表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘→死~ウソミギシ~  作者: 天かす入りおうどん
第1章 なんてことないデスゲーム
6/48

第6話 怪しいヤツ

第6話 怪しいヤツ

-伸一サイド


美羽を釣ることに成功した伸一は道中当たり障りのない会話を交わしながら遂に"koli"へと到着した。

koliは相変わらず人で溢れかえっておりこれがまだ昼前の朝とは思えないほどだった。


「美羽さんはどこ行きたいとかある〜?」


ここまでの道のりで何一つ情報を得られなかった伸一は多少の焦りを見せる。


「服とかーかしらね」

「じゃあここ行こ!」


服に無頓着な伸一は何処が良いのか分からず、取り敢えず目の前にあった服屋らしき店を指さした。

看板には"chojo"とネオンの文字が映し出されている。

そのまま伸一は、美羽の手を取り店内へと進んで行った。

またしても美羽の照れには気付かずに......。


「美羽さんは服とか結構興味ある人ですか?」

「まぁ多少は...」

「そうなんですね......」


ここまで伸一がここに到着するまで一貫してやってきた事がある。

それは、無言にならない事だ。

だが、それをしない為に無理矢理作っていた話題も遂には底をつき始めた。


「......」


ここで伸一は遂に踏み込んだ質問をする事を決意した。


(美羽もちょっとずつだけど心を開いてきている......。今しかない...!!)


伸一は一息のみ言葉を発した。


「美羽さんってお綺麗ですけど子供居たりするんですか...?」

「......」


急な角度の質問に美羽は少し動揺を顕にした。

それに気づいた伸一はここしか無いとさらに踏み込む。


「美羽さんってパッと見若そうだからいてもまだちっちゃいか〜」

「......ごめんなさい。私これから用事があって...」

「映画見ましょうよ〜!」


帰ってしまうという危機を察知し、伸一はすかさず次の提案をした。

また少し距離が空いてしまったが、もう引けず無理矢理映画館に連れていく伸一。

美羽はスイレン荘の時よりは少しだけ抵抗が強くなっていた。

それでも構わず美羽の手を握り、映画館に辿り着いた。


「こ...これ見ましょう!最近話題ですし」


指先には流行りの少年漫画の映画化作品のポスターがある。

伸一は考えさせる間も与えず、チケットを2枚購入し、その1枚を美羽に手渡した。


-上映中


隣に美羽がいる状況で伸一は無理矢理頭を働かせる。


(どうやったら嘘を引き出せる...?ていうかそもそも美羽の嘘ってどういう系だ?)


トーーン


(やっぱりさっき変な雰囲気になった子供系か?)


トーーントン


(それともお金とか...?まさか犯罪とか...!?)


トントンガシャゴシャ


(......ていうかこの音なんだよ)


謎の音に気が付き横を見ると美羽が貧乏揺すりをし、髪を掻きむしっていた。


(??????)


伸一の頭にはてなが浮かんだ瞬間、上映中にも関わらず美羽の口が動いた。


「ごめんなさい。私帰ります」


そう言って席を立ち上がり、シアターを出て行ってしまった。


(??????)


やはり頭のはてなが取れない伸一には何が起こったのか、起こっていたのかさっぱりだった。

しかし、この状況になってしまうと伸一がやる事は1つだった。

1度頭の中を軽く整理し、伸一も美羽に少し遅れて席を立った。


-神田サイド


「え......」


唐突に自分の肩に手が置かれ、驚きのあまりすぐさま振り返った。


(謝恩くんは身長的に届かないはず...)


そこには小太りの中年男が立っていた。


「な...なんですか!?」


神田は思わず距離を取った。

謝恩の手を握りいつでも走って逃げられるように。


「あ...あの......」


ぼそぼそと小言を言いながらじりじりと近づいてくる男。

それに対し、神田たちもじりじりと後ろに下がっていく。


「なんですか!?なんで近づいてくるんですか!?」


それでも男は止まらず、むしろ加速してくる。

それに耐えきれず遂に神田は謝恩を連れて振り返り、走り出した。

「ま...まって」


男も追いかけるように走り出す。

神田たちはスイレン荘の角を右に周りそのままその一本道を走った。

後ろを覗くとずっと男が追いかけて来ている。


神田は女性だったが、相手も中年なだけに差は縮まらない。

神田と謝恩は路地裏に入り無我夢中で走ったがすぐに行き止まりに着いてしまった。


「やばいよ真弥ちゃん!おっさんが...!」


だが、2人が振り返ると男の姿はなかった。


「よかった...。撒けたみたい......」


ほっとしたのも束の間、正面からあの男が現れた。


「!?!?」

「ハァハァ」


激しい息遣いでまたじりじりと近づいてくる。


「や...やめて...」


神田は咄嗟に持っていた鞄の中を漁りだした。


「ハァハァ」


謝恩も周りを見渡した。

ここは路地裏。

人は叫んでも来ない場所だった。

覚悟を決め、拳を強く握りしめた。


「ハァハァ」


男との距離が2メートルにもなった時男は口を開いた。


「ハァハァ。ごめん怪しい者じゃないんだ......」


信用ならないその言葉と共に男は引きつった笑顔を見せた。



--続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ