もしもそれが夢であったとしたならば
暖かい日差し差し込む電車の中で
笑顔だけで言葉を交わす赤子と母親
心地よく揺れる電車の中で
過去を慈しむ様にして微笑み絶やさぬ老夫婦
静かに変わりゆく景色流れる電車の中で
笑顔で話し込む学生達
無機質な案内音声流れる電車の中で
難しい顔で俯くスーツ姿の男性
見知らぬ人ばかりの電車の中で
窓の向こうの遥か遠くを見つめるスーツ姿の女性
そんな幾つもの人生が存在する電車の中で
夢うつつだった私
信じたくない
そんな非日常の現実が訪れたなんて信じたくない
もしもそれが夢であったとしたならば
それはどれ程に幸せな事だろうか
もしもそれを夢の中の話に出来るとしたならば
私はどれ程迄に歓喜する事だろうか
もしもそれが誰かの夢の話だとしたならば
それはどれ程に幸せな事だろうか
もしもそれを誰かの夢の中の話に出来るとしたならば
私はどれ程迄に歓喜する事だろうか
今そこにある現実を夢としたい
今そこにある現実を失くしたい
今そこにある現実から逃げたい
夢の中の話であって欲しい
誰かの夢の中の話であって欲しい
脱糞してしまったなんて現実
夢であって欲しい
2021年02月28日 初版