1 Happy birthday
下界(人間界)・サンタモル孤児院。
行き場なき子供達を保護する場所。隣には教会が併設されている。
子供達は年相応の元気さを見せ、広場で遊び回っていた。
しかし、ある一人の少年は、孤児院の図書室で電気をつけず、床に座りながら本を読んでいた。
彼の名はエクサー、11歳。
黒く軽い癖毛の髪の毛に、大きく茶色い目にうっすらと目元に着いたクマ。
同年代と比較しても低い身長に痩せ型の体。
総体的に見ると目つきの悪い、少し暗めの外国人少年と言ったところだった。
彼の記憶はぼんやりと覚えている両親の顔を除いてこの孤児院で作られている。それほど、長くここにいる。同じ年であれば一番古株である。
淡々とエクサーが本を読み進め、時計が10分、15分と針を進めていく。すると、図書室のドアが開いた。そこにいたのは、一人の少女だった。少女は一直線にエクサーに向かって歩を進めた。
「エクサー。やっぱり、ここにいた。今日は外で遊ぶんじゃなかったの?昨日言ってたじゃない。」
「確かに昨日はそういったさ。でも気が変わったんだ。仕方ないだろ?」
「じゃあ一言言ってよね。」
少女の名はティニー。
茶色のロングヘアーをクルッとお団子にまとめ、茶色の眼を宿した少女。ほっぺたにはうっすらとそばかすがついていた。
彼女はエクサーの次にこの孤児院にきた子供でいわば幼馴染である。
「ちょっと暗いんじゃない?」
「いいんだよ。このくらいの光で。」
「そう、それで今日は何読んでるの?」
「植物の本だよ。」
ティニーはエクサーの隣に座った。エクサーが本を読んでいればティニーが隣に座って一緒に読む、ティニーがわからないところはエクサーに質問をして答えを返す。それは次第に読書ではなくミニ授業のようになっていく。いつものことだった。
本のページが1枚、また1枚と捲られ、読んだページがまだ読んでいないページを越した頃、ティニーは水をとってくると言って図書室から出て行ってしまった。
エクサーは本を読むのをやめ、立ち上がると、本棚に向かい次に読む本を物色し始めた。
この瞬間がエクサーは好きだった。何を読もうかと、とりあえず本を手に取り物色するこの時間がたまらなく楽しかったのだ。
すると、エクサーは真後ろの本棚のから気配を感じた。
急いで振り返ったが何かいる様子もなかったが、何かがいるのでは?と気になるので、恐る恐る気配のした本棚に歩み寄った。
と次は奥の本棚から気配を感じた。エクサーはまた恐る恐る近づいていった。それの繰り返し。エクサーはどんどん図書室の奥へ進んで行った。
図書館の奥に行くほど、窓が無くなり部屋は暗くなっていく。ホコリも増え、なんとなくカビ臭い匂いが鼻についた。そしていつの間にか、本棚の気配は無くなり、エクサーは何かに導かれるように進んで行っていた。
すると、いきなり目の前の本棚と本棚を白い半透明の布の様なものが通り過ぎた。
エクサーはその場で固まるしかなかった。恐怖というわけではなく、ただただ理解ができなかった。すると再度その本棚から真っ白な透けた布が姿を現した。なんとそいつには目と口があった。そしてこっちを見るや否やニコッと笑ってこっちに向かって突っ込んできた。エクサーは体制を崩し、尻餅をついた。
真っ白な透けた布は、鼻歌を歌いながらエクサーの周りをぐるぐる回っていた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
やっと声が出た。真っ白な透けた布はうるさいと言わんばかりの顔をした。
しかしエクサーはこの布に敵意がないことに早々と気がついた。そして会話を試みた。
「君は何?」
布はクスクスと笑うと急に腕を生やした。そして右手で下を指差した。エクサーが下を見ると、床が真っ黒になっていた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
二回目の大きな叫びに真っ白な透けた布は腕で耳があるであろう部分に手を押し付け、またうるさいと言わんばかりの顔をした。
するとエクサーの足を誰かが掴んだ。なんと真っ黒な床から右手が出てきていてエクサーの足を掴んでいた。そして左手も出てくると床を押さえ、頭頂部から、姿を現し始めた。
男だった。白髪、赤眼に白のスーツを着た身長の高い男だった。男はふぅと息を吐くとスーツを汚れをパッパと祓った。そして男はエクサーを見てニコッと笑た。
「ハッピーバースデーーーーーーーーーーーーーー!」
ーー終ーー
話を書くのって難しいんですね。頭の中の映像を言葉にすること言語化ってすごい難しいです。
最近自動車学校でMTを取ろうと頑張っているんですが、やっていると、バスの運転手やトラックの運転手ってすごいと思います。内輪差とか断続クラッチとか。普通にてんてこまいになることを平然とやっています。
世の中にはやってみないと大変さがわからないことがいっぱいあります。だからこそ楽しいと思えます。