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暁に立つ吸血姫  作者: 澪亜
第一章 過去編
12/54

吸血姫の祝い

……それから数日後、ヴラドの就職祝いパーティーが開かれた。

パーティー会場は、ノックスの家の庭。

丁度天気も快晴で、絶好のパーティー日和だった。


庭に運び込まれたテーブルには、沢山のごちそうと飲み物が並んでいる。

花壇には、美しい花々。

遠くには、街のシンボルである桜のような花が咲き誇っていた。

そしてヴラドを祝うために集まった、沢山の人。

その中には当然、私の父と母もいた。


「それじゃ、ヴラドの警備隊就職を祝って、乾杯」


ゲオルグさんが音頭を取り、パーティーが始まった。


「ヴラド義兄さん、おめでとう。これ、ノックスと私から」


ノックスと開発した道具を、ヴラドに渡す。


「ありがとう! ノックス、アウローラ」


ヴラドは、ほんわかと優しげな笑みを浮かべつつ受け取った。

毎度のことながら、癒されるなあ……同じ兄弟の笑みなのに、なんでこんなにも違うんだろう。

ヴラドとノックスの顔を交互に見つつ、思わず内心苦笑した。


「兄さん、開けてみてくれ」


「うん」


ヴラドは、ノックスのリクエスト通りさっさと包みを開ける。


「ええっと……これは何かな?」


そしてその中身を物珍しげに上から見たり下から見たりしながら、問いかけてきた。


「それは、アイロンっていうの。服のシワを伸ばしてくれるものよ」


「へえー……アイロン」


「ここに魔力を通すと……下の鉄板部分が温かくなるだろう? で、平らなところに服を置いて上からこれを当てれば、シワがなくなるっていう代物だよ」


ノックスの説明に、ヴラドは感心したように魔力を通したり、通すことを止めたりしていた。


「制服は、警備隊の誇り……なんでしょう? だからノックスと話し合ってね、コレに決めたの」


「ありがとう。大切に使わせて貰うよ」


ヴラドはそう言って、嬉しそうに笑っていた。

私たちもそんな彼の笑顔に、つい笑みが溢れる。


「おーい、ヴラド! ちょっとこっちに来てくれ」


そのタイミングでゲオルグさんが、ヴラドを呼んだ。


「あっと……ごめん。呼ばれてる」


「俺たちのことは、気にしないでくれ」


「主役は大変ね。また後で、ゆっくりと話しましょう」


「うん。これ、本当にありがとう」


ヴラドは大事そうにアイロンを抱えながら、走って行った。

ヴラドが去ると、私たちの周りはポッカリと空く。

家族以外は皆、やっぱり真祖には近づけないようだ。

おかげで庭の中は結構人がいる筈なのに、ここだけ別空間みたい。


だからこそ、よりヴラドのことが眩しく感じる。

これだけの人が、ヴラドのために集まってくれたのだから。


私たちは大人しく、食事に手をつけ始めた。

今日は準備や何やらで、殆ど食事が取れていない。

それもあって、格別に美味しいと感じた。


「パーティーは、成功ね」


周りを見回しつつ、呟く。

誰も彼もが笑顔で、ヴラドへの祝いの言葉を口にしていた。

その光景が、誇らしくて嬉しい。


「そうだな。沢山の人が、ヴラドを祝ってくれて良かったよ」


ノックスもまた、優しい顔でパーティーを見回していた。


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