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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー五芒星の過去ー
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 123 一撃必殺


 『コメディ・オブ・カートゥーン』


 キキガノに宿る変幻自在を体現せし魔術。

 能力はコメディ、ギャグなどの常識の範疇を超した現象を現実に持ってくる魔術。

 キキガノがこの魔術を発動した際、魔術人格と呼ばれるもう一方の人格へと移行する。この特性を持つものは数件の報告されている。


 この力を表すとすれば『何でもあり』

 その気になれば、再生不可能な状態まで吹き飛ばされても、それ以前に生き返る想像をしておくことで生き返ることも可能。先ほどのように攻撃を喰らった際に、その部位を勢いを殺すまでゴムのように伸ばし反撃することも可能。ハンカチの中から1万トンの重りを出すことも可能。


 そんな何でも怪獣が2人に牙を向く。自身の力を試したいその一心で。

 飢えに飢えた猛獣がやっと獲物を見つけたに近い感覚。自身の欲求を満たすためにキキガノは力を行使するのだった。


 ーーーーー


 太く重くなり響く、空気を押し除け何かを振るう音。

 この音の主はA2の召喚した2体の大きな黒騎士が巨大なハンマーと大剣を振るう音だった。


 2体の黒き剣士はナールガを仕留めるべく武器を大きく振るう。振るった後に遅れてやって来る衝撃波はまるで飛ぶ斬撃と飛ぶ打撃。多少威力は落ちていようとも当たれば致命傷手間なことは確定事項とも言えた。


 ーーだが、相手が悪かった。


 2体が相手にしているのは莫大な魔力と攻撃を当てれば当てるほど、どんどん攻撃速度と威力の上がっている悪魔。元のスペック的に2体の騎士を相手にできるだけの力があったとはいえ、それにバフが乗ってしまっていては、とてもではないが敵うとは口が裂けても言えない。


 2体の騎士はナールガの攻撃によってボロボロになっていき、ついには、漆黒の鎧にヒビが入り始めた。ナールガはそこにトドメと言わんばかりにハンマーを持った騎士の方に容赦無く拳を振るった。


 「せっかく作ったのにもったいないもったいない。」


 瀕死のハンマーを持った騎士の前に超強固なバリアが貼られた。ナールガとバリアとの間には魔力同士の高度な衝突の際に出る火花が散っていた。これにナールガは早々に手を引いた。


 「傍観は終わったのか?」


 すると、A2が上から降りてくると美しく爪先立ちで着地した。


 「丹精込めて作った物をすぐに壊されてはね。それは子供と同じように傷つくさ。」

 「その割には、早く作ったな。気持ちなんて込めてる暇あったか?」

 「ハッ、手際がいいんだよ。私は。」

 「で?どうする?正面切る気になったか?」

 「少し、やってみようかと。」

 

 A2はナールガが反応できないスピードで目の前に移動すると、頭を下にして大きく腰を回転させ、蹴りを入れた。蹴り飛ばされたナールガは後ろに押された。もろに顔面に当たった蹴りはナールガの右の鼻から出血をさせるほどだった。


 ナールガは鼻から何か垂れている感覚を覚え、右手の手の甲で拭き取った。


 「鼻血か…」

 「初めてかい?」

 「久しぶりってだけだ。」


 ナールガは左の鼻の穴を指で押し、勢いよく鼻から空気を出すと、右の鼻からビチャビチャっと地面に向かって血を飛ばした。そして、A2に向かって距離をいきなり詰め、拳を振るう。だが、それよりもA2が『バリア』を展開する方が上手だった。


 『バリア』を隔ててナールガを見るA2は笑っていた。ナールガはスッと一瞬息を吸った。そして、『バリア』に向かって連打を始めた。


 「私のバリアはそんじょそこらのとは違うんだ。力では破れな…」


 A2は『バリア』の異変に気づく。ヒビが入っている。それもどんどん大きくなっている。A2はどこか胸騒ぎを覚え、勢いよく後ろに一歩下がろうとした時、ナールガの右の拳は『バリア』を貫き、A2目掛けて迫ってきた。


 (『ライトニング』(プラス)『ショック』)


 A2は咄嗟に魔法を発動しナールガの動きを止めることに成功し、クルクルっとバク転しながら距離を取った。


 「チッ。」

 「ふ〜、危ない危ない。発動速度が早く生まれてきて助かったよ。」


 A2のこの咄嗟の行動は8割方『賭け』だった。『ショック』事態、魔力量に差がなさすぎると発動しない。その場合大ダメージを得ることになるため、一か八か賭けた。天は何とかA2に微笑んでくれた。だが、かなりギリギリであることは間違いなかった。


 「君の魔術、何となくわかった気がするよ。」

 「言ってみろ?」

 「攻撃を当てれば当てるほど自信にバフがかかる。詰まるところ『連打』と言ったところかな?」

 「ご名答。」

 「私の『バリア』を破ることはただ力むだけとかそういう話ではない。しっかりと魔力や魔法を使わなくてはならない。ただ、今の瞬間、君が魔力単体を消費したようには見えなかった。つまりは、魔術を使ったというところだろう?さらには一発打つごとに上がる威力。ある程度の推測は立つさ。」

 「ネタが割れたところで問題などない。お前を倒すために拳を振るうそれだけだ。」


 ナールガは体に任せた構えをとった。


 「おっと、後ろにご注意。」

 「?」


 A2の謎の言動に流石に疑問を浮かべるナールガ。次の瞬間、後頭部に電気が走ったような感覚を覚え、振り返ると、武器を構え、パワーを貯めている2人の黒き騎士がいた。2体は武器を大きく振るうと2つの衝撃波が生まれ、その衝撃波は途中で1つになるとナールガ目掛けて飛んできた。


 ナールガの攻撃でボロボロだった2体の騎士はこれを機に体が完全に崩壊し、砂になってしまった。


 ナールガは避けの姿勢に入る。そして、ギリギリでナールガは避けることに成功。A2に天が味方したようにナールガにもまた味方をしたのだった。


 衝撃波の行先は避けたナールガの後ろにいるのはA2。被弾するかと思われたが、頭の回転が速いA2が何も考えていないわけもなく、ニヤッと笑うと、右足に魔力を溜め、衝撃波を左斜め後方に蹴り飛ばした。


 衝撃波は間違いなく虚空を進んだのち、威力を失い自然に消えると思ったナールガ。これを見た誰しもがそう思うであろう。だが、違った。衝撃波が15mほど進むと、その場所にラズロが移動してきた。


 「!」


 ラズロは自身の行先が戦っていないA2に読まれているとは思ってもおらず、咄嗟に位置を変えようとしたが座標を設定するよりも早く、衝撃波がラズロを捉えた。


 「あ”あ”っ!」


 ラズロの胸に深く刻まれる傷。傷口から噴き出る多量の血。そのダメージは肉体的にも精神的にも耐え難き苦痛を与えた。ラズロの体はフルオートの回復を始めていた。


 「させねぇよ。」

 

 そこを狙ってフルシアンテはラズロの動きを止めた。そして勢いよくラズロの元まで飛び上がった。


 「こちらこそ、させないと言っておくよ。」

 「!」


 だが、ラズロよりも前にA2が現れた。


 『死戦落下(デス・ドロップ)


 A2はバク転の容量でクルッと後ろ向きに回ると、フルシアンテを蹴り落とした。

 黒紫の火花と散らしたその蹴りは、驚異的で破壊的な威力でありながらもどこか美しさを見つけてしまうほどには綺麗な火花を散らした。


 「やっと使ったな!魔術を」


 ナールガはA2の元まで猛スピードで急接近すると、拳を繰り出した。もちろんA2はこれに『バリア』で答えた。


 「さぁ〜、なんのことかなぁ?」

 「とぼけるな!」


 ナールガはA2の『バリア』を打ち砕いた。


 ーーナールガの魔術『連打』

 魔力を持つ生物・物体に対し攻撃をした回数に応じて自信がバフを受ける魔術。上がる能力値はスピードと攻撃力の2点。上がる能力値に上限は存在しない。上がった能力値が元に戻る条件は7秒攻撃しない時間が生じた場合である。

  この能力によって上昇したナールガの能力値はハッキリ言って手がつけられない程にまで跳ね上がっており、最高高度に近いA2の『バリア』を最も容易く打ち砕ける域に到達していた。


 この時間にも攻撃を喰らったラズロは完全回復。そのラズロに向かってキキガノはジャグリングのように手で転がした魔法の玉を投げた。ラズロはこれをノールックで防ぐと、キキガノの後ろへ移動。


 キキガノとラズロは衝突。ラズロはA2から攻撃をもらったことに少し怒っているようで、少し前のおふざけの様子は一切、どこかに消えてしまっていた。


 ーーーーー


 A2とナールガの戦いもいよいよ大詰めと言った匂いを漂わせ始めた。

 能力の上がったナールガの攻撃に対し、A2は防御という選択を取れなくなってしまっていた。つまりは避けるほかなかった。


 「使えよ、魔術を!」

 「ハハハ!」


 すると、2人の動きが止められた。その様子にフルシアンテは笑みを浮かべ、2人に攻撃を仕掛けた。


 「チッ、邪魔なんだよ!」


 ナールガは膨大な魔力を放出し、フルシアンテの魔術を解除した。

 

 フルシアンテもこれには驚いた。この魔術の解除方法は主人も知り得なかったのだ。無理も無いことではあった。これをするにはナールガと同等の魔力放出が必要だったのだ。そんなことができるやつがゴロゴロいるわけもなかった。


 ナールガはフルシアンテに標的(ターゲット)を変更すると、猛スピードでフルシアンテに接近。右手に一撃でフルシアンテを屠るための力を握り、フルシアンテに攻撃を振るった。


 その拳はまさに『一殺の拳』。

 上りに上がった能力、それを後ろから押す膨大な魔力による強化魔法。それを、邪魔をされたことによる怒りがさらに追い風になる。

 白目を向き、歯を食いしばった状態で歯の間から息を出すナールガ。その形相にフルシアンテは怯みを見せた。


 「!」


 拳は見事に命中した。だが、その対象はフルシアンテではなくA2だった。拳はA2の腹を貫き、そのすぐ後に追いついてきた衝撃波によって、A2は5人のいるフィールドから下に落ちていった。


 「ん〜!やっと仕返しできた〜〜〜!!」


 キキガノと戦っていたラズロはA2に攻撃が当たったことを確認すると、すっきりとした顔で伸びをした。


 「どっかに意識が入っていると思ってたけど、A2を気にしてたのか。」

 「うん!貰い物されて何も返さないのって失礼でしょ?感謝を込めてお返ししてあげたの!!力弱いからはできなかったけど。」


 A2に一発返すことを模索しながらキキガノと戦っていたラズロ。ナールガの一殺の拳を感じたラズロはフルシアンテを別の場所に移動し、A2をその場所に移動させた。そして見事にラズロの作戦は身を結んだ。


 ナールガとフルシアンテはキキガノとラズロの元に近づいてくる。フルシアンテは少し安堵の表情浮かべ、何はともあれ一発お見舞いできたナールガは少し満足げな表情を浮かべていた。


 「あっぶねぇ、あんなんもらってたら死んでたわ。」

 「流石にあれじゃあ死んじゃったでしょ!!これで1人、アウトね!!」

 「やっとだ、やっと。」

 「まぁ、あいつが一番厄介に見えたからな。」

 

 4人は休憩とばかりに少しだけ談笑を始めた。


 ーーーーー


 一方のA2


 落下中のA2は笑みを浮かべていた。攻撃によって貫通した腹からは内臓が垂れ出て、出血も多量。そんな状態でもA2はフルオート回復魔法を切って、あえて回復しないという選択をとっていた。

 その訳は非常に子供染みていた。単純に嬉しかった。ただそれだけだった。初めて自身の前に現れた肩を並べて戦える悪魔たち。それに出会えたことがこの上なく嬉しいことだった。だからこそ、この感情を純粋に受け止めないのは野暮だと思ったA2は回復を後回しにしていた。


 一通り喜びに浸ったA2は一瞬で傷を癒した。


 「では、では、フィナーレと行こうか。」


 A2の目が赤い眼光を放つと、その瞬間、沸き立ち、立ち上る圧倒的物量の魔力が天高く溢れ出た。


 ーーーーー


 「じゃあ、それそろ、再開しようか…」


 4人は、A2が帰ってこないことを確認すると、戦闘を再開しようとしたその時!


 「「「「!!!」」」」


 A2が落ちていった場所から、とてつもない量の魔力が立ち上った。


 「ハハハハハハハハハハハハ!!!!」


 周囲に響くA2の笑い声。そして、立ち上る膨大な魔力の中から赤い眼光を放つA2が満面の笑みで姿を見せた。


 「君たちに全力見せてもらて、私がお返しをしないのも失礼だな。だから、全員にお返しをさせていただくよ。快く受け取ってくれ。」


 4人は身震いをした。それもこんなに大きな身震いは初めてだった。これから何が起こるかはわからないただ、即死級の技がくることは直感的に理解できた。4人は防御魔法をフルに使った。


 「「「「!」」」」


 4人はいきなり体が重くなるのを感じた。その原因は魔力回路が完全に破壊されたからだった。


 「言っただろう?快く受け取ってくれと。防御魔法は快く受け取るには不純物だろう?だから壊した。では受け取ってくれ。私の送る一撃必殺(プレゼント)を。」


 A2は目を大きく開き、裂けてしまうぐらい口を開けて笑った。


 


 「『アル・マゲドン』」




 ーー終ーー


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