7話目
「やあ、本当に来たんだね。あの歴史のことでしょ なにが聞きたい?。」
私は早速、疑問をぶつけた
「村がなくなった後、そこに住んでいた吸血種の人々はどうしてしまったのですか?」
「ああそれはね・・・こっち側の土地を見てどう思う?」
「こっち側ですか?あまり来ないのでよくわからないのですが他の町と同じように感じます。」
「そうね。強いて言えば亜人種の割合が高いぐらいなのよね。いろいろな種別がいるからそんな風には見えないけど、まあ今の日本中ならどこにでもあるわ。」
「いわれてみればそうかもしれません。」
そう言いながら私は周りを見渡し確認した。確かに元からいるといわれている無形種のほかにしっぽが見える人や角が生えている有角種の人が多く見える。
「あの時代は以前も言ったように日本全国で巨大災害が起きそれをいちいち直していたのでは人手も足りないし、お金も無くなっていくばかりだった。
そこで管理しやすいようにそれぞれの町の中心に人々を集めるように宣伝し集合住宅で住んでもらうように仕向けたってわけ。
この周辺もそんな風に管理したの。私も昔ここに移り住んできた人々の子孫なのよ。
過ごしやすいように改良して企業誘致に投資もしていたみたいだから、そこらへんからはかなり安定していて今住んでいる人々はそんな昔のこと気に掛けてなんていないのよ。
私も祖父に聞いた話だからね。」
「そうなんですね。だからそんなにこの地域の歴史に詳しいですね。
それに村の人々は生活を送ることができたのですね。」
「そうだね。でも生きる事しかできなかったじゃないかな」
意味がよくわからなかった。
「生きる事しかできなかったってどういう意味ですか?」
「しょうがないことだけどね。生きていくためにはお金を稼ぐ必要があるじゃない でも生活のためにほとんどのお金を使ってしまうから、趣味や行事に使えるお金を残すことができないのよ。それにね、当たり前と思うかもしれないけどでも人間って不思議なもので生活が安定するだけで欲が出てくるのよね。それでお金を使ってしまったり、目的のためにお金を貯めるからそれ以外のことに使わなくなったりするのよ。そうなるとどうなったと思う?」
どうなるのだろう?
「自分のためにお金を使うようになるからみんな個人の活動が強くなる?」
「そうだね。みんなで一緒にいることが減ってくるのよ。もちろんお祭りごとや行事なんかも参加者がどんどん減ってくるのよね。そうするとね、少しずつ 本当に少しずつ誰にも気づかれないまま私たちの歴史が消えていくの。
気づいたときにはもう遅い。私たちにもあったはずなんだけど。」
私には関係ないことのはずなのに、なんだかやるせない気持ちになった。
「結局ね。大事なら・・・やりたいことがあるなら一番大事なことを心に決めて、あの手この手で突き通さないといけないのよ。今だから言えることだけどね。」
私は悶々としていた気持ちから現実に帰ってきた。
「お、もう暗くなってきちゃったね。
途中まで送るわ。あまり知らない土地で夜に一人で歩くのは危ないわ。」
私は鬼頭さんと並びながらふと思ったことを聞いた。
「鬼頭さんはどうしてあの資料館に情報提供をしているのですか?」
「うーん おうち自慢みたいでちょっと恥ずかしいんだけど家がさ、まあまあしっかりとした家系でね。
実家にいろいろ資料とか陶器があったのよ。子供のころからのぞき見していたり、舞踊なんてものもあったのぐらいなの、それが貴重なものだと気づいたのはそれなりに学を付けてからだけどね。
気づいたときには歴史研究の道に進んでいたのよ。意外と好きだったみたいね。」
「でもそのなんというか あんまり知っている人が少ないじゃないですか。共有とかできないのにそれって楽しかったのですか。」
「私の考えではちょっとした趣味みたいなもので、しかも本能から望むものみたいな感じなんだよね。」
「本能から望む趣味?」
「そう、内側と外側みたいな? 誰に言われるでもなく、いつの間にかやっていたこと。
みたいなものかなぁ。まあ実家が実家だったからかもしれないけれど」
鬼頭さんはすごく言葉にすることが難しそうにしていた。
だけど何となくわかる気がした。
「私はそんな生活してきませんでした。」
「本当にそうかな?
私はね誰でも大なり小なりそういう本能からくるものがあると思うよ。誰に言われるでもなくやってしまうこととか」
少し歩いて鬼頭さんは思い出したように私に尋ねてきた。
「資料館に行っていたなら昔話 読んだことある?」
「はい、結構中途半端なお話のやつですよね。」
「あっやっぱりそう見える?私もそう思ったんだよね。
あれもね、私の祖先が残そうとして書いたらしいんだけどまぁ見事に失敗したんだよね。逆に変なお話が広まっちゃたりしたりさ、知ってる?吸血鬼伝説」
「吸血種何て名前がついてるから血をすすると恐れられて地方もあってさ、きっといつも飲んでいたものが赤い色をしていたからだとおもう。それでさ、変なおとぎ話なんかもできあがるわけ
それで面白いのがそのおとぎ話なわけ、その内容があるところにそれは美しい女性の吸血種がおりました。
その美女は他の吸血種と同じように命の果実を食べていたが、あるときその果実が不作となる年があった。飢えに苦しんだ美女は狂乱の末、野生動物にかじりついた。しかし驚くべきことにその血は飢えをいやしたのだ。美女は空腹に負け手当たり次第に動物の生き血をすするようになっていた。
気づいたときには若い人間ばかりを襲ってその生き血をすするようになっていた。美女は山に住み着き若い人間が山に入ってくるとその美しさで魅了し自分の住処へいざない夜遅くなるとその生き血をすする。そんなことから周辺の人間はその吸血種を吸血鬼と呼ぶようになった。」
「吸血鬼。」
私はその言葉を聞きながら思わず、鬼頭さんを見つめてしまった。