124 真理と摂理の破壊と崩壊
「『アル・マゲドン』」
A2が赤き眼光を放つと、全てが揺れ始めた。地面から切り離された4人のいるステージもどういう原理か揺れ始めた。空間も空気も全てが全て大きく振動を始めた。
パリッ
4人はパリッという音をどこからか聞いた。
パリパリパリッ
その音は次々と音を重ね、ついには耳が痛くなるほど聞こえ始めた。すると、A2の背後に存在する『空』が割れたガラスにヒビが入ると、剥がれ落ちた。その奥は真っ黒だったが、不安を感じざるを得ないほどに不気味だった。触れてはいけないような、見てはいけないようなそんなものを目にしているようだった。
それもそのはず。空を壊す。空間を歪ませる、捻じ曲げるというのはあり得ないことである。それはどんなに魔力を投じようとも、身を犠牲に心身を捧げたとしてもできる芸等ではない。それはこれらが、『真理』『摂理』だったからだ。
この世が存在している以上は、覆し用の無い『摂理』『真理』を基盤に形成されている。その中には空間も含まれている。
それを壊すとどうなるか。答えは簡単だ。世界が崩壊する。『摂理』『真理』は互いを支え合って世界を形成する。そのどれか1つが壊れてしまえば、なしくずしに世界が崩壊を始める。A2はこれを攻撃へと利用した。
A2の魔術『壊』
全てを破壊、崩壊させる魔術。
A2はこれを用いて空間を破壊した。
だが、『真理』も『摂理』もこれを易々とは破壊させない。ここで破壊を許せば、世界が持たないのだ。なんとしででもそれは阻止しなくてはいけない。この2つに意思こそ無いものの備えられた自己防衛プログラムによって、空間を元の形に戻そうと修復を始めた。
ーーこれこそがA2の狙い。
破壊の際に生じたエネルギー。そして修復によって生じたエネルギー。その2つが互いに衝突するとどうなるか。『破壊』と『再生』互いに対極的な能力を持つ両者の衝突は未知数の再現の無いエネルギーの崩壊を始める。A2が少しでも『壊』の調節を失敗すれば本当に世界が壊れる。それを再生よりも少し弱いエネルギーで撃ち負けない程度の崩壊で拮抗させる。
「ッハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」
A2の背後の空間が一瞬にしてガラスのようにバラバラと崩れ落ちた。
ーーそして、『地獄』『天界』『下界』は真っ白な光に包まれた。
ーーーーー
神界
『神界』。『神域』とも呼ばれるこの場所。神が住む場所である。
「ンフフフフフ〜〜ン。」
何も無いただ真っ白な空間に1人。楽立て膝で鼻歌を歌いながら座っていた。
真っ白な服、真っ白な長髪、すごく長いバサバサの真っ白なまつ毛。青年程度の男、女とも両方とも取れる中性的な顔立ち。この者こそが唯一神である『神』だった。
「いやぁ、まさかこんなふうになるとはねぇ。」
その声は少年、少女、女性、男性、老婆、老人、いろいろな声質の混ざり合ったそれでいて耳障りの一切悪くない透き通った声だった。
神の見つめる先には何も無い。ただ、『地獄」『天界』『人間界』の3つを作った主人では何が起こっているかは心で分かった。この3つが地獄でA2の起こした破壊行為によって世界が完全崩壊してしまったのだ。
「まったく、世界だって作るのに苦労したんだから。勘弁してもらいたいねぇ。連結空間で作ったのが悪かったかな?まぁいい。新しく1からはめんどくさい。元に戻そうか。面白いことも起きそうだしねぇ。」
神は指をパチンッと鳴らした。
「『再創造』」
『地獄』『天界』『人間界』は元の形を取り戻した。
ーー終ーー
神様が出てきました。もともと出す予定ではありました。A2が最初の方に言ってましたし。都合が良かったので出しました。
え?神様っていっぱいいるんじゃないの?って感じですが、まぁ創作ですし、ファンタジーですし。単一という存在にしています。
『連結空間』という言葉が神様の口から出たので説明しときます。
これは、いわば、『地獄』『天界』『人間界』は密接に関わっていたとのことです。1つが崩壊すれば全てが崩壊する。今回のような場合ですね。
なんで、こんな欠陥構築にしたのかって話ですが、そもそもこんなことになることを想定してません。まぁすぐに元に戻せますし。
それに別々の空間で別々に作るとめんどくさいんです。その分手間がかかりますし。だから、やめたという感じです。