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第080話 開幕!竜の試練!!


「ぎゃー! 寒い寒い寒い!! ふざけんなコラー!!」


「どうどう、ラウナベル。今保護の魔法をかけるから」



 アルバ山は中腹を超えると、土地に掛けられた魔法の力で一気に気温が低下し、極寒の地となる。

 この気候は一年中変わることなく、ゆえにアルバ山の山頂付近は常に白く染まっている。


 そんな中をボクたちは今、跳んでいる。



「ふぅー。ほんっと! こっちが正規ルートとか、頭おかしんじゃないの!?」


「それだけの苦難を超えてこそ、正しく竜の前に立つことができる。でしょ?」


「そりゃそうだけどさぁー」



 胸ポケットから顔を出して文句を言ってる相棒を宥めつつ、心の中では同意する。



(財宝教の司祭様たちが作ってくれた『勇者の服』が、どれだけ防暑防寒効果があるって言っても、ここの自然由来じゃない寒さ相手じゃあんまり意味ないんだよね)



 それに、手袋している手はまだしも『風精霊のブーツ』の防寒がちょっと甘い。

 おかげでジャンプする度に足先が冷える感覚があって、何度も身震いしてしまってる。



「まだ暑い方がマシなんだから! 早くてっぺんの火口へ行くわよ!」


「はいはい。急ぐよ!」



 凍える足に力を込めて、雪の大地を蹴り上げる。



「あと少し……!」



 あの人はもう、至竜の元へと辿り着いているだろうか。

 どこまでも楽しそうに冒険やアイテムについて語っていたあの人は、多分悪い人じゃない。



(……でも、良い人でもない)



 あの人はきっと、自分に正直な人だ。



 モノワルドに沢山存在するアイテムたちは、扱いを間違えると世界に混乱をもたらす。


 ただそこにあり、ただ眠っているだけならそれでいい。


 でも、それが誰かの手にあって悪用される可能性があるならば。



(そんなことは、ボクがさせない!)



 世のため人のため、みんなのために頑張るのが勇者の務め。

 財宝神様がもたらした素敵なアイテムたちが、邪悪なことに利用されるその前に。



「……止めなきゃ! あの人を!」



 ボクは、ボクに与えられた使命を果たす!




      ※      ※      ※




「……フスゥ~~」


「………」



 圧がね、すごいのよ。

 サイズ差があるし、見下ろされている構図もヤバいし、何より存在強度みたいなのがもう圧倒的。



(蛇に睨まれた蛙……いや、Tレックスに観察されるアラン博士だなこりゃ)



 残念ながら誘導灯はございません。



「………」



 じっと見つめられるだけで、俺のハートドキドキ。ふわふわタイム。

 ちょっと相手の首が伸びて、大きなお口を開いただけで、俺は逃れようなくパックンチョである。



「……あのー」



 それでも、俺は勇気を振り絞って口を開く。



「……竜の試練って、ナンデスカ?」


「………」



 沈黙。


 ただジーっと視線を向けられるだけの時間が、しばらく続く。



(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! 視線だけで心臓止められる!!)



 心臓の鼓動が普段の何倍もの速さで全身に血を巡らせているのがわかる。

 今なら最強最高のスタートダッシュで全速力出せる自信があります。



(………竜の試練とは)


「ひょぇっ」



 再び聞こえてきた声は、その圧とは別に、どこか深い慈愛に満ちていて。


 そのおかげでどうにかこうにか、俺は耳を傾けることに成功する。



(竜の試練とは、『ドラゴンオーブ』をヒトが手にしたときに始まる、世界の変革だ)


「世界の、変革?」


(然り。即ちそれは、我ら至竜の解放である)



 ……つまり、どういうことだってばよ!?



(『ドラゴンオーブ』はすべて集めることで世界を改変するほどの力を持つアイテムとなる。ゆえに、その守護者たる我らは、それらをやすやすと人に与えることはない。最初のひとつを除いては)



 至竜アルバーの瞳が、俺の両手に抱えられている宝玉を見た。



(最初のひとつがヒトの手に渡った時、そこから『ドラゴンオーブ』が一か所に集結するその時まで、我らは自由を得る。深き眠りから目覚め、今世を謳歌せんと活動を開始するのだ)


「……つまり?」


(我を含む六竜が、これから世界中で大活躍するのである)


「……Oh」



 封印は解けられた。

 超ド級FOEが世界を闊歩する時代の到来である。



「……具体的に、何をなさるおつもりでしょうか?」


(他の竜は知らんが、我は優しき竜である。ゆえに、この場を動くことはない)


「ホッ」


(だがそれはそれとして、我の寝床を荒らした阿呆と、旧友のために開いた門を悪用する不心得者共に、多少のお灸は据えてやる次第である)



 ブフーーーーッと、竜の熱い鼻息が、俺の体を吹き抜けた。



(とりあえず、侵入者には死を、不心得者共には多少の脅かしをしてやるかな?)


「はい」



 はいではない。


 ヤバい。


 死ぬ。



(うむ、我が殺す。殺されたくなければ力を示せ。知恵を、剛力を、アイテムを尽くすがよい)


「しょ、勝利条件は?」


(我の一部を破壊せしめたならば、この場は見逃してやろう)


「《イクイップ》」



 迷うことなく『ギガントアクス』を装備して、俺は至竜アルバーの鼻先にそれを振り下ろした。



 ゴシャァァァァ!!!



 重い一撃が入る手応えに、けれど俺の心臓はまったくもって安心感を得ることはない。



善哉よきかな。ヒューマよ。それでこそ強欲なり)



 無傷である。

 俺の心臓はまったくもって正しかった。



「《フレイムカノン》!!!」



 次の瞬間横合いから叩き込まれる、不意打ちの大火力魔法。

 アルバーの横っ面に見事にヒットしたそれも、煙を上げたのは弾けた火球の方で。



(善哉。挑戦者よ。それでこそ試練の甲斐がある)



 続く飛び込みからの全力パンチは――。



「グルォォォァァァァァ!!!」


「なっ、きゃうんっ!?」



 咆哮が放つ衝撃で、その鱗に届く前に迎撃された。



「バカーーーー!! 早く逃げるわよーーーーーー!!」


「あるじさまーー!!」


「メリー! ナナ!!」



 声を張り上げた二人に応え、装備を変えながら俺は走り出す。



(さぁ、力を示せ! 挑戦者よ!!)



 頭に響く歓喜の声は、咆哮と共に竜の巣中に響き渡った。




      ※      ※      ※




 山頂の火口に到着したとき、ボクたちはその声を聞いた。


 歓喜に満ちた至竜の咆哮。

 それが何を指すのかは、聖堂で司祭様から何度も教えられている。



「間に合わなかった……!」



 竜の試練が始まってしまった。

 始まってしまったからには、終わるまで彼らは自由に振る舞う。



「あんのアンポンタン! やってくれたわね!!」


「そう、だね」



 思っていたより、ボクは驚いていなかった。

 ほとんど触れ合った時間はないのに、あの人ならやりそうだな、なんて。

 むしろ納得してしまっている。



「どうしよっか、ラウナベル」


「選択肢はふたつね。即撤退して司祭に報告するか、突撃してもうちょっと掘り下げるか」


「なら、取るべき行動はひとつだ」


「そうね、テトラ。勇者ならここは……」



 火口に向かて、跳ぶ。



「「突撃あるのみ!」」



 マグマ溜まりを囲う絶壁のその一角に、ぽっかり空いた巨大な横穴を見つける。



「ラウナベル!」


「任せなさい! 《レビテ》からの……《ブリーズ》!!」



 浮遊し、巻き起こった風に乗って真っ直ぐに横穴へ。

 滑り込んだ先にあるのは、奥へと続く螺旋の道。


 至竜の寝床へと続く、ドラゴンロード。



「行っくぞーーーーーー!!」


「GOGO!! テトラーーーー!!」



 今まさに始まった、歴史的大事件のそのど真ん中に向かって。


 ボクたちは全速力で飛び込んでいくのだった。



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