112 どうせの命
地獄・マザーシップ
いろんなことはあったが、マザーシップは無事着陸し、客員は地面を踏むことができた。
黒い液体生物などのゴタゴタはあっても、皆の顔は満足だった。
「3人ともーーー!おかえりーー!」
久しぶりの地獄の地を踏んだエクサーとフォルテを迎えたのは、来た時に乗ってきた馬車ではなく、ピアノとS,Bだった。
「あ!S,Bとピアノだ。」
「ただいまーー。」
S,Bは走って2人の元まで向かっていき、ピアノは走るとまではいかないスピードでフォルテの少し後ろをついていった。
「どうだった?楽しかった?」
「うん。ちょっとゴタゴタしたけど。」
「全部A2から聞いているわ。」
どうやらS,Bはマザーシップの中で何があったかをおおよそ聞いていたようだった。
「ピアノーー!ただいまーーー!」
フォルテは勢いよくピアノに抱きついた。
「お帰りなさい。姉さま。」
ピアノもフォルテを抱き返した。この様子を見るとやはり姉妹であることを再確認できた。
「でも、S,B。2人できたの?」
「違うわ。あの人と来たわ。」
「F,Dと来たんだ。」
「本当は家で待っている予定だったんだけど、あの人に仕事ができちゃって。じゃあ全員で行こうと言う話になったの。」
「仕事?」
「まぁ、ボーパロットに関してのことね。」
「あぁ、なるほどね。」
「少し向こうに馬車を停めてあるわ。先に入っていましょう。」
「うん。」
「フォルテーー!ピアノーー!先に馬車に戻りましょーーう!」
「はーーい!」
フォルテは足取り軽くスキップで馬車に向かって進み、ピアノはそれをやれやれとため息を一つ。
「お姉様。転んだら痛いですよ。」
4人は馬車まで走っていった。
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ボーパロットは帰っていく悪魔たちをマザーシップの窓から見ていた。
「お迎えだ。」
ボーパロットの後ろからF,Dの声が聞こえた。
「あぁ、連れていってくれ。」
「バカに正直なことだ。」
「招待客には知られてしまった。さらには『サタンの頭部』も盗まれてしまった。これから壁な顔で生きられる程、俺の面は厚くない。」
「まぁ、いい。刑の重さは後で考える。」
F,Dの後ろから茶色い肌の大柄の男の悪魔が2人、姿を現すと、ボーパロットは大人しく2人に連れて行かれた。
F,DもS,Bたちの元へ帰ろうとしたが、足を止めた。
「そういえば、A2どこだ?」
マザーシップ編 ー完ー
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天界・ウリエル宮
『ウリエル宮』ミカエル宮のような純白さではなく、石を積んでできたコロッセオのような建築物が多く並び、剣を堀った装飾が街並みの至る所に設置されていた。『剣聖』と呼ばれ、天界で『武』を象徴するミカエルの管理する場所としては相応しかった。
ここに住む天使たちの服装は他の宮殿近くに住み天使たちに比べ、生地が薄く、丈も少し短い、身軽に動きやすいような神話の服を来ていた。
「おい!ミカエル!どう言うことだ!なんでコイツをここに呼んだ!」
ミカエル宮にはミカエルの響くような大きくて高く、それでいて少しドスの効いた声が聞こえた。
この場にはA2とミカエルが静かに座っており、ウリエルはA2がここにいることに不服なようで机に足を乗っけて身を乗り出していた。
「ウリエル。その言い方はやめてください。それに淑女たるものの態度をしてください。」
「質問に答えろミカエル。なんで、コイツがいるかって話だ。」
「私が呼んだのです。それまではあなたとの話があったので、わざわざ自分の宮に戻ると言う選択は手間になるからこの選択をとりました。落ち着いてください。悪魔と言えども客人です。」
「はぁぁ。」
ミカエルはため息をついて、大人しく椅子に座った。
「色々あったようですね。地獄では。」
「まぁね。『サタンの頭部』の所有者がボーパロットからナールガに移った。」
「ナールガ。五芒星であなたが一緒だった悪魔ですね。」
「そうさぁ。まぁ、契約の件で恨まれているがね。」
「彼はあなたと同等程度で要注意です。」
「ナールガはどうやら王になることが目的だと明かしたよ。それも自分の力だけでなくサタンの封印部位を吸収することでさらに力を手に入れるらしい。」
「そうですか。でもあなたがなんとかするのでしょう?」
「まぁね。万が一にも完全に復活する可能性はない。」
「えぇ、ガブリエルの拒絶結界に左足は封印されています。私たちも厳重に監視下に置いていますし。万一にもルシファーの完全復活は無いです。そう思いたいです。」
「ところでよ〜。お仲間のナールガは地獄の王とやらになりたいんだろ?お前はどうなんだよ?」
ウリエルは挑発するかのようにA2に聞いた。
「ハハハハハ!!興味ないね!どうせの命もっと大きいところを目指したいところだね!!!」
ーー終ーー