99 環境王
バサラという男を体感したエクサーは恐怖が完全には引かず、ホテルに帰ってきた。フォルテは隣の部屋。エクさーとA2は同じ部屋に泊まることになっていた。
そのホテルというのがまた中々に豪華だった。
「お!エクサーこっちにきてくれ。」
A2はベランダからエクサーを呼んだ。
ベランダに出たエクサーの目に入ったのは美しい夜空だった。普段の地獄の赤みがかった夜空ではなく、人間界の黒い夜空。
「懐かしいなぁ。」
「そうかい?」
「うん。」
「また人間界に戻りたいかい?」
「ん〜、半分半分ぐらい?」
「まぁ、戻ろうとしても簡単には行かないがね。」
「そうなの?」
「第一次天魔戦争以降、人間界への侵入は人間保護の観点からミカエルに強く禁止されている。」
「じゃあ、A2はどうやって僕のところに来たの?」
「ハハハハ、無理やりってやつだ。その後バッチリ、ミカエルに問い詰められたがね。」
「そっかぁ、じゃあ帰れないのかぁ。」
「今度無理やり帰ってみるかい?」
「心の準備ができてから。」
「ハハハ!では、そうするとしよう。」
「ふぁぁぁぁ…」
「ん?お眠かい?」
「そうみたい。」
「明日を楽しむために早く寝るといい。」
「A2は寝ないの?」
「少しウロウロしようかと。」
「そうなんだ。じゃあ寝るね。」
「あぁ、お休みエクサー。」
エクサーは隣のベットルームで寝た。
ーーーーー
「ふんふんふん〜。」
ベランダに置かれた机と椅子に座り、程よく吹く風に当たりながら、A2はワインとチーズを楽しんでいた。A2は一通り楽しむと、腕時計を見て部屋から出ていった。
A2は2つ隣の豪邸まで移動すると、玄関でベルを鳴らした。
「あ〜あ〜。すまないA2というものだが、ラムパルダと会う予定があってね。通してもらえるかい?」
A2の声に答えたかのように玄関の門が開くと豪邸の奥に進んで行った。
「お待ちしておりました。旦那様は奥にいらっしゃいます。」
屋敷の召使いはA2を確認すると、奥に通した。
A2は大きな扉の前に立つと、数回のノックをして扉を開けた。
「お〜、待っていたぞA2。ワインでいいかな?私はウィスキーを飲んでいるがね。」
フカフカの椅子に大きな態度で座る悪魔。外見は竜の容姿が残り、発達した爪と腕の鱗に大きな竜の尻尾。この男の名は『ラムパルダ』。外見で感じ取れように、イフリートの族長である悪魔で『環境王』の名を冠する悪魔である。その所以はからが、本気を出せば一体を焼き尽くし、環境を変えるほどであることに起因する。
A2は用意されたソファに腰を置いた。
「お呼び出しには感謝するが、何かようがあるのかな?」
「理由は特には無い、ただ久しく会ってないのでは。この機会にと思っただけだ。」
「お話というわけだ。」
「お前は話が好きではなかったか?」
「もちろん。」
「では、一刻を楽しむことができそうだ。」
2人は久しぶりの再会を祝して近況報告などに花を咲かせた。
「ところで1人で来たのかい?」
「ん?本来は1人での予定だったが、せっかくだから息子を連れていた。もう寝てしまったがな。」
「そうか…そうか…」
「A2よ。お前はまだ俺と戦ってはくれないのか?」
「ハハハ。急なことだ。」
「お前の存在を知ってはや500年か?忘れたが。その頃からお前と戦うのを心待ちにしているのだが。」
「戦えないんだ。」
「毎度その一点張りだな。いい加減それも聞き飽きた。」
ラムパルダを中心に超高温の熱が充満する。
「どうだ?今俺が無理やり殺りにかかっても…」
「ハハハ!まったく暑いことだ。でももしあなたがその気なら私が部屋に帰ってきた時点で殺りにかかっているだろう?」
ラムパルダは熱を納めた。
「その通りだ。」
「私とてあなたと殺り合いたいところだ。だが、本当に私は一定以上の魔法を使うことを禁止されているのでね。」
「まぁいい。これから千年先も死ぬ予定はない。いつかその時も来るだろう。」
「首を長くしていてくれ。」
「A2。面白い話をくれてやる。」
「ほう。」
「教会代表が1時間後に会議だそうだ。」
「あら〜。そうか。『サタンの頭部』が出ると言われたからか。」
「多分な。」
ーー終ーー
変な終わり方になってしまいましたね。申し訳ないです。