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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者 Stranger’s!!(次回予告)

作者: 胡桃リリス

 一応、サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者の方にも出したのですが、第七章ラストとエピローグの間に挿入したので、こちらにも単品で、最後に追加要素を加えてあげました。ややこしくてすみません。

 三日前の新聞を読んでいると、アポラリスがお茶を出してくれた。


「ありがとう、ポラリス」

「どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください」


 慇懃に頭を下げると、盆を両手で抱えて私の斜め後ろに下がった彼女を見やりながら、カップを手に取り、香りをまずは楽しむ。

 うん、オレンジを彷彿とさせる、いい香り。

 温度も、味も、とてもいい。お茶のことなんて本当はよくわかっていないけれど、彼女が淹れてくれたお茶が最高においしいということだけは、よくわかっている。


「ところでお嬢様、一つよろしいでしょうか?」

「何よ、急にかしこまって。普通に話していいって言っているでしょ?」

「そういう訳にはいきません! お嬢様は私たちにとって特別な方なのですから!」


 いたずらをした子どもを叱る母親のように、人差し指を立てて力説する彼女に、面倒くさいなぁと思いながらも、同時に愛されているなぁと感じられて、苦笑が浮かんでしまった。


「はいはい、わかったわかった。それで、何?」

「はい、今日は随分と熱心に新聞を読んでいらっしゃったなぁ、と思いまして」

「んー、まぁね」


 たまたま目に留まった見出しを読んでいたら、気になる情報が出てきて、ついつい読みふけってしまっただけだ。


「私、変な顔してた?」

「いいえ。ただ、いつになく真剣な表情でしたので、どのような記事が気になったのか、気になりまして」

「えっ、そう? 別にそんなつもりはなかったのになぁ」


 別にそこまで真剣になるほどではなくて、ただ、ついに来たんだなぁと思ったくらい。


「お嬢様、楽しそうです」

「あー」


 いや、楽しいとは、あんまり思わなかったかな。

 どちらかというと。


『いやいや、面倒って思ったわよ』


 また苦笑いがこみあげてきて、思わずあっちの言葉でこぼしてしまった。

 アポラリスは、私の言ったことがわからずに首を傾げていたけれど。


「お嬢様、やっぱり楽しそうです」


 最後まで、私が楽しそうにしているだなんて、微笑んでいた。




 ところで、私が見ていた新聞の、一番大きな見出しには、こう書かれていた。


「旅の破壊神、ラベルの街に現れる! 今回の滞在目的は一体?」


 それは、時折世間を騒がせる、旅をしている破壊神の出現情報で、それ自体は別に珍しくもない。

 怖がるのは一部の人間で、私にはまったく縁もゆかりもない、無関係な話。

 しかも、ラベルと言えばエル・ブロッサム王国、つまり外国だ。対岸どころか国をいくつも挟んでいるから、まったく気にもならない。


 私が気になったのは、そこではなく、その一面の一番下にあった小さな記事だ。


「ラベル付近に全身鎧の超大型巨人現る! 新たなる魔王か?」


 大々的な文句だが、与えられている枠は作家のコラムよりも小さい。

 眉唾物の情報だろうと思われているか、それとも、国々やエルフの圧力が働いているのか。

 記事の中身も、巨人は現れたが、旅の破壊神によって撃退されたので問題なし、と書かれている。

 旅の破壊神が直接手を出したのであれば、中身がどうであれ、それなりに大スクープになるのに、この扱い。


 間違いなく、(エルフ)の力が働いている。別にどうでもいいけど。


「それはともかく、として」


 もう一度、新聞に目を通す。

 この世界では、高価で希少な写真機を用いた、白黒のぼやけた写真には、山に向かって聳え立つ、全身鎧姿の巨人の姿があった。

 そして、よくよく、その写真を見てみると、山頂付近に、ぼやけた点が見える。


「……これ、どう見ても日本人じゃない?」


 


           EEEEE




「や、やったわ……ついにっ、ついにできたわっ!」


 苦節、一週間!

 ようやく完成したわ、私の夢のマイホーム!


「これでようやく、のんびりとお昼寝できるー!」


 ダンジョンマスターなんぞやってられるかっ!

 私は毎日ご飯三食とお昼寝付きの暮らしを満喫しながら、のびのびと生きてやるんだから!


 だから絶対に来ないでね、勇者ココロとかいうこの世界の日本人っぽい人!!




           SSSSS




 三日三晩波に揺られ、ようやく降り立ったオルシャーガの港で、ボクは思い切り背伸びをする。


「ここまで助かりましたっ、ありがとうございます!」

「いえ、こちらこそ道中、助かりました。感謝いたします、シナノ殿」

「トリさんは相変わらず固いなぁ」

「そういう性分ですので」


 そういって、トリさんは笑った。爽やか系の超イケメンだから、周囲の女の子たちが黄色い声を上げたり、倒れたりしている。

 やれやれ、修業が足らないな、ふんすっ!


「じゃあね、トリさん! 目的が果たせるといいね!」

「シナノ殿も、良き旅路を。光の運命神と、守護者アンブロシウスの加護が貴方にあらんことを」

「あ、そっか。トリさんにも、八坂姫の加護がありますように! 元気で!」


 挨拶を交わすと、ボクたちは背を向け合って、それぞれの目的へ向かって歩き出した。

 あっさりとした別れだけれど、ボクたちはこれでいい。


 さぁ、ここからはどんな旅になるかな。


「でもとりあえず、まずは腹ごしらえからかな!」




           SSSSS




 激しい揺れの中、一番大きな衝撃を感じた直後、私の体は突風と共に真っ暗な空へと吸い出されていた。

 そして、アッと声を出すよりもずっと早く、私と二人と一頭との距離は絶望的に引き離されてしまった。


『中尉ッ?!』


 切羽詰まった彼の声が聞こえ、思考が頭に流れ込んでくる。


『絶対、絶対助けに行きますから!!』

『フミチカ、後ろっ!!』

<あはははははははははは!!!!!>


 私たちの愛機の背後に出現した黒い靄が、狂ったような笑い声をあげながら腕を振り下ろしている光景を最後に、私の視界は分厚い雲に阻まれた。

 以前の私なら、きっと焦りとパニックに陥っていたけれども……今の私なら大丈夫。


 彼は約束を必ず守る。だから、怖くない。


「私も……必ず、見つけに行く!」


 決して届かない、決意の言葉を投げかけながら、私はどこまでも広がる早朝の空を落ちていった。




           ☆




 声が聞こえる。

 異なる土地で、異なる世界で。

 命の営みと、運命を切り開こうとする者たちの声が聞こえてくる。


『何だか素晴らしいって思わない? 胸がキュンってなるの。いじめたくならない?』


 素晴らしいという点には同意するが、最後の言葉には断固反対だ。

 懸命に生きる者たちに胸が熱くなるのも、気持ちが良くなるのは別にいい。

 だが、その人たちを弄ぼうとすることは誰にも許されることではない。


 例えそれが女神だとしても。


『ちぇっ、君は固いなぁ』


 黒い靄を纏った、混沌の女神が機械仕掛けの剣を手に笑う。


『来なよ、早く私を倒さないと、彼を私が倒しちゃうよ? 君が消えるかもしれないね!! そうしたら、この世界は私のものだよね!!』


 軽すぎる挑発を無視しながら、その時が来るのを待つ。

 それは、そう遠くない未来だ。


 だから決して、絶対に、


『歩みを止めるな、晴樹、メイプル、エルナ』


 日の光のような香りがするマフラーで口元を隠しながら、空色の鎧に包まれた拳を止めるべき相手へと向けた。














           ααααα




「あれ?」

「どうかしたの?」

「うぅん、何か、今、聞こえた気がして」


 遠い場所から、風に乗って、誰かたくさんの人の声が聞こえてきた気がした。

 パピルスたちが会話している時とは違う。なんだか、ずっとずっと、遠くから聞こえてきた感じがして、首を傾げてしまった。


「妖精さんの声が聞こえたのかな?」


 そんな訳はないと思いながら、リリアンに笑って見せたら、リリアンは「熱でもあるのかしら?」と私のおでこに右手を当てて、自分の額に左手を当てて、熱を比べ始めた。

 失礼しちゃうっと思って頬を膨らませて抗議してみた。


「遠い場所からのメッセージ、かもしれませんね」


 突然、カナデお兄ちゃんがそんなことを言った。


「人には、もともと遠距離で意思疎通をする力があった、なんて伝説があったりなかったりしますし。もしかしたら、遠い世界の言葉をたまたま聞いたのかもしれません」

「遠い世界……」


 それは、あの山脈を超えた向こうだったり、海って呼ばれる場所を超えた先だったりして。


「そうだったらいいなぁ」


 そんな風に話しているうちに、おやつができて、その話はそれで終わった。



「でもどうしてだろう……」




 聞こえてきた声の人たちは、誰もが皆、一生懸命で、聞いていて胸が熱くなる、そんな何かがあった気がした。

 冒険小説の読みすぎかな……?


 そんなことを考えながら、吹いてきた風に揺れて目にかかりそうな前髪を手で押さえた。








            ∀∀∀∀∀




 誰かに呼ばれた気がした。

 振り返っても誰もいない。


「どうかした?」

「えと、何でもないよ」


 ラウラさんにそう言って、僕は曖昧に笑って誤魔化した。


 今、どこからともなく、聞き覚えのない言語でしゃべる女の子の声がすぐ近くで聞こえてきた気がしたけれど、周りには誰もいない。

 またカフカやエリスさんが遊んでいるんだろうか。そう思ったけど、二人は僕たちのずっと前を楽しそうに談笑しながら歩いていた。

 何だったんだろう。まさか、幽霊? いや、幽霊ならカフカがどうにかしているか。


 でも、さっきの声は気味の悪いものではなく、どちらかというと、カフカや武宮先生みたいな、見守ってくれているような、優しい気配があった。


「実里君?」

「あ、ごめん。行こうか」


 気を取り直し、僕たちは叔母さんの友達夫婦の家へ向かって歩き出した。


お読みいただき、ありがとうございました。

テーマは登場人物PVっぽい何かです。

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