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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 7章 『次なる王』 ー五芒星の過去ー
122/208

 プロローグ 遺跡


 人間界・どこかのジャングル


 緑の生い茂った鬱蒼としたジャングル。

 この場所に人の足が踏み込まれた形跡は少なく、野生が野生のままの自然な生態系を保っていた。

 何かの影響で薙ぎ倒された木々。


 そんな場所に危険は多く存在した。


 ここにいる生物たちは獰猛。

 牙の鋭い猛獣。

 死にいたる病気を媒介する虫。

 猛毒を持つ爬虫類。

 噛まれたら弾丸に撃たれたと勘違いさせられる痛みを放つ蟻。

 さらには、一度入ったら抜け出せない流砂に脱水症。

 数えればキリがない数の危険が存在していた。

 

 こんな場所にとある7人のチームが訪れていた。


 大学の考古学の教授1人と3人の学生。

 白人の腰の曲がった髭の生えたお爺さん教授。

 1人はアジア系の女学生。1人はヨーロッパ系の男子学生。1人はアフリカ系の女学生だった。

 本来、学生の数は5人だった。だが、過酷な旅に疲弊してしまい2人は帰国してしまっていた。

 それとガイド。ここより手前の地形までは詳しいと言うことで、ついてきてもらっていた。

 最後に現地住民2人。この土地はガイドより詳しくサバイバルの知識も豊富。もしもの時の保険として連れてきていた。

 

 こんな場所に何故大学が訪れていたのか。

 数ヶ月前、この場所には歴史的な大雨がこの場所を襲った。それにより、川が氾濫。この場所は大洪水に見舞われていた。その際に未発見だった遺跡が露出。その調査のためにチームはここを訪れていた。


 「でもすごいですね。この場所は数ヶ月前に大雨と洪水の影響を受け、ところどころまだその形跡はあるけど、元の形をほとんど元に戻している。」

 「自然の凄さね。これが。」


 自然に感動する大学生の肌の黒いアフリカ系の大学生とアジア系の顔の女子大学生が話をしながら、教授の後ろをついて進んで行った。


 「教授ありました。」

 「おぉ!あれか。」


 森を抜けたその先に現れたのは乾いた川岸に姿を見せた遺跡。

 外側に特に目立った装飾はなく至ってシンプル。

 だが、一目見ればわかるそこは間違いなく遺跡だった。


 「行きましょう。」

 「あぁ。」


 少し腰が曲がり始めた眼鏡をかけた白髪と髭の老体の教授は1人の大学生に助けられながら、現地住民が切り開いた道無き道や坂を進んだ。


 ーーーーー


 人間界・不明の遺跡


 チームは遺跡の入り口に立った。大学チームは準備を始めた。


 「えぇ!そんなぁ…」


 すると、遠くの方でガイドの驚きの声が聞こえた。


 「どうしたんだね?」

 

 その声をいち早く聞きつけ教授はガイドに事情を聞いた。


 「あぁ、教授。現地住民の方々はこの先には行かないとおっしゃっているようで。」

 「どうして?」

 「何やら、これは自分たちの管理ではなく、他の部族が大切にしている場所だとすれば立ち入ることができないからだそうです。」

 「そうか…」

 「どうしますか?」

 「そうなら、そうで構わない。私たちには私たちの考えがあるし、彼らには彼らなりの考えがある。我々研究チームは彼らの土地を踏ませてもらっている立場だ。ここで着いてきてくれと無闇に頼むのは野暮ってもんだ。」


 教授は現地住民に近づき、ここまで連れてきてくれてありがとう。と一礼した。


 「いてくれる事に越したことはないが、調査は我々の方が慣れている。なんとかする他ない。おっと、そうだ。一応、調査が終わるまで外で待っていてはくれないかとお願いしてもらえんか?帰る時にいてもらわんと困る。」

 「わかりました。」

 「頭に不躾なのは承知だと添えるのを忘れないでくれ。」

 「はい。」


 ガイドは現地住民と話を始めた。


 「準備はできたかな?」

 「はい!」

 「できました。」

 「うん!」

 「では、慎重に進むとしよう。」


 教授はヘッドライトの電気をつけると遺跡へと入って行った。


 ーーーーー


 「うふっ!」


 アジア系の学生が入るや否やすぐに咳き込んだ。


 「大丈夫?」

 「えぇ。ホコリ臭いわぁ。」


 教授のヘッドライトが2人を照らした。


 「そうだね。手付かずで空気の通りが悪い。だが、これは手付かずの証拠。誰にも漁られていないと言う証拠だ。」

 「なるほど!」

 「さぁ、進もう。」


 教授たちは先に進んだ。


 「でも不思議ですね教授。何もない。普通こう言う遺跡には壁画があったり彫刻があったりするものですが、ここにはそれがない。ただただ、遺跡というものがあるだけです。不思議…というかおかしいです。」

 「私もそう思っていたところだ。これほどに何もない遺跡なんて初めてだ。まるで少し綺麗にした洞窟を進んでいるようだ。」

 「宗教的な意味はどうなんでしょうか?」

 「その線も考えたいところだが、それを判断するだけの材料がない。」

 「そうですよね。」

 「でも逆に考えれば、このシンプルさが何か意味があるのではないかと思ってしまうね。」


 話しながら慎重分析しながらに進むチーム。少し歩くとその先に光が見えた。


 「へぇ〜すごいなぁ。」


 その先に現れたのは地陽光が部屋の中央にちょうど差し込むように設計された部屋だった。

 太陽光の差し込む先にはこの世のものとは言えないほど綺麗で透き通った光を七色に反射した水があった。

 さらには部屋には中央に向かって部屋を囲むように置かれた6つの石像が置かれていた。


 「飲めるんでしょうか?」


 アジア系の女学生の言葉に教授が写真をとりながら返答した。


 「やめておいた方がいい。確かに美しいは美しい。ただいきなりこんな物があるのは不自然。見るだけにしておいてくれ。」

 「わかりました。」

 「教授、やっと宗教と絡んだ気がしますよ。」

 

 ヨーロッパ系の女学生が教授を呼び、石像を指差した。


 「『ヘビ』『オオカミ』『キツネ』『クマ』『サソリ』『ハエ』意味がありますよ。きっと。」

 「こういった遺跡の像って言う物は大体風化したりする物だが、綺麗だ。きっと作られた時そのままなのだろう。きっと本当に誰も足を踏み入っていないのだ。」


 一通りの調査を終えると真っ暗で長い廊下を進んで行った。


 ーーーーー


 「教授。重いです。」

 「あぁ。重いな。」


 この廊下を進めば進むほど、全員が体がどんどん重くなっていくのを感じた。さらにはホコリ臭く、皆はハンカチを口に当てながら進んで行った。


 「教授、扉です!」


 真っ暗な廊下の先を照らす全員のヘッドライトが、扉を照らした。この扉はこれだけが鉄で作られていて、異質感を醸し出していた。扉にはさっきあった6つの石像の生物たち天に向かっていく様子が描かれていた。


 「先ほどの場所と同じ6匹の生物。ここは、この6匹の生物を象徴するための場所なのでしょうか?」

 「ゴホッ、わからない。でもその可能性が高いだろう。」

 「開けてみましょう。」


 ヨーロッパ系の男子大学生は扉を押してみてもビクともしなかった。


 「手伝います。」


 ガイドも手伝うと、扉が少しだけ奥に動いた感触があった。


 「私も!」

 「私も!あっ、教授は体のためにここにいてください。」


 女学生2人も手伝うと4人の力で扉はゆっくりと開いた。


 「あ、開きましたよ。教授。」

 「頑張ってくれた。みんなありがとう。」


 そう言うと教授は部屋の中に入って行った。


 「暗いですね。」

 

 真っ暗で部屋の中の様子は全くわからない。ただ、この部屋だけ異様に熱く、不穏な感じがした。


 学生たちはより強いライトをバックから取り出し部屋を照らした。

 照らされた部屋に現れたのは、床に置かれた6つの棺と、部屋の奥に豪華に祀られた1つの棺だった。

 

 部屋の異様な感覚を感じながらも教授たちは部屋を物色し始めた。


 「ピラミッドと同様に王か誰かの棺でしょうか?」 

 「王が6人、同じところに納めるかよ。」

 「確かに。何かしらこれは?」


 教授はしゃがみ込むと一番近い位置の棺を隈なく調べ始めた。


 「特に変わった様子はない。どこの遺跡にもある一般的な棺だ。」


 教授は立ち上がって、唾をゴクッと飲むと、奥にある棺に向かっていった。


 「これは特別だ。装飾がされているし金が使われている。もしかすると、王の棺かも知れん。」


 教授は誘われるように棺に手をかけた。


 「教授。いきなり開けるのは!周辺調査が済んでからに…」

 

 教授は言葉を無視して棺を開けようとした。


 「無理ですよ。教授の体じゃ。手伝いますよ。」


 ヨーロッパ系の男子学生が教授の手伝いをしようと近づいた時、教授の開けようとしていた棺の蓋が少しだけズレた。

 その瞬間、棺の隙間からいくつものけたたましい悲鳴と叫びが数十秒に渡って鳴り響いた。この悲鳴は外で待つ現地住民の耳にも届いた。思わず全員は耳を塞いだ。それでも貫通するほどの悲鳴だった。


 悲鳴が終わり、5人は顔を見合わせあった。

 すると、床に置かれた6つの棺がガタガタと震え始め、蓋が爆発したかのように壊れた。

 

 「あ”あ”っ!」


 爆発した蓋の破片がアジア系の学生の頭に被弾。頭からは出血、それも相当の量。

 アフリカ系の学生は持っていたタオルで急いで止血を始めた。


 「大丈夫?」

 「大丈夫か?」


 ガイドはバックの中から医療セットを急いで取り出し救護にあたった。

 

 「きょ、教授!」


 すると、ヨーロッパ系の男子学生が教授を呼んだ。教授は振り返った。

 教授の目に映ったものは、棺から起き上がった骨格の様々な6体の骸骨だった。

 

 次に、一番奥にあった棺がガタガタと揺れ始めた。

 そして、棺の蓋を壁に吹き飛ばすと中から6つの白い火の玉がそれぞれの骸骨の元へ向かって行った。

 白い火の玉が骸骨に当たって姿を消すと、骸骨の体に肉が付き、爪が生え、髪が生え、目が現れた。

 

 そして、肉体を得た6体は棺から出ると、全員が伸びをした。

 

 「あ”ぁぁ〜。寝た寝た。」

 「寝過ぎた。体痛ぇ。」

 

 6体の容姿は非常に整っていた。人間として比較すれば比べ物にならないほどの。


 「ん?人間か?お前たちが我々を解いたのか?」

 「あ、あぁ。」


 大学チームとガイドは理解が追いつかず言葉が出ていなかった。


 「驚いているのか。まぁ人間だしな。」

 「邪魔だ。」

 「おい!何すんだよ!アスモデウス!!」


 男は全裸で教授の前に立った。


 「人間よ。サタンは知っておるか?」


 教授からの返答はなかった。

 

 「知らぬのか。それとも言えぬのか。まぁいい。後者の可能性があるのだ。消えろ。」


 男は手を教授に向けてかざすと、教授は灰になって消えた。


 「コイツが一番知的に見えたが。他に聞いても実はないだろうな。」

 

 そういって男はここにいる大学チームとガイドを一瞬で灰にしてしまった。


 「では、外に出ようか。」


 6人は全裸のまま、遺跡の入り口まで出た。そこにいた現地住民は6体の異様さに驚き、逃げようとしたが、簡単に灰にされてしまった。


 「ねぇねぇ!アスモデウス!早く帰りたいよぉ。」

 「レヴィアタンよ、落ち着くのだ。時が来れば自然と戻れる。我々はこんな下等な場所人間界(ゴミ箱)にいるべきではないのだから。」


 6体は鬱蒼としたジャングルを進んでいった。


 ーー終ーー


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