにも見当たらんぞ?」
フルシアンテが、もぐもぐしながらキキガノに聞いた。
「わからない。だって僕はレボリエルじゃないからね。だからこれは僕の意見であり予想だ。レボリエルは親衛隊の主席としてガブリエルに対しての忠誠心というのが高いと思う。主人の調子が悪ければそれを助けようとするために反乱まがいな行為に走ったんだろう。」
「つまりは、ルシファーの堕天に心を痛めたガブリエルにもう一度、ルシファーを見せるための復活の手伝いをしたってわけか。」
「多分。結論的にルシファー(サタン)の復活には『頭部』『右腕』『左腕』『右足』『左足』を集める必要がある。その中で最も盗む難易度が高いのがミカエルの『水晶結界』で管理されていた『頭部』。それを早い段階で地獄に渡しておきたかったというのがレボリエルの腹の内だと思う。」
「ふんっ、主人に使える犬としちゃあ当然だな。」
「あれ?A2、どうしたの?」
「…ん?いやいやなんでもないよ。」
ラズロが不意にA2に目をやった。そのA2は眉間に皺を寄せ、顎に手を置き、何やら真剣に考え事をしている様子だった。ラズロに気づかれるや否や、A2はこれ以上考え事を掘られまいと立ち上がった。
「では、みんな準備をしよう。」
「もう行くのか?」
「もちろんさ。生憎、私は温かい料理は温かい状態でいただきたい主義なんだ。」
「わかった。」
ナールガ、キキガノ、ラズロ、フルシアンテの順に席を立つ。
「では、地獄の扉に行くとしよう。」
5人は地獄の扉の元へワープした。
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地獄・地獄の扉
地獄の扉。この場所は普段A2たちのいる大陸とは違い、地獄の大陸から南西の切り離された位置にある孤島に立っている。
地獄の中でも『大海の大穴』と『地獄の扉』の2つは悪魔たちの中で近寄り難き場所とされている。その理由は魔力濃度が高いことが挙げられる。
『大海の大穴』は強大な魔力の悪魔たちのいる大魔界への直行ルートであるため、大魔界から溢れ出す魔力によって魔力濃度の高い魔力が流れ出している。地獄の扉に関してはなぜここまで魔力濃度が高いのかは解明されていない。
魔力濃度の高い魔力が多く充満する場所というのは汚染区域のようなものであり、もし、悪魔たちがこの区域に入れば、例え、守りを万全にしていたとしても、フォルテがナールガに殴られた時のように魔力によって魔法が使えなくなり、魔力供給の飽和により死に至ってしまう。そんな場所である。
「あれ?A2は?」
ラズロ、ナールガ、キキガノ、フルシアンテの4人は無事に地獄の扉に辿り着くことができたが、なぜかA2の姿はそこになかった。
そこに少し遅れてA2が到着。
「待たせてしまってすまないね、これを取りに行ってたんだ。」
すると、A2は優しく何かを4人に投げた。4人が手でそれをキャッチすると手の中を覗いた。そこに握られていたのは、虹色に輝く石『魔石』だった。
「なんだこれ食えんのか?」
キキガノ、ナールガ、ラズロはこれが何かをわかっていたが、フルシアンテはこれが何かわかっていない様子だった。そのため、まったく迷わず食べ物だと勘違いして魔石を噛み砕いた。
「ボリボリ…美味しくねぇな…」
「お前、これが食い物に見えるのか…病気だな。」
流石のこの奇行にナールガも少し引き攣った表情をした。
「フルシアンテ。これは魔石と言ってね、魔力を回復するためのものだよ。だから、手で割ったりして使うんだ。別に噛んでも問題はないが、あんまりそうやる者は多くないかな…」
「そうなのか…ほんとだ!魔力が回復しやがった!!すげぇ!」
A2はフルシアンテを優しく諭した。4人は普通に手で割って魔力を回復した。
「ふぅ〜、結構魔力消費してたんだねぇ〜。」
A2は扉の前に立った。
「準備はいいかい?」
「「おう。」」
「「うん!」」
「では、行こうショータイムだ。」
A2は魔術を使って地獄の扉を破壊した。
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天界・天国の扉
「ロテぺさん。起きてください。寝すぎですよ。」
「んん〜。あ〜〜ぁ。」
天国の扉の門番・ロテぺは部下に起こされ、目を覚ました。赤子のような容姿をしているため、寝ている様子は赤ちゃんそのものだった。
「平和でいいですねぇ〜、これが続いてくれるといいですね〜。」
ロテぺがここでまさかのフラグを立てた。次の瞬間。
バーン!!!
とてつもない破壊音と共に天国の扉が破壊された。
「なっなんですか!いきなり!!」
ロテぺとそこにいる数人の部下たちもいきなりの事態に驚きを隠せていなかった。
「邪魔するぜぇ〜。」
壊れた天国の扉が巻き上げた砂ボコリの先から横並びの5体の誰かの影が現れた。そして、砂ボコリが晴れるとロテぺたちの目には5体の悪魔の姿があった。それをロテぺたちはそれをポカーンと見つめた。
「おいおい、そんなに呆然と見ていていいのか?一応侵入者だから排除にかかった方がいいんじゃないのか?」
ロテぺたちが驚くのも無理はない。まさか天国の扉が壊れるだなんて誰も想像していなかったし、その先から悪魔が5体現れたのだ。異例事態も異例事態だった。
「あ、あなたたちはなんなんですか!」
ロテぺが珍しく声を荒げて言った。
「なんなんですかって…」
フルシアンテは4人を見た。
「俺たちは…反逆者ってところか?」
「いや、反逆者ではないと思うが…」
「そうか…反逆はしてねぇもんな。」
「「「「「ハハハハハ!!」」」」」
「じゃあ、五芒星とでも名乗っとくか。」
驚きMAXのロテぺたちとは対照的に団欒な雰囲気を醸し出すほどに余裕のある5人。この謎の余裕がロテぺたちを余計に混乱させた。
「まぁいい。こっちは殺る気極まってんだ。天使を殺せる機会なんてそうそうないからなぁ。」
フルシアンテは両手をポキポキと鳴らした。
「み、みなさん。頼みますよ。この悪魔たちを止めましょう!!」
ロテぺの部下たちもやっと5人を止める気持ちが追いついてきたようだった。そして、一斉に5人に向かって攻撃を仕掛けてきた。
「そう来なくっちゃぁなぁ!!おい、ナールガ、ぶっ殺した数で勝負しようぜ。」
「はぁ?なんでそんなことしなくちゃ「よし、決まり。」
「おい、話を聞け!」
ナールガの制止を虚しく、どうやら勝手に天使の討伐数でバトルが始まるらしい。
「と、言うことでみんな楽しんでくれ。私は用事があるから失礼させてもらうよ。」
いきなり何を言い出すかと思えば、そう言ってA2はどこかにワープして行った。
「アイツもアイツだ。なんでどっか行けるんだ、この状況で。」
ナールガもA2の自由さに頭を抱えてため息を吐くばかりだった。
「うぉぉぉぉぉ!!!行くぞーーー!!!」
フルシアンテは興奮を抑えられないクチャクチャな走りで天使たちに突っ込んで行った。
「じゃあ、私が2番〜〜〜。」
ラズロもフルシアンテに続いて突撃していった。流石にフルシアンテが一方的に決めた勝負もあり、じっとしているわけにもいかないので、ゆっくり歩いて天使たちの元へ歩いて行った。
キキガノはその3人の後ろ姿を見て、その場に立って天使たちがこっちに来るのを待っていた。どうやら、後方で受け身のスタイルを取る気のようだった。
ーー終ーー