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暁に立つ吸血姫  作者: 澪亜
第一章 過去編
14/54

吸血姫の違和感

2/2

「……た、食べ過ぎた……」


食事会の帰り、カミルは真っ青な顔をしていた。


「だ、大丈夫?」


「良いの、良いの。放っておきなって。お金を忘れた挙句、お金を貸すって言ったのに借りはつくらない! とか訳の分からないこと言って、大食いチャレンジで懸賞金を狙うなんてバカなことをするから、こんなことになっているのよ。完全に、自業自得」


エルマは冷たく切り捨てて、さっさと歩き出す。


「でも、凄かったわよね。あれだけ飲み食いした後に、成功させちゃうんだもの」


「まあ、食べ溜めの癖がついているからね。私もカミルも。ホラ、仕事に熱中すると寝食忘れるでしょ? そんな生活続けていたら、食べられるときに食べよう! って体がなっているのよね。それにあのチャレンジ、失敗したら軽く今日の会計は倍よ、倍。万が一失敗したら、本末転倒もいいところ。そりゃ、失敗できないわよね」


「……確かに」


「エルマの言う通り、自業自得かもしれないけど……このまま放置していたら、暫く動けなさそうだな」


ノックスはそう言って、荷物を持つようにカミルを脇に抱えていた。


「……ノックス。貴方って、すごい力持ちだったんだね。その細い体のどこに、そんな力があるの?」


そんなノックスの動作に驚いたらしいエルマは、目を見開いて呟く。

確かに軽々しくカミルを抱えるその様を見れば、驚いても仕方のないことかもしれない。


「一応、鍛えているからな。家に届ければ良いか?」


「う、うん。私も一緒に行くわ」


時々カミルの様子を見ながら、家に向かって歩く。

途中から、カミルは呻めき声すらあげられなくなっているようだった。


「あ! ノックス君だ!」


丁度お店とカミルの家の間ぐらいで、女の子たちの集団に遭遇した。


「こんなところで偶々会えるだなんて、嬉しい。ノックス君、何をしているの?」


あまり話したことはないけれども、何度かこの街の同世代の集まりで見かけたことはある。

その程度の付き合いだから、当然彼女たちの名前すら知らない。


「見ての通り、カミルを運んでいるんだ」


ノックスは、困ったような笑みを浮かべつつ言った。


「え!? カミル、どうしたの?」


いつの間にか女の子たちに押し出された形となった私とエルマは、ノックスの周りに集まる女の子たちを遠巻きに見ていた。


「……人気ね、貴方の婚約者」


「そうねぇ……」


「あれ? モヤモヤしたり、苛ついたりしないの?」


「……ちょっとはね。でも、あまり気にしないようにしてるの。まあ、ノックスが心変わりするようなら、話は別だけど」


「ふーん? 熱いわねえ」


「どういう反応?」


「だって、心変わりされないって信じれるほど、愛されているってことでしょう?」


「まあね。……でも、彼と一緒にいるのに、疑っていたら心が保たない、ていうことが大きな理由」


「確かに。彼、人気そうだものね」


ふと、視線を他に移す。


「……ねえ、エルマ。あの怪しげな服着ている人は誰?」


その時視界に映った人が気になって、話題を変えるついでにエルマに問いかけた。


「怪しげな服って……あれは、魔法師のロープじゃない」


「……魔法師?」


「アウローラ、貴女、魔法師を知らないの?」


「え、ええ。少なくとも、ウチの村にはいないから」


「そ、そう……。今の王様が、新しく定めた職業よ。王国が認める魔法使いにのみ、魔法師として名乗れるらしくって、王国のために魔法を発展させる研究をするんですって」


「ふーん……。魔法師、ねえ」


私は視界に映る魔術師のことが、気になった。

何故か、ノックスを睨んでいたような気がしたから。

けれども問い詰める前に、その魔法師は姿を消していた。


「どうしたの、アウローラ」


「……何でもない。さて、ノックスたちを回収しましょうか」


私はその違和感に蓋をして、ノックスたちの方へと向かった。


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