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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー五芒星の過去ー
127/208

 121 赤月下


 地獄・???


 モンワイヤー、ケンラク、ギャイツという3人の邪魔を排除し、ついに後に、五芒星(ペンタグラム)と呼ばれることになる5人が純粋に向き合うことになった。


 「では、始めよう。」


 パチンッ


 A2は指をスナップさせると、周囲の地面が揺れ始めた。その様はまるで地震。地面がギュギュといった音を鳴らすほどに押し合い、地割れが起きた。


 「こんなところで戦ってはね、地面が可哀想だ。上に行こう。」


 そして、A2が右手の人差し指を上に向けた。すると5人の立っていた地面がエアハンマー現象のように上に上がり5人を上空まで押し上げた。

 その高さは地面を霞ませるどころか見えなくさせるほどの高さまで上がり、A2は自身の魔力を使ってちょうどいい位置で止めた。赤く燃える月が5人を赤く照らした。


 「ルールは無い。生かすも殺すも勝者が選ぶ。それでいいか?」

 「「「「異論無し!」」」」

 「でも、みんななぜ魔力を抑えているんだい?」

 「だってだって〜、いきなり全開で行っても怖気付いたら楽しめないじゃない。」

 「僕もそう思った。」

 「まぁ、もうその必要もなさそうだ。」

 「だねだね〜。」


 ケンラクの目に5人の魔力が少なく見えたのは5人の意図的なものだった。

 全員ここまでの強者(つわもの)が来るとは想像しておらず、もし莫大な魔力量で相手が縮小してしまっては楽しめない。期待していないならいないなりに楽しむために5人は魔力を抑えていたのだった。

 ーーだが、もうその必要も無い。そう、5人が5人全力を出せる相手だったから。


 A2、ラズロ、フルシアンテ、キキガノの4人は自身の抑えていた魔力を解放すると、目に見えない力の衝突が発生した。個々の持つ気配、圧力、覇気で押し合いを始めたのだ。まるで挨拶がわりのように。


 一頻り『挨拶』をした5人が作り出したのは、先ほどの荒々しい空間とは打って変わって静寂だった。これに特に意味があるわけではなかったが、嵐の前の静けさという奴だろう。


 「おい、ナールガとか言ったか?」

 「ん?」

 「お前はなんでまだ抑えてんだ?」

 「あぁ…いきなり全力出してはお前たちが可哀想だ。」

 「かぁーー!お高いこったな大魔族さんはよぉ。」


 フルシアンテはナールガとの会話を少し楽しんでいる様子だった。


 「まぁまぁ、いいじゃない?でもそんなんで手加減はしないよ?負けても自己責任。」

 「問題ない。」


 キキガノは少し煽りまじりにナールガに言った。


 「では始めよう。そして、楽しもう。よ〜い、スタート。」


 5人は全力で衝突を始めた。その勢いは凄まじく、空が割れてしまう、自然という摂理ごと吹き飛ばすかのような衝突だった。


 5人が衝突して生まれたエネルギーは、生死の間で揺らぐケンラクにも届いていた。

 ーーレベルが違う。ケンラクはこの想いを最後に生気を失った。


 ーーーーー


 「どうしたどうした?そんなものかよ?大魔族さんよぉ?」

 

 フルシアンテとナールガの2人は高速で空中を飛び回り戦っていた。


 「ちっ!」


 ナールガは一発フルシアンテから重い一撃をもらった。魔力を制御しなくなったフルシアンテの拳は強化魔法によって、威力が想像の数倍となっており、魔力を制御しているナールガも喰らえば無傷ともいかなかった。

 

 ナールガは息を整えるとフルシアンテに連打を叩き込んだ。もちろんフルシアンテもこれに連打で答えた。だが、やはり、魔力を渋る必要の無くなったフルシアンテの方が優勢であることには変わりなかった。


 ー視点は変わりA2、ラズロ、キキガノへー


 この戦いはフルシアンテたちの戦いに比べ難解な戦いだった。


 「『ボルト』(プラス)『ライトニング』」


 A2はあやとりをするかのように2つの魔法を練り合わせ、万単位の極細の電気糸を作り、手で操った。

 これに触れると、痛みは無いが代わりに一時的に触れた部位の感覚が鈍る。つまりは痛みがあるよりも厄介な攻撃だった。


 「アハハッ!おもしろ〜い。」


 ラズロはこの状況を笑いながら楽しんでいる様子だった。


 「でも邪魔。」


 ラズロはいきなり睨むような冷たい顔をすると、ラズロの周囲から魔力の衝撃波が発せられ、A2の作った電気糸を一瞬にして魔力で上書きし、かき消した。


 「ハハハ!これでも作るのって結構苦労するんだから、そう易々消さないでいただきたいね!…うおっと!」


 言葉とは裏腹に、容易く電気糸を掻き消すだけの魔力を持つラズロに、A2は手応えを感じ嬉しそうだった。そんなA2の視界が180°一気に回転した。A2はそのままさらに自信で180°さらに回転し、元の姿勢に戻った。


 「誰かな?」


 ラズロではないもう一つの気配の方を見るA2、そこにいたのはキキガノだった。キキガノは何やら不敵に笑うとA2の超至近距離にA2が収まるほどの大きさの魔法陣が現れた。魔法陣は回転を始めると、魔法陣の中心にエネルギーが溜まり始めた。そして、超高出力の魔力砲がA2を飲み込んだ。


 紫電を纏う砲撃は空気を押し除け、地面を吹き飛ばした。威力の話をするのであれば、一般的悪魔であれば到底耐え得るものではなく、ラズロも笑ってはいるものの心のどこかでは自身がターゲットにならなくてよかったと思ってしまうほどだった。

 砲撃が止むと地面は焼かれたようにまだ熱く、少し焦げているようにも見えた。


 「まずは1体…」


 A2の姿が見えないキキガノはA2を倒したと勝手に決めた。


 「勝手に決めないでほしいなぁ。」


 すると、A2が上からスタッと降りてきた。


 「いい魔力出力だ。それに魔力効率もいい、言わずもがな魔力量も申し分無い。素晴らしいね。魔法陣を介したとはいえ、ほとんど溜めなしで砲撃を行うとは…常人泣かせでは無いのかい?」

 「どうも。」

 「でも、君たちのことをもっと知りたい。」

 「「?」」

 「ハハハ!何を不思議な顔をしているんだい?そんな、膨大な魔力を持っていながら無いわけではないだろ?『魔術』を。」

 「そりゃあ、まぁ。誰が使ってからでいいかぁって思ってたんだけど…」


 キキガノは少し気だるそうに答えた。


 「私の魔術は攻撃向きじゃ無いしねぇ。もっと激化してからでいいかなぁって。」

 「じゃあ、使うならあっちの2人かな。」


 A2は空中で戦うフルシアンテとナールガを見た。


 ーーーーー


 連打に連打で返す2人の拳。その一発一発が空を揺らす衝撃を放ち、どれもがどれも破壊的な威力だった。


 「大魔族さ〜ん?大丈夫かなぁぁぁ!!!」


 次第に追い詰まっていくナールガだったが、ある一発を持ってそれが裏返り始めた。


 (なんだ!不自然なほどにコイツの拳が強まっている!)


 フルシアンテは早々にそれに気づいた。明らかにナールガの攻撃力が上昇していっている。それも緩やかな上昇ではなく、急加速度的な上昇。

 それに気づいて数発もすれば、フルシアンテの打撃など完全にナールガの拳に負け、ナールガはフルシアンテの顔面を吹き飛ばすほどの一撃を与え、フルシアンテはA2たちのすぐ近くに叩き落とされた。


 「クッソッ、いてぇ。」


 フルシアンテの体は自動的に回復を始めた。


 フルシアンテは回復をしながら数秒考えた。今何が起こったのか。


 ナールガが抑えていた魔力を解放したとも考えた。

 だが、その様子はなく、ならば何がナールガの火力を押し上げたのか。


 ーーそんなものは『魔術』以外考えられなかった。


 落下したフルシアンテのすぐ側に、右手を地面に跪く形で着地したナールガはゆっくりと立ち上がった。

 

 この時、全員が感じていたナールガの魔術の解放と共に流れる緊張感とここから本番が始まるという高揚感は全員が鮮明に記憶することになる。


 「どうした?立たないのか?」

 「へっ、言われなくても立つ気満々だつーの。」


 フルシアンテは跳ね上がりをして立ち上がった。


 「一番最初に魔術を使ったのはお前か、まぁ、持っててもおかしくないとは思っていたけどなぁ〜。」

 「使ってはいけないなんて話はない。もし、そんな話があっても破るが。」

 「あ”?」

 「ルールは俺だ。主体性の持てぬ生き方をする者はその時点で死んだも同然。誰か(カス)の戯言に付き合うこともない。俺は今、生まれて初めてこれほどの高揚感を感じている。楽しみたい。この一分一秒を…そのために…」

 「「「「!!!!」」」」


 ーー「『俺は全てを見せよう!!!!!!!!!!!!』」


 4人の感じ取る空間を歪ますほどの覇気。


 「ここでか!」


 この覇気の正体とはナールガの魔力の完全解放によるものだった。


 空気がひりつく。熱がないのに熱く感じる。冷たくも感じる。痛くないのに肌に痛みを感じる。体に重みを感じる。視界がぼやけて見える。

 ナールガを見る4人の感覚は覇気によって完全に麻痺。それどころか空間すらも混乱を示しているようだった。

 ナールガの全霊の存在というのは、理の超越をしてもおかしくなかったのだ。


 ナールガは覇気を納めた。


 「久しぶりだ。全霊を出すこの感覚。」


 ナールガは手を開いたり閉じたりすることで自身の全霊を感じ、月を見上げた。ナールガが月を見た瞬間、少し月が敬意を示すかのように光ったように見えた。


 「では、殺り合おうか…|赤い月もそれを楽しむだろう…」


 ナールガは自身の全てを解放し、とてつもない高揚感に体を支配されていた。

 爽快感のある顔で空を仰ぐナールガ。


 「へっ…そのなりでロマンチックなこと言うのかよ…」


 その様子を見たフルシアンテは笑った。

 フルシアンテも自身の胸がさらなる戦闘に悦しようとしていると感じ、熱くなっていた。


 ーー終ーー



 『魔法陣』の解説をここでします。

 ーー魔法陣は攻撃の出力を増大させるために持ち入ります。

 段階的に出力を上げる方法が3つあって、そのうちの1つです。

 『魔力消費による出力向上<<魔法陣<<完全詠唱』

 といい感じです。

 上に行くにつれ魔力消費はもちろん大ききなります。本来の魔法陣は書いたりなんだりして事前に作ってから使うのが一般的です。でも魔力を大量に消費すれば、その部分を省略することが可能です。ですが、出力を上げた魔法を発動するのに当たり前にものすごい量の魔力を使うので、一般的な悪魔は使いません。というか使えません。

 『完全詠唱』についても少し。

 ーー今、エクサーやA2の使っている魔法は言ってしまえば、簡易的かつ汎用的に誰でも扱えるようにした簡略魔法です。なので、魔力消費量も落ちてます。その分、出力や火力も落ちています。なので『インフェルノ』などの魔法の本領を出したいのであれば、完全詠唱が必要となります。

 ですが、欠点があって、魔法陣に比べて魔力消費量が何百倍になっていることと詠唱中は生身を晒すことになります。詠唱中は自動的に魔力の全てが詠唱のために使用されます。なので、詠唱中は普通に攻撃されれば死ぬこともあります。

 まぁ、その分発動できればメチャ強です。

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