第10話 その男
第10話→第19話 その男
『○月✕日
皆さんはじめまして!
いつもはこんな日記書かないけど、今日は特別な日なので書くぞ!』
男はそこまで書いた所で1度日記を閉じた。
時刻は早朝。
外は静かで音ひとつ無い。
それはそうだ。
男は高層マンションの最上階に住んでいた。
男は眼鏡を掛け鞄を手に持ちネクタイをきつく締めた。
男はマンションを出て会社へと向かう。
信号を渡り、人とすれ違い、歩いて会社へ到着した。
そのまま会社のゲートをくぐりエレベーターに乗る。
目的地はもちろん最上階である。
「○○階です」
男はエレベーターから降り、目の前にある部屋に入っていった。
入口には、"幹部室"と、磨かれたプレートがある。
部屋に入ると、その中には大きい椅子がひとつにそれよりも大きいデスクが置いてある。
男はその椅子にドカッと座り足を組んだ。
「さっ!今日も一日頑張りますか!」
男の名前は宮里巧...とある大手詐欺グループの幹部である。
宮里はまた日記を開いた。
『いつも通り会社に出社!今日はご褒美があるからいつも以上に頑張っちゃうぞ!』
その後、宮里はカタカタとパソコンを打ち始めた。
画面には顧客との連絡や、新しい業務の提案書が沢山ある。
宮里は笑顔を浮かべた。
それは、仕事が上手く行っているからなのかご褒美があるからなのかは分からない。
-15時
宮里は一旦パソコンを閉じ、部屋を出た。
会社のゲートをくぐり、とある場所に向かった。
-美容院
宮里はさらに容姿を整えるため、美容院にやってきた。
「今日はどのように?」
理容師が尋ねてくると、いつもはしないような注文をした。
理容師は了承し、宮里は布を被せられた。
その状態のまま、また日記を開いた。
『今日は2倍いつもより豪華に容姿整える!やっぱり大好きな人と会うにはもっともっと相応しい男にならないとだから』
~~~
作業が終わり、会計を払う。
値段は1万円をゆうに越していた。
-18時
宮里はとある場所に来ていた。
入口には"西倉庫"と、廃れた看板がある。
着いた途端また日記を開く。
『ついにこの時が来てしまった(つ﹏⊂)これまで仕事頑張ったご褒美!それもこれもこんなゲームに参加させてくれた神様のおかげ!感謝だね!』
日記を閉じた宮里だったが、それまで日記を書くことで抑えていた感情が言葉として溢れ出した。
両手を広げ、大声で叫ぶ。
「ゆびー待ってるよ♡今日まで我慢したんだから今日はめちゃめちゃにしてやる♡あのゆびーとあんなことやこんな事...っ」
もう宮里には緩みきった頬を止めることは出来なかった。
時刻は19時。
約束の時間まで残り1時間。
その時間は長いようですぐ訪れた。
--続く




