125 もう1祭り
地獄・???
砂ボコリを含んだ風がナールガを吹いた。砂ボコリはナールガの鼻の中に侵入すると、むずむずとした感覚で、ナールガは目を覚ますと、急いで体を起こした。右にはラズロ、フルシアンテ、キキガノの3人が気を失って倒れてい流のが目に入った。
「おはよう。ナールガ。君が一番だ。」
ナールガは声の方を急いで振り返ると、近くの石に腰を据えたA2が優しく手を振っていた。ナールガは頭に少しの痛みを感じると右の後頭部を数回殴ってA2に近づいた。
「何があった?」
「う〜ん。私も自分の攻撃に巻き込まれてしまったが故、よくわからないが、一回世界は滅んだんじゃ無いかな?」
「冗談…でもあながちなさそうだな。あの規模魔力量が成した技だ。それぐらいあってもおかしくない。」
「ちょっと出力を誤ってしまってしまってしまってね…」
「でも、なんで俺たちは生きてる?」
「多分、神が元に戻したんじゃないかな?せっかく作った世界だし。」
「御伽噺チックだな。だが、本当にお前が世界を壊したなら、その説も信憑性がありそうだ。」
ナールガはクルッとA2に背中を見せると、どこかに歩き始めた。
「最初はどこの馬鹿が誘って来たのかと思って期待はしていなかったが、想像以上には楽しめた。じゃあな。」
どこかへ去ろうとしているナールガをA2は笑って呼び止めた。
「どこに行く気だい?」
「疲れたんだ。休暇でも。」
「大魔界にでも帰るのかい?」
「そのつもりだ。一緒に来るか?」
「そんなことよりも面白いことを思いついたんだ。聞いていくだけなら損はないだろ?」
A2の笑みにナールガもニヤリと笑って返した。
すると、キキガノ、フルシアンテも目を覚ましたようだった。
「あぁ、クッソ。頭痛てぇ…」
フルシアンテは頭痛にブツブツ言いながらもすぐに起き上がったが、キキガノはまだどこかふわふわした浮遊感を感じ、あぐらになって座っていた。キキガノの目には景色全体が白く、霞んで見えていた。
「おーい、君たちおはよう。こちらに来てはいかがかな?」
そんな2人をA2はこちらに呼んだ。
ーーーーー
「で?何があった?あの後どうなった?」
「はぁ。また答えなくはいけないのか…」
「とっとと教えろ。」
「世界が壊れました→神様が戻してくれました。OK?」
クッソ適当に教えたA2。横でホワホワ夢の中状態のキキガノはともかく、フルシアンテは正常に戻った理解力を持ってしてもよくわからん解説だった。
「じゃあ、お前はあの攻撃で世界を壊したってわけか?」
「まぁね!」
「でも、なんで神が干渉したってわかる?見たわけでもないだろ?」
「どちらにせよ、私の攻撃で世界が一度壊れたのは間違いない。単純に出力をミスしたから。じゃあ、なぜ一度破壊された世界で今、私たちはこうしていられるのか?そんなもの破壊された世界の外側からの力しかない。それにそんなことできるのなんて神ぐらいしか思いつかないしね。」
「珍しいことだ、神が干渉してくるとは。」
「それほど一大事だったというわけだ。」
世界を一度破壊しておいて、まぁなんとも人事のA2。
「ところで、お2人で何をお話ししてたんだ?恋バナか?」
「そんなわけあるか。現実を見ろ。」
「たわいもない話さ。君たちが思った以上にお寝坊赤ちゃんだったから談笑をね。」
「バカにすんな。個人差だ、個人差。」
「おい、A2。そろそろ全員起きたんじゃないか?」
「ほんとだ。」
「何言ってんだ?ラズロを忘れて…」
「よく見ろ。そいつの魔力が揺らいでる。意識を取り戻した証拠だろ?」
フルシアンテがよく見ると、寝転がったラズロから滲み出る魔力が風に靡くように揺らいでいたのだ。
「おい!!起きてるなら言えよ、ラズロ!!!」
ラズロはムクッと立ち上がるとこっちを向いてニコッと笑った。
「いつ気づくかなぁって。」
「聞こえねぇ!こっち来いよ!!!」
ラズロの声のボリュームは少し遠くにいる4人の元には到底届かない声量だった。
「はぁ…」
ラズロはため息をついて遠くから見てわかる、やれやれジェスチャーをした。
「アイツ…一発分殴ってやろうかぁ!!」
「落ち着け。」
まさかのラズロの方が呆れた態度を取ったことにフルシアンテはおブチギレの様子。指をポキポキ鳴らしおブチギレモードに入っていた。そんなフルシアンテの肩をナールガは優しく宥めるようにポンポンと叩いた。
すると、4人の目に映る景色が一瞬で変化すると体にいくつかの衝撃を受けた。ラズロは4人を自身近くに移動させた。これにより、4人は無視した物理法則を受け、幸いにもそれによりふわふわ状態のキキガノが正気に戻した。
「おい!ラズロ!!それあんまり使うな!!こっちはお前と違ってビックリするんだ!!!」
「何よ!乙女に向かってこっちに来いって言ったフルシアンテが悪いんでしょ?こんなか弱い乙女を歩かせるなんて…しくしく。」
「どの口が言ってんだ?口縫ってやろうか?」
「まぁまぁ、2人とも喧嘩はよしてくれ。したいなら後で。」
「ふんっ!」
フルシアンテはそっぽを向いた。
「べっ!」
そんなフルシアンテに向かってラズロは下を出して反抗した。
「クッ…コイツ生意気だ!!ぜってぇ殺してやる。」
「はぁ…まぁいいだろう。では私が少しマイクを握らせていただくよ。」
4人はA2の方を見た。
「君たちの実力は私の今まではまっていなかったパズルのピースをピタッ!っとはめてくれた。君たちのような強く、そして対等な実力者を私は待っていたのだ!だが、これを思っているのは私だけではない!皆が皆、互いが互いに思っているはずだ!そんな君たちと一つ大きな祭りをしたいと考えている。」
「祭り!!いいね!私祭り大好き!」
「その祭りじゃないよ、ラズロ。これは一つの事件の比喩表現だ。」
「その通りだ、キキガノ。」
「えぇ〜、違うのかぁ。」
「違うに決まってんだろ、お子様が。」
「ムーー!(怒り)」
「「フンッ!」」
「コラコラ。まったく、君たちはすぐ火花を散らす。」
「で?A2、内容はなんだ?」
「私、祭り屋A2が本日提案いたしますは…『天界襲撃』だ!」
ーー終ーー