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第079話 ドラゴンオーブ!


 至竜アルバーの寝床になってる宝の山を、『もぐらクロー』で掘り進めて数分。



「おおー、これはこれは……うわ、やっべ。すっご」



 出るわ出るわ。お宝の数々。



(なんだこの腕輪、明らかにやばそうな効果ありそうだな。最低でもSRか。んでこっちは……スコップ? 黄金で出来てるがなんだこれ、鑑定お願いしまーすっと)



 目ぼしい物から回収しようって感じて動いていたが、見る物見る物目ぼしい物にしか思えないラインナップに、『財宝図鑑』のタッチ回収機能をフル稼働だ。



(うおっ、これは見るからに禍々しい短剣! こっちは……ハンカチ? すっげぇ刺繍!)



 掘れば掘るほど色々出てきて……なんだよ、ここは天国か!?



(ああ~、たまらねぇぜ!!)



 何ならずっとここに居たい!

 レアアイテムと金銀財宝に包まれて毎日過ごすとか、最高すぎる!!


 おっと、涎が。ずるるっ!



(いやまぁ、貯め込むばかりってのももったいないけどな。やっぱアイテムは使ってなんぼだしね!)



 ついつい心がトリップしてしまいそうになるのを抑えつつ、俺は先へと掘り進む。

 目指すはちょうど宝の山のど真ん中辺り。



(レアアイテムハンターの俺の勘が言っている、そこに最高のお宝があると!)



 そうして掘って掘って掘りまくった、その果てに。



(……お?)



 どういうわけだかポッカリと空いた、謎の空間へと辿り着く。



「ここは?」



 半球状のフロアになってるそこへと降り立てば、中は思ったよりも広く、俺が立っても余裕で動き回れるほどだった。



「んで、あれな」



 そんな不思議空間の真ん中には、積み上げられた金で出来た台座がある。

 いかにもとてつもないお宝がありますとばかりに準備されたその場所には、確かにそのアピールに見合う物が置かれていた。



「……さすがに、鑑定能力がない俺でも余裕でわかるぞ。あれは、超レアアイテムだ」



 台座の上に置かれていたのは、宝玉。

 ボーリング玉くらいのサイズはあろう真珠の如き乳白色をしたそれは、美しく磨き上げられた物だけが放つ光沢を曝し、限りなく真球に近いその姿を誇らしげに見せつけていた。




      ※      ※      ※




「竜の寝床の下で大仰に保管されている、宝玉型の超レアアイテム……まぁ間違いないな」



 俺は目の前にある、世界の至宝と言って疑いのないそれの正体について、知っている。



「これがLRアイテム『ドラゴンオーブ』か」



 いつかナナの口から聞いて、見つけてみたいと思っていたお宝のひとつだ。

 なんでも複数個あるそれらを全部集めると、どんな願いでも叶うWRアイテムへと変化するらしい。


 ドラゴン〇ールかな?



「……少し離れた場所で見ているだけでも、オーラが違うな」



 これまで最大URまでのアイテムを手にしてきたが、それらとは明らかに一線を画する気配を感じる。

 LR……伝説(レジェンド)という冠位が示す存在感は、確かにそこにあった。




「……んでまぁ、どうするべきか、だが」



 目の前にこれ見よがしに置いてある超レアアイテム。

 当然手に取って自分の物にしたい。


 だが。



(まぁ間違いなく、なんらかのフラグなりが立つだろうな)



 罠が発動するかもしれないし、最悪この場所が崩壊する可能性もある。

 無造作に置いてあるのではなくここまで丁寧に設置されているのだから、何もないってことはないだろう。



「うーん……」



 ひとまず『もぐらクロー』を『財宝図鑑』に回収させて、腕を組み悩んでみる。

 どうしようかとああだこうだ考えを巡らせるが、実際のところ、これはただの儀式だ。



(答えはもう、決まってるよな)



 ただ、覚悟を決めるまでのほんの少しの間を取っているだけ。



(ん、ん、ん。よし!)



 時間にして1分にも満たない思考を終えて、俺は決意を固める。



「俺は世界のレアアイテムを手に入れる男。それが目の前の超レアアイテムを前にして、ビビッて逃げるなんてことは許されない」



 口に出すことでさらに自分を鼓舞してから、俺は一歩、また一歩とお宝へ近づいていく。


 目と鼻の先に宝玉が来るまで近づけば、その前で一度、両の手の平を組む。

 合掌とはちょっと違う形だが、そこに込めた気持ちは同じ。


 目を閉じ、最大の“敬意”をもって、目の前の超レアアイテムに礼を取る。



(さぁ、覚悟完了。俺は……伝説に触れる!)



 再び目を見開いた俺は、組んだ両手を開き、捧げ持つように宝玉に触れる。

 吸いつくような感触を味わいながらそっと宝玉を台座から持ち上げたその瞬間、もう3度目になる彼女の祝福を耳にした。



「おめでとうございます、千兆様。初めてのLRアイテムゲットでございますね」



 気づけば俺の魂は、『財宝図鑑』の中にある宝物庫へと移動していた。




      ※      ※      ※




 思ったよりも、俺は色々とゲットしていたらしい。



「財宝の山の上に座る気分はいかがでございますか、千兆様?」


「これが意外と悪くない。むしろサイコー」


「それは何よりでございます」



 俺を見上げる形になっても、いつものアルカイックスマイルを崩さないアデっさん。

 そんな彼女も今は両手を広げて、その動作でもって喜びを露わにしている。



「改めまして、LRアイテムゲットおめでとうございます。千兆様」


「ありがとう。ってことはやっぱりこれは……」


「はい。お察しの通り、そちらが至竜の秘宝『ドラゴンオーブ』にございます」



 胡坐をかいた俺に抱えられている宝玉を指し、アデっさんが頷く。



「そちら、正式名称を『光のドラゴンオーブ』と申しまして、その他に5つの同種のアイテムを集めることで、WRアイテムへと変化させることができる物となっております」


「調べた伝承に語られているのと同じか」


「はいでございます」


「つまり、これひとつ手に入れただけじゃ何の意味もないと」


「その通りでございます」


「………」



 ひとつ少ない分、ドラ〇ンボールよりは集めやすいな!



「……ふぁいとっ、でございます」



 すごいよアデっさん! 動きは完璧なのに無表情だから全然響かないね!


 あ、くそ。にへって笑いやがった。にへって!



「せめてこれひとつ手に入れただけでもなんかすごい効果とかないの?」


「そうでございますね。WRアイテムのパーツとなることに比べて取るに足らない効果ではございますが、強力な魔法の発動体となったり光に属する魔法の習得を補助したり、後は単純にこのアイテムを持っているという事実が社会的にとてつもない価値を持つと思われます」


「わお、取るに足らない効果すごい」



 むしろそれだけあって取るに足らない効果と断じられるほど、WRってヤバいのね。



「何しろ世界を改変するほどの力でございますので」


「世界を改変する力、ねぇ」



 ってことは俺の持ってる『ゴルドバの神帯』や『財宝図鑑』も……。



「無論でございます。世界を創造した神の意志が介在するアイテムでございますので、それらのアイテムは世界に強い影響を与える効果がございますよ」


「ほぇー」



 『財宝図鑑』は、わかる。だって図鑑を充実させるほどに強くなれるんだし。世界最強も夢じゃない。

 『ゴルドバの神帯』も……装備適性を2段階上げるのは確かにチートだが、なんか今の言われ方だとそれだけじゃない気がしてくるな。



「道具とは使いようでございます。そして熟練の先に新たな境地も見えてくるものでもございますので、これからも研鑽をお積みになられるのがよいかと思いますでございます」


「だな」



 適性によって最初からある程度の下駄を履かせて貰えるこの世界においても、使い続けることで得られることは沢山ある。

 そうすることでいずれは適性自体がランクアップすることもあるし、同じ適性でも優劣が生まれる。


 経験も、習熟も、決して無駄になるわけじゃない。



「やっぱりアイテムは……」


「装備して扱ってこそ、その本懐が遂げられるというものでございます」



 アイテムは、持ってるだけじゃ意味がない。

 装備してこそ、力を出せる。


 大事な大事な原点を、ここにきてまた胸に刻み付ける。


 LRアイテムを手に入れた俺は、間違いなくひとつの大きな節目を迎えていた。




      ※      ※      ※




 そして、それは唐突に始まる。



「……と、いうことで。千兆様に初心を思い出していただけました場面にて、大事なご報告がございます」


「はい」



 この場面でのこのフリ、嫌な予感しかしない。



「『ドラゴンオーブ』を無事に手に入れられましたこと、大変喜ばしく……」


「前置きはいいので、どうぞ本題へ」


「至竜アルバーさんから割り込み(キャッチ)でございます」


「へ?」



 その言葉の意味を理解するよりも早く、俺の意識は急速に宝物庫から引き剥がされていく。



「ちょ、まっ」


「正念場でございますので、死なないように全力を尽くしてくださいませでございますー」



 こうなるのは毎度のこととはいえ、どうしたって慣れない。

 それに今回は、妙に後ろから引っ張られる力が強い。


 そしてそれらの違和感を考える間も与えられず、俺は次の状況へと放り込まれる。


 即ち。



(それを手にしたな? 只人種(ヒューマ)の男よ)


「ひゅっ……」



 意識を取り戻した俺の頭の中に、突如としてガツンと響く、老練した男の声のようなもの。



(実に300年ぶりか。これより我らは“竜の試練”を施行する)



 続く言葉に混乱する暇さえ与えられないまま、見えている世界が変化する。



「フゥーーーー…………!!!!」



 それは頭の上から聞こえてきた、吐息の音。

 どんな魔法か、宝の山が綺麗に吹き飛び、俺の居る空間までを剥き出しにして。



「……グルォォォォ!!!!」



 俺を見下ろしバッチリと目を合わせた至竜様が、それはそれは楽しげに、歯を見せて笑っていた。




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