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暁に立つ吸血姫  作者: 澪亜
第一章 過去編
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吸血姫は、愛を誓う

「何してるの?」


机に向かって書き物をしていたノックスの側によって、問いかける。


「ん……新しい魔法を作ってた」


手元を見れば、紙にビッシリと術式が書かれていた。


「うわ、頭が痛くなりそう」


「アウローラなら、すぐ理解できるでしょ」


「ちゃんと読めば、ね。ちなみにコレは、どんな魔法?」


「雨を降らせる魔法」


「ふーん……農家さんは大助かりね。出来上がったら、今度ウチの畑で試してみようかしら」


そんなことを話しつつ、私はノックスにもたれかかってヴラドの本を読み始める。

ノックスもまた、魔法の開発作業に没頭していた。


互いに無言。

けれども、それが心地良い。

無理に話さずとも居心地が良いのは、それだけ彼との関係性を築き上げてきたからだも思う。

それが、とても嬉しい。


「……と。そろそろアイスの様子を見てこなくちゃ。ノックスは何か飲み物いる?」


陽が傾き始めた頃、名残惜しくも立ち上がる。


「じゃ、紅茶をお願い」


「了解」


それから部屋に戻ってはアイスの様子を見て、かき混ぜて、また部屋に戻ってはアイスの様子を見て、かき混ぜて、と言うのを繰り返す。

そうしてアイスが出来上がる頃には、夜の時間になっていた。


家族とノックスと共に夕食を楽しんだ後、再び私たちは部屋に戻ってアイスの試食会を始める。


「これがアイスかあ……」


「美味しいでしょ?」


「うん、美味しい。ありがとう、アウローラ」


「昼にママも言ってたけど、コレは私に付き合ってくれたお礼なんだよ。だから、お礼を言うのは私の方ってこと。いつもありがとう、ノックス」


「……それを言うなら、僕こそアウローラのおかげで楽しませて貰ったよ。君が側にいてくれたら、僕は一生退屈をしない」


「大袈裟じゃない? 私の記憶は確かに珍しいかもしれないけど……」


「違うよ。君の前世は、確かに興味深い。それは認める。けれども、その記憶も君がいなければ、僕にとっては無価値なんだ」


サラリと私の髪が揺れた。

その先には、ノックスの手。

そっと覗き込めば、彼の顔に浮かんでいるのは苦笑。

けれども瞳は澄んでいて、真剣な色が宿っていた。


「アウローラも知っているだろう? 僕は、大抵のことに興味が湧かない。だから知識があっても意味がない。……君だけなんだ。君だけが、僕の心を動かす」


顔が熱くなった。

多分、ノックスにはバレバレだろうな。

私の顔、鏡で見ずとも真っ赤に染まっていることが容易に想像がつく。


「……十歳の少年が言うセリフじゃないわよ」


「それを言うなら、君はまだ十歳にもなっていないね」


「ええ、そうよ。そうですとも。だから、こんなに戸惑っているんじゃない。十歳そこいらの少年が、七歳の少女に、まるで……まるで」


……愛の告白をしているみたいじゃないか。

好きとか、嫌いとか、そんな次元じゃなくて。

一生一緒に居てくれと、プロポーズをされているようだ。


「年なんて、関係ないと思うけど。僕は、思ったことを口にしているだけ」


私の考えを読んでいるかのように、ノックスは呟く。

ますます私の頭の中は彼でいっぱいになって、熱くてどうにかなってしまいそうだった。


……ああ、ダメだ。

今の関係性が居心地良いからとか、まだまだ若いからだとか、転生者だから、とか色々考えていた。

けれども、考えたところで意味などなかった。

どうせ、自分の気持ちからは逃れられない。


例え今この一瞬の熱に浮かされただけだとしても、後悔はしない。

むしろ自分の気持ちを誤魔化した方が、一生後悔する。


「……顔、真っ赤」


「誰のせいで……!」


私の返した言葉に、ノックスは嬉しそうに笑った。


「愛してるよ、アウローラ」


「……本気に、良いの? 私たちの命は、永いんだよ? 私を選んで、後悔しない? 今ならまだ、勘違いだって笑って済ませる。でも、ここで止まらなかったら……私は貴方を逃してあげられない」


「酷いな。僕の言葉、疑ってる?」


「疑っていないからこそよ」


「なら、そっくりそのまま返すよ……まあ、後悔させるつもりはないし、後から出てくる男に譲るつもりもサラサラないけど」


「また、子どもらしからぬ発言……!」


観念して、そのままノックスに体を預ける。


「性分だから、仕方ない。……一生、一緒にいてくれ」


「……降参よ、ノックス。大好き。私をお嫁さんにして。一生、私の側で私のお願いを聞き続けてね」


「それは幸せな未来だな」


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