表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー五芒星の過去ー
124/208

 118 1冊の本と五芒星


 天界・ミカエル宮


 「ふんふんふんふ〜ん…」


 次の日もA2はミカエル宮で拘束されていた。

 だが、昨日よりは幾分か不自由にもなれた様子で、鼻歌を歌っている。何かを待ち侘びるような気持ちを感じがら。


 「鼻歌ですか。楽しそうで何よりです。」


 そこにミカエルが現れた。

 今日は昨日と違って親衛隊はお付きではないようだ。


 「やあやあ、ミカエル。今日は1人かな?」

 「えぇ、親衛隊の皆さんも暇というわけではありませんし。」

 「そうなのかい?それにしても強そうなお仲間さんだったこと。一戦交えて見たいところだ。」

 「魔術の無い、魔力も半分あなたでは無理でしょう。」

 「では、返してくれるのかい?」

 「ダメです。五芒星(あなたたち)はそれだけの罰に相当することをしたのですから。」

 「返さなくていいっていたのはそっちだろ?」


 A2は笑みを浮かべ、ミカエルは少しだけ眉間に皺を寄せ、2人は睨み合う。この数秒間の緊張感は凄まじいものだった。


 「まぁ、いいでしょう。それはそうとして、何故そんなに楽しそうなんですか?」

 「ハハハ!本を頼んだのでね。」

 「この状態で読む気ですか?」

 「ノンノン。帰ってから時間をかけてゆっくりとね。紅茶でも飲みながらね…」


 A2はエクサーを頭に浮かべた。


 ーーーーー


 地獄・クリスト城


 「はぁ、まったく。アイツは…」


 F,Dはクリスト城の庭園で、S,B、ピアノ、フォルテ、エクサーの4人と頭をアフターヌーンティーを楽しんでいた。厳密に言うと楽しんでいるのはF,Dを除いた4人であり、F,Dは頭を抱えていた。


 今のこの状況でF,Dの頭を悩ませるのは1人しかおらず、もちろんA2のことだった。


 「ちょっと、あなた優雅な午後のティータイムに悩みはダメよ。」

 「あぁ、すまん。」


 そんなF,Dを横目に紅茶を楽しんだ。

 砂糖を一切入れずそのままの紅茶。昔はジュース一択だったエクサーも紅茶を自然と飲めるようになり、大人になったんじゃないかと少し思ってしまった。


 「エクサー、ケーキは何にしますか?」

 「ショートケーキにしようかな。」


 アフターヌーンティーということでもちろんお茶菓子がある。

 全員の座る机の中央に高々と立つお菓子の乗ったスタンド。ピアノはそこからエクサーのためにショートケーキを取って、エクサーの前に置いた。


 「どうぞ。」

 「ありがとう。1口食べる?」

 「私にはチョコケーキがありますので。」


 ピアノは自分の分のチョコレーキ食べ始めた。


 毎回思うがピアノは1口が小さい。女の子だから品を気にしてかとも思うが、そうだとしても小さい。フォルテとは対照的に、あまりピアノは量を食べない。だからこそ、早く食事を終わらせない。皆と同じスピードで食べるために1口がだんだん小さくなっていったのかななどとエクサーは考えた。


 何というか平和だった。多分これはA2がいないからだろう。

 別に皆、A2を嫌っているわけではない。ピンチの時は何だかんだ一瞬で終わらせてくれるし、頼りになっている部分もあった。

 だが、トラブルメーカーでもあった。エクサーはしょっちゅう、A2の引っ提げてきた問題や厄介事を実践練習と称し丸投げされた。


 今となっては慣れてしまったが、それから解放されたと考えるや、気張っておく必要がなくリラックスできた。


 (エクサー、聞こえるかい?)

 「!」


 するといきなりエクサーの脳内に響くA2の声。エクサーは思わず椅子から飛び上がった。


 「どうした、エクサー?」

 「い、いや。今A2の声が。」

 「アイツは今、お勤め中だぞ?」

 「う〜ん。」


 F,Dにそう言われ、今いないA2の声がするはずもなく、きっと幻聴か何かだろうと思い、エクサーは椅子に座った。


 (エクサー。)

 「!」


 やっぱり聞こえた。幻聴ではない。絶対にA2がどこかから話しかけてきていることは間違いなかった。

 エクサーはまた立ち上がると、周囲を見回した。

 A2の声は続いた。


 (エクサー、聞いてくれ。これはまぁ、伝言のようなものだ。だから返答はできないよ。あと、一回しか無いから覚えてくれ。)


 どうやらこの声は、天界に行く前にA2が魔力を使って残した伝言のようだった。


 (エクサーには『ある1冊の本』を取りに行って欲しいんだ。座標は送っておくよ。そこ行くと私の古き友人のフルシアンテとラズロという悪魔のどちらかが迎えてくれるだろう。そこで本を受け取ってくれ。急がなくてもいいが、期限は24時間以内、それと必ず1人で頼むよ。では、またね。)


 A2はここにいなくても、まぁまぁ面倒くさいことを投げてくる。それをエクサーはため息1つで飲み込んだ。


 「どうしたの?」 

 

 S,Bはエクサーの様子に心配になって話しかけてきた。


 「それがさぁ、A2が本を1人で取りに行ってくれって。そこにはフルシアンテって悪魔かラズロって悪魔がいるらしいから、その悪魔から受け取ってくれって。」

 「「「「!」」」」


 4人はエクサーの言葉に驚き、顔を見合わせた。


 「どうしたの?」

 「エクサー、その2人の悪魔には気をつけてね。」

 「え?別に大丈夫じゃない?A2も古い友人って言ってたし…」

 「エクサーいいか?そのフルシアンテとラズロっていう悪魔はな、間違いなくA2の友人かもしれない。だが、言葉が足りない。」

 「そうなの?」

 「A2が仲間と天界を襲撃した事は知っているな?その人数は5人。フルシアンテ、ラズロ、キキガノ、ナールガ、A2。この5人は『五芒星(ペンタグラム)』と呼ばれている。直球に言えば超強力な悪魔ってことだ。」

 「えぇ、じゃあフルシアンテとラズロって悪魔は怖いってこと?」

 「いいや、5人の中では穏健派ではある。A2と違っていきなり何かすることはないし、ナールガみたいに暴力的じゃないし、キキガノみたいに狂気的ではない。それでも、地獄の中でトップを張れるだけの実力があるのは事実。注意しながら行くに越したことはない。」


 F,Dから話を聞き、体に少しだけ力が入るエクサーは拳を軽く握った。


 「でも、もう断れないし、行くだけ行ってみるよ。」

 「そう…気をつけてね。」


 エクサーは紅茶を一口。そして、体を浮かせて向かう準備を整えた。


 「おい、エクサー。これ持ってけ。」


 と、そんなエクサーにF,Dはポケットから取り出した何かを投げた。エクサーは華麗にこれを受け取ると、何が投げられたのかを確認。それは魔石だった。


 「保険だ。気をつけて使えよ。」

 「ありがとう。行ってくる。」


 エクサーはA2の教えてくれ座標に向かって勢いよく飛んで行った。


 「大丈夫かしら?」

 「さぁ…」


 4人が心配で目で追ったエクサーもすぐに視界から見えなくなってしまった。


 ーー終ーー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ