第9話 俺が変われたなら君も変われる
今日も今日とて三人の深かったり浅かったりぶっ飛んだりする会話は続いていく。
「俺も変われたんだ君も変われるし誰だって変われる!みたいなセリフあるじゃん?」
「ロッキーだっけ?」
シルベスタ・スタローンとは対極にいるゆるふわ美少年、陸が俺の言葉に返答してくれる。
「これ脳筋とか体育会系が言えば格好いいセリフだけど紫音みたいな胡散臭いメガネが言うと急にマ○チ商法っぽくなるよなー」
「誰が胡散臭いメガネだ!」
俺の対面に座る陰湿ダメガネの紫音が律儀にツッコミを入れてくる。
「相ノ木こそ普段、胡散臭いではないか?」
すかさず紫音が言い返してくる。
「あのな~俺の場合は愛想がいいって言うんだよ。」
「でも、相ノ木クラスの女の子から成績褒められてたとき "なぁに!たまたまさ、そうだ!良かったら勉強見てあげようか?色々教えてあげるよ" とか胡散臭いこと言ってたよね?」
ひっ、ひぃいいいよく見ていらっしゃる陸様!
陸がジトーッとした目で俺を見つめてくる。ぐっ、ジト目な陸もかわいい…っ!
「相ノ木よ、僕によくキャラが渋滞してると言うがおまえこそ渋滞気味ではないか?」
「お前みたいにマイナスに振りきってはねえーよ!」
ポンコツドMメガネだけには言われたくはない!
「それに俺はそこそこいい感じで生きたいんだよ。よくある"やれやれ普通になりたいぜ"みたいなスタンスはごめんだからな!そこそこモテてそこそこ儲けて、そこそこいい人生を送りそこそこ長生きするつもりだ!」
「「相変わらず相ノ木はひねくれてるな」」
2人の声が合わさった。あれ?そんなに悪い人生目標かな??
「そんなに言うだから2人とも大層素敵な夢があるんだろうな!」
「うーん僕も確かに大層な夢は無いけど、相ノ木の場合はもっと刹那的なものも大切にした方がいいと思うんだ。」
「陸の言う通りだ。おまえは目標とか夢から目を背けてるようにしか思えん。」
ぐっ二人とも芯をくったことを言ってくる。
「そんなこと言ったって…うーん、どうしたらいいんだ?」
「相ノ木は、なまじ人より頭がいいから一々考え過ぎちゃうんだと思うんだよね。」
陸が俺に微笑みかける。
「だからシンプルに頭に浮かんだこととか興味を持ったことを愚直にやってみてもいいんじゃないかな?」
うーむ、頭に浮かんだことか…エクストリーム・アイロニング…いや、それはダメだ死ぬ!!
いや、こういう風に俺はいつも考えてしまうのがいけないと指摘されたばかりじゃないか!よし!
「ありがとう陸…俺、エクストリーム・アイロニングに挑戦してみる!」
「えっ、あの隣の部室のやつ!?」
「どういう思考回路を辿ればそのような答えに至るのだ…。」
「そうだ!みんなもエクストリーム・アイロニングやってみないか!大丈夫だ俺が変われるなら二人も変われるはずだからな!」
つづく
紫音「ところでエクストリーム・アイロニングとはなんなのだ?」
相ノ木「あれ、知らないのか?断崖絶壁とか海の中でアイロンがけを行う競技だぞ?」
陸「ふつうは知らないと思うよ…」