第2話 密告
第2話 密告
「これからどうします?」
結託した2人は、参加者が続々と移動し始める中、未だ体育館で立ち止まっていた。
「うーん」
伸一は答えを探っていると、あることを思い出した。
「神田さん!俺最初スマホ見た時見えたんですよ。"マニュアル"って名前のアプリがあるの」
「てことはそれを見たら何をしたらいいかわかるってことですか。」
伸一は頷く。
「じゃあ開いてみましょう!」
「はい......」
謎の緊張感の中、伸一はスマホの電源を入れ、真ん中辺りにある"マニュアル"を開いた。
「うわっ!なんだこれ!?」
開かれた中には、膨大な量の文字が書かれていた。
そこで伸一はとある事を思いつく。
ゴクリと息を飲む。
渾身のキメ顔で伸一はこういった。
「あの、俺の家来ません?」
-伸一宅
「ささ、上がってどうぞ」
「お邪魔します」
2人はただ伸一の家に来ただけではない。
もちろん......
一旦落ち着くためだ。
-20分前
「え?なんで......」
急な提案に神田は驚いていた。
「あ、いや変な意味じゃなくて。ここは色々危険すぎる」
辺りは、屈強の男や狡猾そうな女など......見れば見るほど恐怖を増長させる。
「なんで、一旦落ち着いて作戦会議しましょう!ちょうど20分くらいで行けるし、マニュアルとかも見たいし」
神田はその黒色のの大きな目で伸一をじっと見つめる。
「ほんとです!ほんとです!!」
神田はニコッと微笑みこう言った。
「もちろんです!一緒に頑張りましょう!!」
-現在
2人は駅から少し離れた一軒家へ入っていった。
伸一は神田が玄関からあがったのを確認して、鍵を閉めた。
2人玄関からすぐ前の階段を登り、二階にあるリビングへ向かった。
外はまだ明るく、カーテンを開けると電気は要らないほどだった。
「このソファ使ってください」
そう言って伸一はねずみ色のソファを指差し、自分はその前の床に座った。
「ありがとうございます」
フゥ と一息つき、2人は会議を始めた。
「名前まだ言ってなかったですね。俺、猿見伸一って言います!25歳っす!適当に呼んでください!」
「ハイ!えと、私は神田真弥です。私も25です。お願いします」
2人は軽く会釈をした。
「まずマニュアルを見ましょう。えーと」
伸一はマニュアルを開きしばらくじっと見た。
「うーん。見た感じ重要そうなのはこれとかですかね?」
伸一は画面を神田に見せる。
そこには、
☆最重要ルール
○1週間に3回はこのゲームで密告されたら死ぬ嘘に関する嘘を付かなくてはならない。
(尚、それが嘘だとバレたらペナルティが貸される)
と書かれている。
「これがこのゲームで1番やばいルールじゃないですか?」
神田は頷く。
「あ、それでこの個人情報アプリの下にある"カウンターアプリ"で見るんじゃないですか?」
神田の言葉を聞き、伸一は1度マニュアルを閉じ"カウンター"を開いた。
すると、
0/3
残り6日
と記されていた。
どうやら嘘をつくとカウントが進んでいくようだ。
今は0になっている。
そして今日は火曜日なのでリセットまで残り6日ということらしい。
「ペナルティって何なんですかね」
「さすがに死ぬとかは無いんじゃないんですか?それだったら死ぬって書くと思うし」
「そうですよねって
え?」
バッ
伸一は急な神田の声に驚き神田の方を向くと神田は青ざめて画面を見ていた。
「これ......時間無制限って」
画面を指さした神田の指先には、
主なルール
○~~~~~~~~
○時間無制限
と書かれていた。
「これってやっぱり残り1人までならないと終わらないってことだ。あ、あぁ」
神田と伸一はゴクリと生唾を飲み込んだ。
その時だった。
ピンポンパンポン
「わぁ!?」
「きゃぁ!?」
急な音と、バイブレーションに2人は思わず声を漏らした。
「え?なんだ?」
2人は画面を覗き込む。
画面には、
仙山紅
が密告されました。
嘘→援交
密告者 蒼井翔太
残り99人
「え」
言葉が出ない。
頭の中で色々な事が駆け巡る。
そして2人の頭には同じ言葉が浮かんだ。
-始まったんだ。
それを意識してか、神田がガタガタと震え出した。
顔はとても引きつっている。
伸一はその時にはまだ、神田を抱きしめることはできなかった。
「マ、マニュアルは合間に見ていくとして、一旦外の空気吸いません?」
「そうですね.....」
2人はこの重苦しい空気の中外に出た。
玄関の鍵を閉め、前を2人が向いたその時、子供が泣いている声がした。
神田は何か思うようにしてこう言った。
「猿見さん!ごめんなさい。私子供大好きでほっとけなくて...見に行っても大丈夫ですか?」
「全然大丈夫ですよ!一旦リフレッシュの為に出たんで」
2人は神田を先頭に泣き声のする方へ向かった。
家を出て2つ目の角を右に曲がると、1人の小学校4年生くらいの少年が手で顔を覆い地べたで泣きじゃくっていた。
神田はすぐ駆け寄り少年の肩を摩った。
「大丈夫?お母さんはどこ行ったの?」
少年は屈んだ神田の胸に飛び込み話し始めた。
「僕、中国人。9歳。お母さん居ない!家ない」
「神田さん!この子警察に届けた方が......」
「そうですね......ぼく?ちょっと落ち着いたら警察行こ!」
その言葉を聞き、少年の泣き声はさらに大きくなった。
「嫌だー!嫌だー!警察行かない!お姉ちゃんとこ行く!」
神田と伸一は顔を見合せ、仕方なく一旦少年を連れて家に戻ることにした。
-伸一宅
「僕ー名前なんて言うの?」
家に着くともう涙は止まって少年に話を聞くことになった。
「僕、凛謝恩!家族で日本来たけど......」
また涙が浮かび始めた。
「あー!ごめんごめん」
伸一は子供があまり好きではなかった。ただ、神田に嫌われたくなくてここまで事が進んだが、正直警察に届けてすぐ出て行って欲しかった。
神田が真剣にどうするか考えていると、謝恩が立ち上がり2人に向かってこう言った。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん何か悩み事あるでしょ」
2人はドキッとした。
謝恩が唐突に話しかけてきたのもあったかもしれないが1番は、ゲームの事を勘づかれたかと考えたからであった。
そして、またマニュアルの内容を思い出す。
☆最重要ルール
○このゲームについては参加者以外に話す事を禁止する。(尚、違反者にはペナルティが貸される)
○~~~~~~
「僕、分かるよ。それでね、2人のお手伝いしたいんだ!」
伸一は神田に任せるよ。と言った視線を送る。
神田は少し考え前を向いた。
「家族が見つかるまでだよ!」
謝恩は、2人に出会って初めて喜びを見せた。
「うん!」
謝恩の笑顔に伸一も釣られて笑顔になる。
が、心の中では苦笑いすらもなかった。
--続く