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DeViL 悪魔生転物語  作者: オクラ
 5章 『マザーシップ』
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 104 ナールガとサタンの頭部


 地獄・マザーシップ(???)


 ワープゲートを潜った4人。その先の景色は万華鏡の中のような空間だった。


 「何です!?」

 「わからん。」

 「落ち着いて。多分結界が張られているんだと思う。でも攻撃性のある結界じゃない。から一応安心。でも複雑すぎる。上位結界の枠。」


 するとあたりの景色が一気に変化し始めた。そして、目まぐるしく変化した景色はかなり広い部屋に落ち着いた。


 部屋の変化とともにナールガが現れた。


 灰色の肌に赤の目。整った容姿。男は4人を見つめた。4人は男の容姿に気を配ることはできなかった。悍ましいほどのオーラを身に纏った男に吐き気を感じた。


 「A2の魔力を纏ったやつがいると思ったが、やはり釣れたのはアイツじゃないか。」


 ナールガはワープホールを閉じた。


 「みんな後ろに。」


 3人はフォルテの後ろに隠れた。


 「A2を誘き寄せる材料にはなるだろう。」


 ナールガは構えを取ると、溢れんばかりの魔力を放出した。4人の誰感じ取ることのできないほどの小さな微動で右手を硬く握り、ナールガは殴りかかった。


 フォルテは間一髪、5層のバリアを展開。だが、このバリアは無いものとして扱われ、フォルテの胸部に風穴が空く程の強烈な一撃がお見舞いされた。


 フォルテに押されるように、3人も壁に吹き飛ばされた。


 「がぁぁ…!」


 フォルテは傷口をすぐに治そうとしたが、思うようにできなかった。ナールガの莫大な魔力がフォルテの魔力と混ざり合い、魔法が正常に機能しなかった。


 本来こういった魔力による機能障害は起こり得ない現象であり、この現象を起こす方法は、魔力量、魔力濃度、魔力密度の3点が許容範囲内を何十倍にも上回ったことにより起きる。つまり、ナールガは、戦闘において最重要である魔力の圧倒的な物量と性質を有しているということになる。


 フォルテはこれを理解。その上で、フォルテは勝てないことを一瞬で理解した。


 この状況を見たエクサーは困惑していた。


 「フォルテ!大丈夫?」


 フォルテはこの言葉に返答ができなかった。処理する情報が多かったからだ。魔法が使えないこと。目の前にいる悪魔との圧倒的な戦力差。恐怖。次の手…


 これを瞬時に処理し切れるだけの能力は今のフォルテには皆無だった。


 エクサーは傷を治さないフォルテを見て回復魔法をかけようとした。


 「エクサー!止めるです!!」


 それをクーが止めた。


 「なんで!!フォルテが死んじゃうかも!!」

 「見殺しにする気なんて全く無いです。でも魔法は逆効果です。」

 「なんで!!」

 「今、フォルテとアイツの魔力が混ざり合って、正常に魔法が働かない状態です。もしここにエクサーの魔力を流し込めば、魔力回路が修復不可能な程になるかもしれないです。」

 「どうする?」

 「これは自然治癒に掛けるしか無いです。だからそれまで、私たちでなんとか耐えるしか無いです!!」


 エクサーは腹を括った。


 「わかった。耐える!!」

 「うんです。」

 「わかった。」


 クー、エクサー、ドラギナの3人はナールガと向かい合った。


 「ガキ3人…甘く見積もられたもんだ。」


 ナールガはさらに魔力を放出した。


 ーーーーー


 「ふ〜〜ん。」


 ボーパロットのコレクション紹介は永遠に続いていた。流石のA2もこれには退屈を感じ始めていた。


 「あら?A2。来てたのね?」

 「おやおや、キャベラ。どうしたかね?」

 「それがねぇ、クーちゃんお手洗いに行ったっきりどこかに行っちゃったの。見てない?」

 「見てないなぁ〜。バーナボーのところにいるんじゃ?」

 「多分知らないと思うわ。それにあの人、クーちゃんがいなくなったなんて言ったら爆発しちゃうわ。」

 「エクサーもどこかに行ってしまったんだ。まぁフォルテがいるからいいんだが。もしかしたら一緒に遊んでいるのかも。」

 「そうならいいんだけどねぇ。」


 部屋の電気が全て消えた。


 「ここまで私のコレクションの一覧を紹介させてもらったが、最後に!!コレクションという言葉も少しおこがましい、私の所有品を皆様に、今!この場で!!紹介させていただきたいと思う!」


 ボーパロットは先ほどとは打って変わって、何か覚悟を決めたような真剣な顔で話をし始めた。そして、ボーパロットはワープゲートの中から布に包まれた『何か』を取り出した。


 「我が祖父、アセロットが第二次天魔戦争時、天界より持ち帰った一品。」


 ボーパロットが布を丁寧に丁寧に敬意を払うように取り切ると、中から姿を見せたのは、黒く、ところどころ骨が見えた、何者かの頭部だった。


 「!!!」

 「で、でた。」


 キャベラもA2もすぐにそれが誰の物かを理解した。これを理解したのはキャベラ、A2だけではなかった。ここにいる全員が理解していた。これを見て涙を流す者。跪き手を合わせる者。それぞれ様々な形で敬意を表した。それもそのはず、遂に姿を現したのだった『サタンの頭部』が。


 集まった悪魔の中から、一本の手があがる。


 「ん?どうぞ?」

 

 その手の主はフラグセントだった。


 「ボーパロットさん。あなたは何を欲しますか?」

 「…不思議なことをおっしゃいますな。どういうことですか?」

 「言葉のままです。あなたの求める物です。」

 「掴めない説明ですな。真意は?」

 「何も隠さずに言いましょう。あなたの求める物をあげましょう。その代わり、『サタンの頭部(そちら)』をいただけませんか?」


 フラグセントは『サタン信仰会』の代表として、更なる威厳を示すためにサタンの頭部を手にしたかったのだ。そのために自分の身を削る気で、交渉を持ちかけたのだった。


 「…断らせていただきます。いくら『サタン信仰会』の代表のあなたとは言え、これは私の物です。はいどうぞとはならないのですよ。」


 ピキッ!


 一瞬にして、フラグセントの額の血管が浮き上がった。


 「よう言うな若z…「あなたがサタンの頭部を欲しがる理由はわかります。あなたが持っていることは威厳を示すにもなりますから。ですが、王は飾りのままでいいのですか?いや、そんなわけはないのです。地獄は長きにわたり王を欲している。その欲を今、私が解放しましょう。」


 ザワつく悪魔たち。


 「まさか、サタン様の復活を。」

 「いや…」


 ボーパロットはサタンの頭部を高々と持ち上げた。


 「私がなろうと言うのだ。次なる王に!!」


 ーー終ーー


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