第5話 信念という炎
第5話→第43話 信念という炎
翌日、予定の時間より早くスイレン荘に着いた愛島には不安が少しあった。
本当に俺たちのような一刑事が首を突っ込んでいい問題なのかという事。
最初はただの身内の問題かと思っていた件が裏に大きなものを感じたからだ。
不安が俺の喉を締め付ける。
大丈夫だろうか...
俺は自分の頬をパンと強めに叩いた。
なんのために俺は刑事になったんだよ!!
正義のためだろ!?だったらやる事は1つだろ...!
心の中で信念という炎が灯った。
「おーいごめんごめん遅くなった」
向かいから田中が小走りでやってきた。
茶色のロングコートと黒の帽子、いつもの田中先輩の仕事衣装だ。
なんか安心したな〜田中先輩も覚悟を持ってきてくれみたいだ。
そうして2人は猿見家に向かって歩み始めた。
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白い屋根に白い壁、普通の一軒家の並びにある『猿見』と書かれた表札。
遂に辿り着いた。田中先輩の元妻の美子さんに起こった事件について知る者の家。
ゲームとは何なのか、美子さんはどうなったのか、確実に知っている者の家。
まだ朝日が顔を出し初めて数時間。明け方の住宅街に緊張が走る。
「準備は良いか?何かあれば...」
田中は胸の辺りにある内ポケットの膨らみを叩いた。
分かってる。この先何があっても...俺は受け入れ立ち向かっていく。
俺は田中のその問いに頷いた。
「行くぞ」
田中は少し震えている手でインターホンを押した。
ピンポーン
少しの音が静かな住宅街に響き、それがすぐ沈黙に変わる。
沈黙は実際は数秒だったのだが、俺にはとても長い時間に感じた。
「......はい。どうしました...」
...出た...!!!
インターホン越しに男の声が耳に飛び込んできた。
朝だからなのか...少しトーンが低い気がした。
「あの〜少しお聞きしたい事があるのですが...」
田中が慎重に話を展開していく。
「...少し出てきていただくことって可能ですか?」
「...何でですか?」
「......」
田中は答えに迷った。確かに出ていく理由がない。たとえ美子の事を口に出したとして逆に出てこなくなるのではという不安もある。
少し答えに迷った後結局1つの答えを導き出した。
もう田中はどんなになってもいいと吹っ切れていた。
「......私たち刑事の田中と愛島と申します。この辺りで起きた事件について質問があって本当に少しでいいんで出てきていただければ...!」
これは最適解に見えた。もし断っても逆に怪しくなってしまうため猿見としても出てこざる負えないだろう。
ナイスです!田中先輩!!
「...わかりました...ちょっと待ってて下さい」
家の中から階段を降りる音が聞こえる。
その数秒後玄関扉が開き、男が1人、目の前に出てきた。
「え...」
愛島は反射で驚きの声をあげてしまった。
......
愛島は個人的に少し興味がある事がある。
謎の男、猿見はどんな顔をしているのか。
仕事柄、犯罪者の顔をよく見てきた。
犯罪者の顔にはそいつの人生が浮き出る。
猿見もたいそう悪い顔をしているんだろうなと少し前までは思っていた。
だが、出てきた男は優しそうな顔で犯罪とは無縁そうな外見だった。
......
だがしかし愛島はそんな事で驚き声をあげたのでは無い。
出てきた男...猿見が
"見知った顔"
だったからだ。
よく思い出したらそうだ。この家も前に1度、来た事があった。
この男は...こいつは......!
愛島は感情が爆発し、伸一に駆け寄り胸ぐらを掴んだ。
「お...俺の婚約者の未来...指川未来はどこにいるんだ...!!」
愛島の首から指輪のネックレスが光り輝いた。
愛島のその問いに伸一は寂しそうな笑顔を浮かべて答えた。
「ゆびーは......指川ちゃんは...
死にました...」
心の中の、信念の炎が消えた瞬間だった。
--続く




