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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー五芒星の過去ー
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 122 二重人格?


 地獄・???


 「そうかい、そうかい。やる気になってくれて大変に嬉しいよ。」


 ナールガの魔力完全解放に対し笑って返すA2。それ以外の3人、キキガノ、ラズロ、フルシアンテは少しばかり、空気の痺れに冷や汗を流していた。

 ナールガの魔力量は、この場で誰を出し惜しみを()()()()()()()()()()圧倒的ダントツの総量であり、それは彼が灰色の肌を持つ大魔族であるが故の理由だった。


 「じゃあ、俺も魅せよう。」


 フルシアンテは両手の親指と人差し指で長方形を作った。


 「?」

 「なになに〜?なんなの〜?」


 ラズロはフルシアンテの不思議な手印に好奇心が湧いた。

 この行動はこの場で何か意味があるようには到底見えない。特に威圧的でもなく、それでいて攻撃性もない全員が?を浮かべた次の瞬間。4人は体の全てを一寸も動かすことができなくなった。


 まるで金縛りを受けたような感覚。

 目は動かせる。声も出せる。魔力は練れるが魔法が使えない。


 「どうだ?動けない気分は?」

 「なんだこれは?」

 「魔術だよ、魔術。この俺のな。俺の魔術は『額縁(フレーム)』対象を見えない額に閉じ込めることで、対象の行動を制限する魔術。つまり、魔術にかかれば一時的にフリーズして大きな隙が生まれるってことだ。」

 「解除方法は?」

 「俺が任意で解除するか、触れた時か。まぁ、どのみち、一発はアドが取れるってわけだ!!!」


 無防備にフリーズする4人を流るるように攻撃するフルシアンテ。

 フリーズにより防御魔法を使用できない4人は超強化されたフルシアンテの攻撃を生身で受ける他無く、A2、ナールガ、キキガノの3人はそれを全力で踏ん張って耐えた。ラズロに関してはその小さく軽い体型が故に場外まで吹っ飛んだ。


 「痛い〜〜!も〜〜う。場外出ちゃったじゃない。やっぱりちょっと軽すぎるかぁ〜。でも太れないしなぁ〜。まぁいいや!また今度考えよう。」


 場外に出てしまったラズロは下の地面まで真っ逆様で急降下していった。

 そんな中でもラズロはいたって冷静そのもの。それどころか頭を下にしてあぐらをかいて落下する始末。刻一刻と迫る地面。ラズロは体勢を変え空中で立ち上がると、次の瞬間姿を消し、A2達のいる場所まで一瞬で移動した。


 「おやおや?随分と早いお帰りで。」

 「なんてったって私の魔術だからねぇ〜。私の魔術も教えてあげる!私の魔術は『X to Z』!自分の座標を0として、X軸、Y軸、Z軸の座標を指定して動くことができるの!こんな風に!!」

 

 ラズロは4人を適当に指定した座標まで移動させた。

 

 「「「「!」」」」


 すると4人の体に異変が発生した。

 位置が変わった瞬間に4人に体を押し潰されそうなほどの出自不明のエネルギーが襲いかかったのだ。

 

 ーーラズロの魔術『X to Z』には移動以外にも攻撃に転用することも可能だった。


 ラズロが設定した座標へ移動させる時、一旦すべての物理法則を完全に無視して移動する。そのため移動した瞬間、摂理を無視した分の代償が移動者本人にのしかかるのである。これは、今いるX軸、Y軸、Z軸の座標の合計と移動したX軸、Y軸、Z軸の座標の合計の値に大きな差があればあるほど、無視する物理法則の値も増えるために効果は大きくなる。

 この魔術の最も恐ろしい点は、ラズロ自身がデメリット無しで移動できる点と使用者の無邪気さであった。移動時にのしかかる物理法則を無視することで発生した影響ををラズロ自身受けない。そのため苦痛の度合いがいかほどかをラズロは知り得なかった。さらには、ラズロの子供のような性格によって、無慈悲で容赦のない距離を移動させてくる。厄介極まる魔術だった。


 「面白い!いやぁ君達を集めた甲斐があったよ!」

 「A2とキキガノは魔術使わないの?」

 「僕は…ピンチの時にでも…」

 「私の魔術は繊細だから、もう少しボルテージが上がってからかな。」

 「えぇ〜つまんない〜。」

 「オレは問題ねぇぜ?でも、オレも気になるからよぉ…殺す気で行くから覚悟しとけ?」

 「ハッハッハッ!それは楽しみ極まれりだ。」


 A2の声が風にかき消されると同時に5人は再び衝突した。


 ーーーーー


 ナールガの拳はキキガノを捉えた。

 やはりナールガの拳を振るう速度と威力は、誰かに当たるたびに威力を増していた。


 「「!」」


 すると、キキガノとA2の位置がいきなり変わった。ナールガの振るった拳は見事にA2に直撃。A2は後ろに飛ばされながら吐血をした。

 

 「んん〜、効くねぇ〜。」


 A2は少量の吐血をして、笑ってラズロとナールガを見た。

 ナールガは足元に違和感を覚えた。


 「おいで、我が子たち。」


 ナールガの足元には魔法陣が2つほど現れていた。そして、その魔法陣が光を発生し始めると、ナールガはバク転しながら魔法陣から距離を取った。


 魔法陣の中から漆黒の甲冑を身に纏った頭のない2m50の背はありそうな騎士が2人現れた。片方は巨大で重厚なハンマーを持ち、もう片方は大剣を肩に抱えていた。


 2体の騎士は一直線に大きな足音を立てナールガへ向かって行った。ナールガはめんどくさそうなハンマーを持った騎士から重点的に狙うことを決めた。


 ーーーーー


 一方のキキガノ、フルシアンテ、ラズロの3人は高度な読み合いを図っていた。

 キキガノの魔術の手の中が割れていないがため、それなりに警戒されていたが、もっとも警戒されていたのはフルシアンテの魔術であり、発動の瞬間に揺らぐ超微細な魔力を感じ取って、ラズロがフルシアンテを移動させることでなんとか発動を防いでいた。


 ラズロの移動は攻撃や発動していた魔術の流れを0に戻し、さらには無視した物理法則がのしかかる。フルシアンテも受ける影響にいちいち反応していては戦闘のテンポもクソもなくなるため、反応は最低限に戦った。


 ーーラズロはここで気づく。

 フルシアンテに攻撃されないようにとフルシアンテを移動させていたが、こんなことをする必要はないのではないかと。

 フルシアンテが魔術を発動した瞬間に魔術効果範囲内から抜け出し、キキガノをフルシアンテの目の前に移動させればキキガノを落とすことができる。そうと思えば実行は簡単だった。


 フルシアンテの魔力の揺らぎを感じ取ったラズロはその魔術効果範囲内と推測される場所まで移動と同時にフルシアンテの目の前にキキガノを送った。

 フルシアンテは、いきなり前に現れたキキガノに驚きつつも、フリーズして隙だらけの獲物に手を出さないわけもなく渾身の拳を決めた…ように思えた。


 キキガノが倒れたとワクワクして帰ってきたラズロ。だが、予想は大きく覆った。

 ラズロとフルシアンテの見たものは、顔が後ろにビヨーンと伸びたキキガノだった。呆気に取られる2人。キキガノはゴムのように伸びた頭を戻し、そのままフルシアンテに頭突きを喰らわせた。その威力は咄嗟にガードしたフルシアンテの両腕を吹き飛ばすほどだった。


 「あーぶない、あーぶない。咄嗟で発動しちゃったよ。久しぶりにねぇ。」


 2人は気づく。明らかに先ほどの目の前にいるのはキキガノと別人だった。外見こそ変化はない。だが、声色が明らかに別人だった。少しやる気なさを含んだ覇気の少ない声色だったキキガノとは打って変わって、元気があってハキハキとしている。これ一つで明らかに雰囲気が変わった。


 「二重人格か?」

 「かもな…かもな!かもな!かもな!かもな!かもな!!!!」


 キキガノは狂ったように頭を掻きむしりながら、こぼれ落ちてしまいそうなほど目を見開き、空を見て笑った。


 「気持ちいいな!隠さなくていいってのはさぁ!」

 「気味が悪いな、どうした?」

 「どうした?魔術を使うとこうなるんだよ!テンション上がるんだぁぁ!!」

 「やはりそうか。」

 「そうだよ。そう。僕の魔術を教えるよ!名は…」


 『コメディー・オブ・カートゥーン』

 

 ーー終ーー


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