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マギア・リーベル  作者: 彩音
本編
6/20

06.エアルとの出会い。

 魔法連盟が用意したリアとアミの為のマンション。

 昼頃に体調が朝よりはマシになったリアはアミに肩を借りて自分達の住処へと戻ってきた。

 リアはベッドで休み中。アミはリアが食べれる物を買いにコンビニに出掛け中。

 とりあえずゼリーとスポーツ飲料とレトルトのお粥を頼んでおいた。


「いたたたっ」


 毎月毎月苦痛だ。女性には何故こんなのが存在するのだろうか。

 特に今月は通常よりも重い。痛みを少しでも和らげようと身体を丸くするリア。

 ふと、頭の中に今朝方倒した日本刀男のことが思い浮かぶ。

 正確には倒した後に出現してきた邪影のこと。

 既視感を覚える姿だった。元の世界でリアと共に公爵令嬢に嵌められて市井に落ちた司祭の息子。

 今迄も元の世界の邪獣の姿だったり、何処かで見たことのある人間の姿だったりしたことがある。

 まさかとは思うが、元の世界から地球に……。日本に奴らは送られてきているのだろうか?

 日本に来てからリアは異世界転生・異世界転移という物語があることを知った。

 その物語を読んで思ったこと。公爵令嬢は異世界転生者で間違いはないだろうと思った。

 それもここ、日本の出身者。彼女は聡明な者として有名だった。

 あの世界では誰も知らなかった連作障害などといったことを知っていた。

 リアも冤罪で彼女に陥れられる迄は彼女に一定の尊敬の念を抱いていた。

 蓋を開けてみれば全部日本で学習出来ることばかりで愕然としたことは記憶に新しい。


「う~ん。偶然なのか、必然なのか。必然であればなんで私を執拗に殺そうとするのか。どうやって日本に邪影を送り込んでいるのか。謎だらけ」


 リアはエアルを()び出してみる。

 彼女が普段いる場所は元の世界の妖精達の国。

 で、あれば彼女が何かを知っているかもしれないという期待を持っての召喚。

 思えばエアルとの付き合いもそれなりに長くなった。

 彼女との出会いは地下牢獄で牢番からギロチンに掛けられることを伝えられる前々日のこと。

 エアルは"ふらふら"と地下牢獄にやって来た。

 妖精の姿をまともに見れる人物は日本でも元の世界でも限られた極一部の者だけ。

 日本の場合は【リーベル】の中の一部の者達だけと言った方が正しい。

 他の地球人は誰も彼女の姿を見ることは出来ない。

 リアはエアルのことを見ることが出来る限られた人物のうちの1人だった。

 エアルもそれに気が付いたのだろう? リアの前に飛んで来て彼女に自分の姿が見えているのかと尋ねてきた。

 頷いたリア。彼女の頷きに助かったという表情をしたエアル。

 エアルは迷子になっていたらしい。


「方向音痴?」


 とリアは思わず言葉を漏らしてしまったが、そうではなかった。

 国にエアル達にとっては気持ちの悪い流行り病のような呪詛が蔓延をしていて、それで帰り道が分からなくなったということだった。

 呪詛は妖精達の脳波を狂わせる何かが仕組まれているとのこと。


 真面目にエアルの話を聞いていたリアの目の前で彼女は突然羽根の動きが止まり、牢の地面に落下した。


「わわっ! 大丈夫?」


 問い掛けるリアの耳に届く可愛らしい音。

 エアルのお腹から発せられた空腹の合図。


「お腹空いているの?」

〔もう3日くらい何も食べてないから〕

「妖精が食べられるって物って貴女達の世界に咲く花の蜜だけだったよね? ここにはそんなの無いし、どうしよう」


 真剣に悩むリア。エアルが彼女に他にも食べれるモノがあることを伝える。


〔ボク達、ボク達のことを見られる人に限り、その人の魔力も食べられるよ〕


 物欲しそうな顔。リアにエアルの願いを断ることは出来なかった。


「じゃあ私の魔力を食べていいよ」

〔良いの! ありがとう。えっと……〕

「アデリア。それが私の名前。貴女の名前も聞いても良い?」

〔エアリアル。よろしくね。リアお姉ちゃん〕

「うん、よろしくね」

〔早速だけどリアお姉ちゃんの魔力貰うね〕

「分かった。でもどうやって食べるの?」

〔それはね……〕


 エアルの瞳が輝く。

 彼女は最後の力を振り絞ってリアの首元に飛んでいき、彼女の首筋を丹念に舐め始めた。


「擽ったい。あ! 魔力が食べられてる感じがする」

〔リアお姉ちゃんの魔力美味しい。凄く好きな味〕


 余程お腹が空いていたのだろう。

 リアはこの時、体内に蓄積されている魔力のうちの半分の量をエアルに食べられた。


〔美味しかったぁ。ねえねえ、リアお姉ちゃん。ボク、リアお姉ちゃんの魔力気に入っちゃった。これからも食べたいからボクと従魔の契約をしようよ〕

「それって貴女が私の使い魔になるっていう契約だよね? 良いの?」

〔うん! リアお姉ちゃんと契約したい〕

「こき使うかもしれないよ?」


 エアルからの申し出に悪い顔をしたリア。

 当然、彼女にそんなことをするつもりはリアにはない。

 エアルはリアの考えなんてお見通しだったのか? リアよりも悪い顔をして彼女の目の前に飛び、彼女の頬を"ぺたぺた"と触りながら言葉を紡いだ。


〔へぇ、どんな風に?〕

「それは……」


 答えに詰まったリア。彼女を見て笑うエアル。


〔リアお姉ちゃんはボクを酷使することなんて出来ないよ。見るからに優しい女性(ひと)っていう雰囲気(オーラ)が身体から漂ってるもん〕

「……降参。貴女が良いなら契約することは吝かじゃないよ」

〔ほらほら、リアお姉ちゃんはボクのこと気にしてるし。そういうところだよ〕

「はぁ……っ。ところで貴女は自分の世界に帰ることは出来るの?」

〔リアお姉ちゃんと契約を結んで、お姉ちゃんが送還魔法を使ってくれたら自動で帰れるようになるよ!〕

「分かった。じゃあ……」


 リアは"そっ"とエアルに触れる。

 彼女の頭を優しく撫でつつ従魔の契約の言霊を口にする。


「我は求む。我は誓う。この者エアリアルを我が(しもべ)とし、共に歩むことを。我が名はアデリア。我がエアリアルに与える規則は唯1つ。自死の禁止のみなり。我が求めに応じるか否かはエアリアルに託すものとする。さぁ、我が願いに応えるか否か選択せよ。エアリアル」


 リアが言霊を終えてエアルを見る。

 そこにいたのは口をだらしなく開いて佇む妖精。


〔……普通さ、ボクに選択させることじゃないんだよね。しかも規則がゆるゆるすぎるし、リアお姉ちゃんは危機感って無いの? ボクはリアお姉ちゃんを殺せるってことだよ? 規則の中に主人の殺傷を禁ずるを入れるべきだと思う〕

「私が主人に相応しくないって思ったら殺してくれて良いよ」

〔なんだろう。ボクが見守ってないと不安な気持ちが膨らんでる。……我、エアリアルはアデリアの求めに応じる。今より我はアデリアの使い魔なり〕


 リアとエアル。1人と1体の間に淡い白色の光が発生する。

 これにより、リアとエアルは主従の関係となった。


〔リアお姉ちゃん、改めてこれからよろしくね〕

「うん、こちらこそよろしくね。エアル」

〔そう言えばリアお姉ちゃんはボクを使い魔にしたことで特典が付与されたから、それについて説明しておくね〕

「特典?」

〔うん。異空間収納の魔法が使えるようになったよ〕

「なんだか便利そうな魔法だね」

〔便利だよ。その名の通りに荷物は全部異空間に仕舞えるし、異空間に入れた物は時間が止まるから例えば食べ物を入れても腐ったりとかしない。前の主人が残していった物もあるから良かったら使って〕


 善は急げ。特典は急げ? エアルに言われて異空間収納の魔法を使ってみるリア。

 そこにあったのが魔剣グラムだった。


「これは……。エアルの前の主人ってどうしてるの?」

〔最初は良かったんだけど、段々図に乗り始めてね。ボクを玩具のように扱うようになったから他の妖精達が怒り狂って人間から黒光するあいつに姿を変えたよ。その翌日だったかな? 繋がりが切れたから、多分何者かに殺されたか、餌として食われたかしたんだと思う〕

「うわぁ……」


 妖精は怒らせると怖い。

 リアは彼女達にドン引きした。

 現れるエアル。

 リアを見て、心配そうに彼女の頬をエアルは触る。


〔リアお姉ちゃん、大丈夫?〕

「正直辛いけど、大丈夫だよ」

〔矛盾してるよ。リアお姉ちゃん〕

「……それより聞きたいことがあるんだけど」

〔何?〕


 エアルに元の世界がどうなっているかを聞くリア。

 エアルの返事は元の世界と妖精界は妖精女王の判断で完全に切り離されて今はどうなっているのか分からないとのことだった。


「そうなんだ?」

〔うん。どうかしたの?〕

「今朝見た邪影。……エアルも知ってるよね? 犯罪者とか人食い樋熊を討伐した後に現れるあいつ」

〔うん〕

「今朝見たそいつが元の世界の司祭の息子そっくりだったんだよね。だからって元の世界と関係してるのかどうかは分からないんだけど、エアルは何か知ってるかなって思って」

〔う~ん、ボクが知ってることがリアお姉ちゃんの求める答えに繋がるかどうかは分からないけど……〕

「うん? 何か心当たりがあるの?」

〔心当たりというか、ティターニア(妖精女王)様が妖精界とリアの世界を切り離す時に公爵令嬢(あの女)が幅を利かせてたよ。あの国は公爵令嬢(あの女)の言いなりって感じだった〕

「……キナ臭い気がする」

〔ボクもそんな気がしてきた〕


 リアとエアル。揃って難しい顔をする。

 そのうち彼女達がうんうん唸り始めたところでアミが元気よく帰宅して、リアとエアルは今は重くて面倒なことを考えることは止め、帰宅したアミと共に仲良く時を過ごすことにした。

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