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第021話 覚醒チュートリアル!



「……むむむーん」



 考えがまとまらず、思考があっちへこっちへ飛び回る。

 話し合いに持っていくための手順、殺されないための作戦、切り口を探る。


 そうしてるうちに思い出したのは、家出娘の帰還の場面。



(あの人、カレーンのお世話係やってたっぽいよな)



 あのふわっとした女の子のお世話係が、実は他所から来たスパイでした、か。



「……はぁ」



 カレーン、泣いちゃうだろうな。気の毒に。



「そこは美幼女の泣き顔スチル回収のチャンスでは?」


「さっきもだったが俺の心読まないでくれると嬉しいぜアデっさん」


「アデっさん……いいあだ名でございますね」



 またにっこりとアルカイックスマイルを浮かべるアデっさんにため息を返しつつ、実際問題目の前の状況をどうするかで頭を悩ませ続ける。



「このまま戻ったら死ぬよな?」


「間違いなく首コキャ死亡エンドでございます」


「ですよねー」



 子供にも容赦しないノルドおば……お姉さん。

 誰の指示かは知らないが、その勤勉さが恨めしい。



「えぇ、じゃあどうするかなぁ」



 結局考えがまとまらなくて対策しようもなくて。

 俺はその場に腰を落として宝物庫の白い天井を見上げる。


 そんな俺の後ろ斜め45度くらいの位置に、アデっさんが立った。



「お困りでございますね」


「お困りでございますんだなこれが」


「大変にございますね」


「大変にございますんだなこれが」


「実は現状を打破しうる希望となる情報を、不肖このアデライード、持ち合わせております」


「待ってました!」



 正直期待してた!


 立ち上がり、振り返った俺の目に、アルカイック出来てないどや顔スマイルが映る。

 OK把握。ノリがいい方がこの人の素だ。



「それで、俺はどうしたらいいんだ?」


「では、お耳を拝借……こしょこしょこしょ」



 ほうほう、ふんふん、なるほど。


 ……って。



「……マジで!? そういう奴なの!?」


「はい。ですので、その力をもって、全力で抵抗なさるのが最善の策かと思います」


「うおおお、なるほどなぁ」



 受けた説明は確かにワンチャンスありそうな感じだった。

 ただ、実際にやったことはないぶっつけ本番というのもあって、ちょっとだけ不安が勝つ。


 ゆえに。



「ここ、外とは時間の流れが違うんだよな?」


「はい。千兆様がこの場を訪れているあいだ、外の世界と時空間が分かたれます」


「だったら――」



 伝えた俺の提案に、アデライードはポンっと拳で手を叩き。



「ぜひどうぞ。で、ございます」



 頷き、またあのアルカイックな、けれどちょっと悪戯っぽさのある笑顔で了承してくれた。




      ※      ※      ※



 俺の意識は、再びあの場所へと戻った。

 宝物庫の中でのやりとりは本当に一瞬のあいだの出来事だったみたいで、即座に事態は動き出す。



「クッ。目くらましだろうが私には関係、ないっ!!」



 『財宝図鑑』が放った光にも負けず、一旦は足を止めたノルドは再び飛びかかり、俺を目がけて迷わずに手を伸ばしてくる。



(これに捕まったらそのまま首コキャされて、俺の人生ゲームオーバーだ!)



 実際、さっきまでの俺だったら何の抵抗もできずにそうなっていたに違いない。



(だがしかし!!)



 今の俺はもう、さっきまでの俺じゃない!



「……《イクイップ》」


「!?」



 迫りくる脅威を前に俺は新たな装備を身に纏い、カーペットを蹴る。

 音もなく飛びあがった俺の体は大きく後ろに後退し、振るわれたノルドの手から逃げきった。



「……ただのガキではないな? 常人なら、今ので確実に捕らえたはずだった」



 突然動きの良くなった俺を警戒して、ノルドが睨みつけてくる。



「少年。その装備は、何だ?」



 そして俺の変化に気づくと、彼女はより一層険しい顔をして俺に問いかけた。



「これか? これは俺のとっておきの切り札だ」



 俺はマフラーのように首に巻きついたそれを掴んで、不敵に微笑んでみせる。



「だが、詳細については……黙秘する!!」



 言い終えると同時に、今度はこっちから接近する。

 およそ8才児が出せるスピードを大きく超えた踏み込みと、速度で。


 そして。



「はぁっ!」


「なっ!」



 音もなく跳び上がり、壁を踏みしめ再びジャンプ。わずかに空を切る音だけを残し、ノルドの頭上へと移動する。



「くらえっ!!」



 そのまま空中で横回転(アクセルターン)。大きく踵を振り上げて、ノルドの頭へ叩き込む!



「くっ!!」



 放った俺の踵落としは、ノルドがとっさに身を守るために持ち上げた彼女の腕に衝突し。



 ゴッ!!



「っつぅ!!」


「っしゃあ!」



 そのガードごと蹴り破り、大柄なノルドの体に尻もちをつかせる。


 彼女の手を離れた紙束が宙を舞い、あたり一面に飛び散った。



「ふっ……!」



 再び音もなく着地して、俺は即座に自分の有利な間合いへと位置取りする。



(これが、これが俺の力……!!)



 およそ前世の人間からはかけ離れた身体能力。

 それを発揮できたのは、新たに装備したアイテムの効果に他ならない。



(昼間はケチつけてごめんな、ゴルドバの爺さん!! アンタやっぱよく分かってるぜ!)



 そのアイテムのレアリティ……GR(ゴッドレア)


 そのアイテムの真の名は……『ゴルドバの神帯(しんたい)』!!


 そしてそのアイテムが持つ装備効果(真の力)は――!!



(――装備者の持つ装備適性を、すべて2段階上昇させる!)



 今の俺、装備適性オールA。

 パンツもシャツもパジャマも靴下も、全部が俺を爆発的に強くする! 


 え、そのラインナップじゃどこが強化されたか分からない?

 ならこれだけ知ってりゃ十分だ。



(今の俺は、首コキャしてくる推定女スパイなメイドさんよりも――強い!)



 奇襲を奇襲でやり返し、驚くノルドを見下ろして。



「さぁ、どうする?」 



 ちょっとだけ主役っぽく、映画みたいな決め台詞を吐いてみたりしたのであった。



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