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第078話 財宝の主!


 ドラゴンの宝物庫は、マジ物の規格外だった。



「……ヤバい」


「ヤバいわね」


「ヤバいでございますね」



 エレベーターを離れて十数分。

 いよいよ宝物庫の内側へと突入したところで、俺の頭はこの場所の資産価値を考えることをやめた。


 今なら5000兆円手に入るかもしれない。



「右も左も宝の山。この山の中に潜って探索したら、どんなレアアイテムが隠れているやら」



 入口の金山は氷山の一角だった。

 中に入れば入るほど、高い天井に届け届けと言わんばかりにかさを増す財宝の山たち。


 そう“たち”である。



「サウザンド家復興できる分だけ貰うサウザンド家復興できる分だけ貰うサウザンド家復興できる分だけ貰う……」


「あるじさまとマイホームあるじさまと別荘あるじさま最高品質お世話セットあるじさまのおよつぎ三代に至るまでの資金……」



 圧倒的な物量を前に、メリーもナナもブツブツ何事か呟いて、正気を保とうとしている。

 かく言う俺も、『魅了耐性向上の指輪』を装備した上でなお、ちょっとでも気を抜けば近くの金山にダイブしてしまいそうになっているのを堪えっぱなしだ。



「いや、あんたも堪えきれてないから」


「なぬ?」



 指摘してきたメリーが指さす先は、俺の両手。

 そこにはモグラの手を模した造りの手袋が装備されていた。



「……ハッ!?」



 SRアイテム『もぐらクロー』。

 この装備があれば、文字通り、崩れやすい宝の山だろうが掘り進むことができるのだ。


 宝の山攻略を想定し、闇オークションを巡っては、色々なアイテムを買い集めたうちのひとつである。



(それを知らぬ間に付けてしまっていたとは、どうやら俺も正気じゃないらしい)



 自覚したら、一気に気持ち悪くなってきた。



(死ぬ。マジで死ぬ。状況が異常すぎて平静を保てない……)



 温泉で一度深くリラックスしてなかったら、間違いなく緊張で吐いてた。

 夢にまで見た宝の山なのに、生きた心地がまったくしなかった。




 極限状態にありながらも、俺たちは一歩、また一歩と奥へと進む。

 それは、どうしても確かめなければならない存在がいたからだ。


 そして俺たちは、ついにその姿を目の当たりにする。



「でっっっっ…………!」


「……っるじさま」


「あ、ぁぁ……」



 いくつかの宝の山を覆うように、そいつは寝そべっていた。


 金色の山の頂点で、白色の鱗を淡く輝かせ、ゆっくりと呼吸を繰り返していた。



(ドラゴンロード。確かにあれくらいないと、こいつは降りれないな)



 村に刻まれた記憶。

 伝承が確かであることを証明する、その巨体。



「………フゥー」



 ため息のように零れた鼻息が、低く唸るような音を響かせ俺の腹を圧迫した。



「これが、この宝物庫の主……!」



 メリーが買ったパンフにしっかりと、その名は記されている。



(至竜……アルバー!!)



 生ける伝説が、そこにいた。




      ※      ※      ※




 はい、全員集合~!


 モノワルドこそこそ話、開始!



「おいおいおい死ぬわ俺たち」


「どうするのよ。普通に目立つところで平然と寝てるじゃない」


「すでにブレスの範囲内かもしれません。ここはいったん距離を取るべきかと」


「ナナの案、採用」



 はい、撤収~~!


 俺たちは引き返し、背の高い宝の山の陰に隠れた。



「で、竜がいることはわかったわけだけど」


「万が一にも戦うとかいう選択肢はないぞ。あれは……」


「当たり前でしょ。全身SR装備で固めた奴らが束になって掛かっても、あれの前じゃおもちゃの兵隊よ」


「URなら?」


「雑兵」



 要求装備レアリティ:LR



「とりあえず、コソコソ作戦で行くしかないな」



 隠密効果を得られるクロークは当然のように装備済みだ。

 さっき顔を出した時点でバレてない様子だったし、気をつければまだ近づけるはず。



(アレ)に近づく気なの?」


「本当のレアアイテムってのは、間違いなくあいつの近くにあるはずだからな」



 純粋に金が必要なメリーであれば、エレベーター近くの金山を崩せば十分だろう。


 だがしかし、俺が求めているのはレアアイテム。

 それもドラゴンの巣ともなれば狙いは当然、LR以上の超レアアイテムに決まっている。



「俺がここまで宝の山にダイブしなかったのは、そのためだからな」



 狙いを絞って気力体力すべてを一点集中する。

 最高の成果をスナイプするために必要だったのだ。



「主様……」


「大丈夫だ。俺は負けない」


「足が震えていらっしゃいます」


「はい」



 そりゃ足くらい震えるさ!

 あれ見てビビらない奴なんて嘘だもの!




「……だが、それでも。俺はやらなきゃいけないんだ」



 正直、かなりの工程をすっ飛ばしてここに来ているっていう自覚はある。

 ラストダンジョンのアイテムを序盤に手に入れようとする所業だってのは、重々承知だ。


 だがそれって。



「めちゃくちゃロマンシングなんだよ」



 これこそが、レアアイテムコンプを求めてやまない、俺のサガだ!



「……主様のお覚悟は、揺るがないのでございますね」


「ナナはメリーと一緒に行動してくれ。いざ逃げるって時にメリーは鈍足だからな」


「うっ」



 伊達に二重強化可能な魔法使いな俺と、ライカンなナナではないのだ。

 そしてナナもメリーも頼れる仲間だからこそ、失いたくはない。



「でしたら主様、これをお受け取りください」


「なにんむっ!?」



 景気づけか、おまじないか。

 俺の唇は昨日に引き続き、ナナに奪われた。



「……ご武運を」


「ああ」



 軽く触れあうだけの短いキスのあと、ナナに祈りを捧げられる。



「……派手に魔法を使うのはギリギリまで我慢しなさいね。ドラゴンには発動する魔法を感知する器官があるから」


「OK、ありがとうメリー」



 メリーからもアドバイスを受けて、いよいよそのときが来る。



「……行くぞ」


「どうかご無事で」


「ちゃんと戻ってきなさいよ?」



 激励され、見送られ。

 俺は一人、宝の山の陰から再び至竜アルバーの元へと歩き出す。



「……スゥー、フスー」



 ただ心地良さそうに眠っているドラゴンが、どうしてこれだけの圧を持っているのか。



(それこそが、崇められている竜の御力ってわけかねぇ?)



 ゆっくり、ゆっくり。

 俺は少しずつ、相手を刺激しないように気を張って、ジリジリと距離を詰めていくのだった。




      ※      ※      ※




 一体どれだけの時間を費やして、ここまで来たのか。



「はぁ……、はぁ……」



 ついに俺は、至竜が眠る宝の山の麓までやって来た。



「……っ!」



 振り返れば、思った以上に小さくなっている、ナナとメリーの姿を確認できる。



(ここが、ガチの竜のお膝元、か)



 改めて、よく目を凝らして観察すれば、色々と気づくことがあった。



(周りと比べてこの山の潰れ具合、間違いなく、こいつはここを何度も寝床として使ってるな)



 ここがお気に入りの場所だというならば、間違いなくそうである理由があるはず。


 そしてその理由とは、俺の考えが正しければ、答えはひとつしかない。



(お気に入りのアイテムが、ここにある!)



 最低でもLR。WRやGRのアイテムも、ここにはあるかもしれない!



「………」



 動きを止めて、少しのあいだ耳をそばだてる。

 ドラゴンの宝物庫は、静寂に包まれていると言い難いほどには、音に満ちていた。



(中を空気が巡る空洞音。竜自身の寝息に、細々とした宝が崩れたりする小さな音……)



 これだけの音がある中なら、宝の山に潜ってもバレない可能性は十分にある。



「……いくぞ」



 『もぐらクロー』を構え、俺は竜が寝そべる宝の山に、穴掘りの要領で突入する。

 さすがのSRアイテムの装備効果で、すぐに崩れる黄金の山の中であっても不思議と掘り進めることができた。


 ただし、退路はない。

 俺の通ったそのあとは、効果が及ばなくなったところから、自然と崩れ落ちるのだ。




(まず目指すのは、山のど真ん中。そこになければそれこそ竜の腹の傍、だ)



 レアアイテムの場所にあたりをつけて、俺は行く。


 最高にヤバいことをしているって、俺の心臓はもうずっとドキドキしっぱなしなのに。



(あぁ~、命の音がするんだよなぁ~!)



 今の俺は、最高にハイって奴になっていた。



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