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暁に立つ吸血姫  作者: 澪亜
第一章 過去編
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吸血姫は、文句を言う

4/4

「……ノックス。貴方、ずるいわ」


里に帰った後、ぼそり呟く。

ノックスは、笑みを溢した。


「俺としては、二人の誘いに乗ろうが乗らまいがどちらでも良かったんだけど」


「嘘つき。……貴方、二人のこと気に入ってたでしょ? じゃなきゃ、即断ってたもの」


「ハハ……そうだな。二人のことは、気に入ってたよ。だけど、な」


そっと、ノックスが私を引き寄せる。


「俺にとっては、アウローラが一番。だから、アウローラがどうしても嫌だったら、断るつもりだった」


彼は、息を吐くように甘い言葉を私に与える。

いい加減慣れろと自分で自分を叱咤するけど……やっぱり、無理。

自然と熱が顔に集まり、頬が緩む。

それを悟られないよう、殊更聞こえるよう息を吐いた。


「……まったく。その言葉、信じてあげる」


ノックスの肩に手を添えつつ、首筋に唇を付ける。

そしてそのまま、牙を立てた。


瞬間、濃厚な血の味が、口の中いっぱいに広がる。


血とは命の滴。

それ故に、吸血する相手として求めて止まないのは……魂が共鳴する相手。つまり、自分にとっての最愛。

だからこそ、彼の血を口にして、自然と体が歓喜に震える。 


私が唇を離すと、ノックスは体を横たえた。


「……飲み過ぎた?」


「全然。……美味しかったか?」


「ええ。串焼きよりも、ね」


「ハハ……それは良かった」


倒れ込んだ彼に抱き付くように、私もまた身体を横たえる。


「……ねえ。ノックスは、二人のどこが気に入ったの?」


「ひたむきなところ」


「ああ……二人とも、自分の夢に向かって真っ直ぐだったわね」


「何かに夢中になれるということは、尊いと思ってる」


「そうね。……でも、私には理解できそうにないわ」


「……アウローラ?」


「前世では、やりたいことが沢山あったわ。でも今は、そんな熱量が全く湧いてこないの。長い人生、これから先、何でもやれる。でも、時間が無限にあると思うと……今じゃなくて良いか、後で考えれば良いかって、そんな風に思考を停止してしまうのよね」


「それは分かるな」


ノックスは、私の髪を一房手にとって口付ける。


「ああ、でも……一つだけ、将来の夢があるわ」


「アウローラが? 何?」


「貴方のお嫁さん」


彼は体を反転すると、私を組み敷く。


「……アウローラこそ、ずるいぞ」


そう言って、彼もまた私の首筋に牙を立てた。


「……美味しかった?」


「勿論。……串焼きよりも、な」


彼の感想に、自然と私は笑った。


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