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プロローグ
思い出は、決して優しくない。
胸の内に意識を向ければ、常に痛みを感じる。
悲しみは降り積もって、降り積もって。
やがて涙が枯れ果てた頃、それは黒くてドロドロとしたナニかとなって、こびりついた。
逃げ出したかった。
自分の感情から? 過去から?
分からないけど、投げ出したい。
苦しいと、叫びたかった。
誰かに助けてと、縋り付きたかった。
……でも、そうしたところで、救われない。報われない。
もう会えない人たちを想うのは、何度目だろうか。
過ぎ去った日々を妬み乞うのは、何度目だろうか。
そして私は……後、何度こんな想いをすれば良いのだろう。