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第15話 Freedom

自由とは何かを議論していくことになった三人に自由の権化が襲いかかる。

「自由ってなんだろうな?」


「なんだ、またお得意の哲学か?」


正面から無知メガネの皮肉が飛んでくる。


「無知の知の知抜きには俺のセンチメンタルはわからないだろうな。」


「自分が無知なことを知ることが大切っていうソクラテスの言葉だよね?流石に分かりづらいと思うよ?」


陸が俺の皮肉に丁寧に解説を入れる。陸がいてくれてよかった。ご両親に心からありがとうを言いたい…!


「では、相ノ木は僕が自分が無知なことを知らないの愚か者とでも言いたいのか!?」


「いや、"無知の知"から両方の"知"を抜くから残るのは"無"だけだな。つまり紫音が空っぽな奴だっていう皮肉だよ。」


「相ノ木よ…それは流石に分かり辛すぎて怒るに怒りづらいぞ?」


「一説によるとIQが20違うと会話が成立しないみたいだしな。」


「なんだと貴様!!」


「おっ今の皮肉は理解できたのか!偉いぞ紫音!!」


「相ノ木言いすぎたよう」


さて、紫音をおちょくる恒例行事を済ませたことだし陸と話そうっと。


「実際問題、自由ってかなり制限されたものだよなー…イージーライダーでハンセンが言ってたみたいに規則の中での自由こそ"自由"っていう風に。」


「そうだね…ビリーが劇中で言ってたみたいにあまりにもフリーダムな人って結局排斥されるものだと思うし自由に生きるっていうのも大変なものだと思うよ…」


「ふっ…しかしそれでも尚、自分なりの自由を押し通していくからこそ格好いいのではないか?」


「おまえはいつか自由な人、というよりは無敵の人になりそうだな。」


「相ノ木よなぜ僕を危険人物みたいに言うのだ?喧嘩を売っているのか?」


「まあまあ二人とも…でも、あまりにも自由を容認しちゃうとそういう無敵の人みたいなのが出て来てしまう怖さは孕んでいるよね。」


可憐な表情で難題に取り組む陸かわいい!すごく推せる。


「ルソー社会契約論で"人間は生まれながらにして自由であるのに、至る所で鉄鎖に繋がれている"って言っていたけど、別にそれでいいんだろうよ。」


「ふっ…僕達みたいな一般人には縛られた自由の中でどう楽しむかが大切なのだろうな。」


「珍しくマトモなことを言うじゃないか?」


「確かにそうだね!」


「そしてだからこそ何者にも縛られない光希先輩みたいな人間に人は恋い焦がれてしまうのだろうな。」


「いや、あの人のフリーダムさは容認してはいけない類いのやつだと思うぞ?」


あの人こそ放っておいたら無敵の人になりかねない…ッ!!


「なんの話?」


「うわあっみっちゃん先輩!?」


「光希先輩!」


いつの間にかみっちゃん先輩が俺の後ろに立っていた。ヤバい聞かれたか!?


「ハロハロ~♪で、なんの話かな!私も混ぜてよ!」


「いや今、次の自主制作映画について話あっていまして…。」


「さっき"人間は生まれながらにして自由であるのに、至る所で鉄鎖に繋がれている" って言ってたけどルソーは "人間は自由であるべきだ。どんな制限も自己の意志に基づかねばならない"とも言ってる!相ノ木は自分の都合のいいように言葉を引用しすぎだと先輩思うぞ!」


…ぐっ、聞いてたんじゃないか!そして相も変わらず明け透けとしているなあ…この人。


「光希先輩の言う通りだぞ相ノ木よ。」


紫音が今だ!とばかりに先輩に同調する。アホのくせに…ッッ


「それにジョン・ロックも"自由とは、常に危険なものである。しかし、奪われた自由よりも、危険な自由を選ぶべきだ"って言ってるからね!私は自由という財産を大切に生きるわ!」


先輩は何者にも染まっていない子供のような爛々とした目で訴えかける。こういった所に紫音は惚れているんだろうな。どこまでも純度の高い意思というのは高潔でいて俺には少し眩しく感じた。


「でも、いくらジョンロックのように自然権を掲げても結局自然に妥当な規則である法律に縛られるものだと思います。」


なんとか食らい付いてみよう。


「相変わらず相ノ木はひねくれているな!大丈夫だ!私を規制する法律なんて私が変えてやる!」


「なっ…」


いや、みっちゃん先輩ならやりかねん!そして悔しいことに人にそう思わせる実力と魅力をこの人は持ち合わせているのだ。


「みっちゃん先輩は強いですよね…すごいなあ。」


陸が熱中していた議論に合いの手をいれてクールダウンさせる。さすが陸様!


「私は強くなんてないさ…」


おや?先輩が珍しく弱気なことを


「みんなが弱すぎるだけだ!」


いや、至っていつものみっちゃん先輩だった。


「そういえば最近、精神注入棒を買ってだな!今日は試し打ちに来たんだ!」


「それ暴行罪じゃありません!?あと精神注入棒なんてどこに売ってるんですか!!」


「なに暴行罪の時効まで五年ほど監禁すればいいだけのことだ!そして監禁罪の時効までさらに五年ほど脅迫するとしよう!因みに棒はAmaz○nに売っていたぞ!」


「この人、言ってることが無茶苦茶だ!!」


「フリーダムすぎるよう…」


「相ノ木!陸!ここは僕に任せて先に帰れ!」


相ノ木!陸!と叫ばれると相ノ木陸みたいに聞こえて陸と結婚した気分になれるな…じゃなくて逃げなければ!


「よし陸!ここはこのドMに任せて逃げるぞ!」


俺は咄嗟に陸の手を掴んで部室のドアへと走る。


「あっ…手…」


陸が何か言った気がするが今はそれどころじゃない!無敵な人に殺されかねん!!


「紫音おまえの犠牲…いや、ご褒美か?どっちでもいいが無駄にはしないぞ!!」


「ふっ…まったくいい人生だった。」


「チェェエエストォォオオオ!!」


みっちゃん先輩の叫びがこだまする。俺と陸は一目散に逃げたが、見透かしたようにドアは固く施錠されていて結局、俺ら三人は精神を注入されたのであった。


                つづく        

好きな「自由を題材にした映画」

相ノ木「イージーライダーもいいけどルネクレール監督の自由を我らにがエスプリが利いていて好きだな。」

陸「有名だけどショーシャンクの空にかな…?最後のシーンで晴れやかな気持ちになれるよね!」

紫音「マッドマックス」

陸「た、確かにフリーダムの極致みたいな作品だけどね」

相ノ木「紫音はマッドマックスのキャラと仲良く出来そうだよな知能指数が近そうだし」

みっちゃん「私はハンガーゲームかな!」

相ノ木「先輩はデスゲームの主催者側にいそうですよね…」

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