9 イフリートの血統
魔法についてなど、基礎的なことについて教わったエクサー。実践をしてしっかりと身についた力は学校でどう発揮されるのか。
「準備は大丈夫?忘れ物ない?」
「大丈夫。」
「心配しすぎですよ、S,B様。23回目の確認です。」
「でもピアノ〜、私心配なのよ〜。」
あれから19日後、今日はエクサーの初登校日。その間、エクサーはA2とF,Oに体術や魔法の特訓の日々を過ごした。時に急に燃やされたり、よくわからない生物に追いかけられたり、起きたらいきなり海の上にいたり、1週間のサバイバルをしたり、過酷な生活をした。
「それではエクサー楽しんでくるといい。まずは校長室に行くこと、いいね?」
「わかったA2、楽しんでくるよ。」
そう言ってエクサーは城を後にして学校に向かった。
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地獄・トバルカイン魔法学校
思った以上に時間がかかったがエクサーは学校に着いた。A2に言われた通り、校長室に行きドアをノックした。
「どうぞ。」
「失礼します。」
「よくきましたね、エクサー。そこにかけてください。」
エクサーは椅子に腰を下ろした。
「では改めて、ようこそエクサー、トバルカイン魔法学校に。とりあえずここでは、重要な階級について話します。」
そう言ってトバルカインはトランクケースを机の上で広げた。
「この学校には実力を示すための階級があります。下から、エメラルド、サファイア、ルビー、その中でも上位下位と分かれています。エメラルドからサファイアへのテストを受けるには、エメラルド上位である必要があるということです。加えて、上位の証として宝石の真ん中にダイヤモンドをつけることになっています。とりあえずエクサーにはエメラルドを与えます。1週間以内に何らかのアクセサリーに加工をして体の見えるところにつけておいてください。」
エクサーはエメラルドを受け取った。
「どんなアクセサリーがあるんですか?」
「多様ですよ。指輪にする者、ブローチにする者、髪飾りにする者、ピアスにする者。とりあえず皆がどんな物にしているか観察してみるといいですよ。」
「わかりました。」
コンコンッ、校長室のドアを誰かかノックした。
「失礼します校長。」
「フールル先生来ましたか。」
エクサーはどこかで見た顔だと思い、記憶を遡ると、見学の時に最初にあった先生だと思い出した。
「や、やぁ、エクサー。見学の時以来だね。」
少しエクサーに緊張しているようだが、いい先生だとエクサーは感じた。
「今日はフールル先生の授業です。一緒に教室に行ってもらってください。」
「そ、そうだよエクサー。で、では一緒に行こうか。」
「はい!」
「ではエクサー、よき学校生活を。」
エクサーは立ち上がり、フールル先生と共に教室を後にした。
「今年は豊作ですね。」
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「新入生だって〜。」
「楽しみだねぇ。」
「新入生だってよ、ドラギナ、どう思う?」
「あぁ?どうも思わんね。オレが気にいるか、気に入らないかだ。」
多様な容姿を持つ生徒の中でも、特に目立っていたのはこのドラギナだった。ドラギナは赤い肌に銀の髪、銀の目を持っている少年で、ドラゴンを彷彿とさせる尻尾を持っていた。
「ふぅ〜かっこいい〜。」
「「「「「アハハハハハハ。」」」」
教室中に笑いが広がっている中、教室の扉を開けフールル先生が入ってきた。
「み、皆さんが知って通り、今日は新入生が来ています。エ、エクサー入ってきてください。」
エクサーは先生の呼び声を聞き、エクサーは教室に入った。皆の視線が一気にエクサーに集まり、エクサーは錆びついた機械のような動きをしてしまった。
「み、皆さんこの子が、」
「小っせぇぇぇぇぇぇぇ。」
先生の声を遮り、一人の生徒がエクサーの身長の小ささを指摘した。
「ホントだ、小っせぇ、アハハハ。」
「本当に男かよ。ハハハハハハ。」
教室中がまた笑いに包まれると、先生が手をパンッパンッと2回叩いた。その音はやけに部屋に響き、少し耳鳴りがするほどだった。
「い、いいですか?み、皆さん。エ、エクサーが来てくれたので、な、仲良くしてください。」
エクサーは軽く会釈をした。
「そ、それでは、エクサーは、そ、そうですね。クーの隣に座ってください。」
先生が指を刺した方を見ると、小さな顔からはみ出すほど大きなメガネをつけた小さい少女がいた。その少女は目が合うや否や目線を逸らした。
エクサーがクーの隣の席につくと、エクサーは挨拶をしようとしたが後一歩が出ないでいた。
「あ、あの、私、クーって言いますです。よろしくです。」
意外にも挨拶はクーの方からだった。
「よろしく。」
エクサーもそれに応えるように挨拶をした。よく見ると、クーは背が低いからか本を椅子に積み上げて高さを盛っていた。
「さ、さぁ、み、皆さん。じゅ、授業を始めます。」
先生の号令から授業が始まった。
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授業は驚くほど楽しく、あっという間だった。元々知ることが好きなエクサーにとっては至福の時間だった。
休み時間になると、皆は次の授業に行く者、サボろうと結託するもの、帰る者、皆の行動はバラバラになった。エクサーもフールル先生からもらった紙を見てどこに行けばいいかを調べた。次は環境の授業だった。
「あ、次は環境ですか?私も一緒です。一緒にいきませんですか?」
まさかのお誘いだった。しかし教室までの行き方もわからないエクサーは断る理由もないので一緒に行くことにした。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「随分とまぁ仲がいいことで。」
ヌッと後ろからの気配と共に後ろから声がした。
「あっ、ドラギナ。」
後ろにいたのは、ドラギナだった。
「エクサーだな?よろしく。」
「よ、よろしく。」
少し高圧的に接してくるドラギナに少したじろいでしまった。
「エクサー。ドラギナとはいつも一緒に教室に行ってるです。今日は3人で行くです。」
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教室に向かう3人。その空気は良好と言えるわけではなかった。
「2人。もっと仲良くするです。」
クーの一言にエクサーは意を決して挨拶をした。
「ぼ、僕はエクサーよろしく。」
「…。」
まさかの無視。エクサーの勇気の挨拶は完全に無になってしまった。すかさずクーが持っていた本の角でドラギナの脇腹を叩いた。
「ドラギナ、なんで無視するです?」
「いっててててて、悪かった、悪かった。いってぇぇ。」
不意打ちだったのもあるだろうが、なかなかいいところにヒットしたようだ。
「オレの名前はドラギナだ。」
「エクサーです。」
ドラギナは少し警戒しながらも、2人はやっと挨拶を交わした。
「ドラギナはすごいですよ。なんてったって、あのイフリートの血統なんです。」
ーー終ーー
こういう、異世界チックな話って大体種族が出てくると思うので、イフリートを出しました。え?イフリートって種族なの?と思った人、黙っててください。これは創作なので、よほど意味がわからないことをしない限り大丈夫です。(そう思っています)
友達がバーでバイトを始めました。全然悪くはないのですが、昼夜逆転には気をつけてほしいです。あと、未成年にお酒を提供して豚箱には入らないでほしいです。