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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 6章 『宣戦のエクソシスト』
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 113 里帰り


 地獄・クリスト城


 「えぇ!帰っていいの?」

 「あぁ、人間界に帰ってみようか!内緒だけど。」

 

 エクサーは驚きのあまり勢いよく椅子から立ち上がってしまった。起床して間もないエクサーの頭にA2の言葉は眠気覚ましには打って付けだった。


 「でも、ミカエルにはなんて言うの?」

 「考えてない。まぁ、大丈夫だろ。エクサーが人間に危害を加えたりなんだりしなければ。しないよね?」

 「もちろん。」

 「じゃあ、別に行ったって構わないだろ?私の仕事は増えるだろうけどね。ハハハハハ!」

 「よかったな、エクサー。」

 「うん。楽しみだなぁー。」


 久しぶりの人間界ということでウキウキのエクサー。そこにピアノがスープを持って来た。


 「エクサー。スープです。」

 「ありがとう、ピアノ。」


 顔を見てお礼を言おうとしたエクサーがピアノの方を振り返ると、ピアノはお盆で顔を隠して立っていた。

 エクサーは流石に二度見した。ボケているのかとも考えたが、物静かなピアノがいきなりこんなことするはずがないという結論に至った。

 エクサーはこれに驚くと、下から覗き込んだり、横から見たり、色々な方法でなぜピアノが顔を隠しているのかを知ろうとした。

 だが、ピアノの防御は想像以上に固く、全く顔を見る隙がなかった。


 「ちょっと、ピアノ。いい加減にしなさいよ〜似合ってるんだからいいじゃない。」


 S,Bの言葉に恐る恐るお盆を下げるピアノ。エクサーなぜピアノが顔を隠していたかがようやくわかった。

 ピアノは髪を切っていた。髪をかなりバッサリと切り、パーマを当てていた。エクサーが見た感じを素直にいうとすればすごく似合ってるという事だった。


 「似合ってるじゃないか。なんで隠したんだい?」

 

 似合っていると思っていたのはエクサーだけではなく、A2も他のみんなも思っていた。


 「えっと、いや…恥ずかしくて。」

 「恥ずかしい?なんで?」

 「えぇっと…」

 「わかってないわねぇ。男ってのは。乙女(をとめ)っていうのはそういうもんなの!」

 「だって、エクサー。気をつけるといい。エクサー?」


 A2がエクサーに話しかけたが、エクサーは瞬きを忘れたようにピアノの顔を見た。

 マザーシップに乗り込む時にフォルテがすごい美人であると再認識させられた。その妹のともなれば、それは美人だ。エクサーはそれを再再認識した。


 「そんなに見つめないでください。」

 

 エクサーに見つめられ赤面するピアノ。エクサーも見つめ過ぎかと思って慌てて視線を逸らした。

 赤面したピアノこれがまたピアノの魅力を引き立てた。

 元々長い髪の毛でも十分だったが、フォルテ、ピアノの2人は顔が小さい。だからこそ、髪を短くしても収まりが良いのだ。さらにフォルテの大きい目がより目立ち。一言で言えば超可愛いだった。


 「ごめんねピアノ。」

 「はい…」


 A2はグラスの水を飲み切ると立ち上がった。クルッと一回転するとエクサーの方に方向を変え、近づいてきた。


 「では、エクサー。明日準備しておいてくれ。」

 「分かった!」


 ーーーーー


 地獄・トバルカイン魔法学校


 「エクサー、里帰りです?」

 「里帰り、ん〜。まぁそんな感じかな。」


 クーとエクサーとドラギナはいつも通り3人で仲良く昼食を取っていた。


 マザーシップから帰ってきて1ヶ月。ドラギナとエクサーには変化はなかったが、クーに変化があった。

 クーにまさかの空前の成長期が訪れていた。


 流石にもう見慣れたが、クーの身長は150cm手前までいきなり成長。

 マザーシップで見たクーの両親を見たエクサーは、このまま自分を追い越し190cmぐらいまで行くのではないかと少し疑ったが、特にその心配は一旦なさそうだった。


 「そういえば、私、右目の視力が戻ったです。」

 「えぇ、急に?」

 「そうです。多分あれのおかげです。」


 クーの言ったあれが指すものは、サンソン家伝統の『処刑人の目』のことだった。あの後、父と母に報告をしたクーは放課後早速家に帰って練習を重ねていた。とは言ったもののあれは偶然の産物に近いものだったらしく、あれ以降成功することはなかった。


 「でも、本当に大丈夫なのか?人間界に行くって、そりゃあ大変なことだぞ。」

 「まぁ、A2が大丈夫って言うし。」

 「そうか…なぁ、エクサー。」

 「ん?」

 「お前がそんなにA2を信頼する理由ってなんだ?」

 「う〜〜ん…」

 「はたから見ればA2は狂人だ。昔は冷酷で私欲のために殺戮を繰り返すようなヤツだったと聞く。そんなやつがいきなりお前にエサを与える。お前が信頼する理由も、A2がエサを与える理由もよくわからん。もし、A2に目的があるとすれば、お前はそれに利用されるために餌付けされているのかもしれないんじゃないか?」

 「そんな感じはしないけどねぇ。」


 エクサーは地獄で過ごせば過ごす程、感覚が優れていっていた。そのため他者からの発せられる感覚にも誰よりも敏感であるという自負があった。

 それを元にA2を考えても、A2から殺意がエクサーに向けられていると感じたことはなかった。きっとドラギナが深く考えすぎなのだと思った。

 A2はもっと浅く生きていると思った。



 それとも誰も計れないほど深いのか…



 ーー終ーー


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