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第二十八話 死神戦


「行かせません」

「チッ、そうかよッ!」


 温度を含ませない声で、一言言い放ったエルは、斬撃を繰り出す。


 しかしながら、彼女手には刃物の類は一切握られていない。


では、何で斬撃を繰り出しているのか? ――答えは彼女の手が物語っていた。


「おいおい、どこのチートだよ」


 彼女の手が刀状に変形しているのだ。


「私の体質というのでしょうか? 前に、お話したように私に触れられると、たちまち細切れとなります」


 間を取った雪にコツコツと足を歩ませながら、語るエル。


「これは呪いなのですよ。私は生まれた時から道具として生きてきました。刃物として他人の命を刈り取るが為に」


 そして、エルが手をおもむろに掲げたと思えば、突如として両手の形状が変化し、瞬く間に刀状になった。


「そして今日、()()の殺しを果たし、私は·····」


 その先が語られる事はなかった。エルが足を踏み出し、雪にへと急接近したからだ。


「とりあえず殺します」


 そして、殺し屋別名死神とも言われるエルとの戦いが始まった。


「<魔弾>」


 冷静に指に魔力を溜め、狙いを定める。


「そこだ!」


 しかし、その魔弾はエルの刀により切断される。


「おいおい、本当に勝てる気がしないんですけど·····」


 愚痴をこぼし、雪が放たれる斬撃を全て避ける。


「それはこっちのセリフです。先程の見知らぬ技に今の回避術本当にあなたは無能者なのですか?」


 どうやら、前知識として海斗に粗方の雪についての事は筒抜けなようだ。しかし、魔術や今の回避術は全て、ダンジョンで授かったので知られていないようだ。


「まぁ、無能でもやり方はあるんだよ」


 そして連魔を発動させるため、空中に魔弾を大量に出現させる。


「ほら、喰らいやがれ<連魔>」

「――ッ!」


 所々に着弾し、綺麗な肌からは血が流れる。


「ったく、そんな服装だから血が流れんだよ」


 彼女は暗殺で確実に殺せるためなのか、肌の露出が高い服装になっている。大方男に注目してもらう為だろう。しかし、その肌に触れると細切れ――故の死神と言ったところか


「気遣いは無用です。というかあなたも人のことを言えないでしょう。その右腕、義手もつけないなんて弱点を晒しているようなものですよ」


 そして、回復仕切ったのか猛スピードで右腕一点狙いで斬撃を繰り出す。


「そこを言われるとこちらとしてもぐうの音も出ないが、あいにく俺の右腕はいるんでね」


 脳裏に浮かぶセラの姿。あの笑顔を守るため目の前の死神を倒す。


「その方が羨ましい限りですね。想ってくれる人がいる。それを今までにどれほどまでに望んだことか·····」


 最後まで言いきる前に、エルは雪に切りかかる。


「接近戦か·····」


 魔弾や連魔を恐れての行為だろう。接近戦なら自分にも利があるとそう思ったのだろうが


「<魔砲>」


 近づいてきたエルの腹にトンっと左手を置くように優しく突き出し、発動させる。


「ぐっ、キャァァアァァアア」


 一瞬耐えようとしたが、その凄まじい威力に後方にへと吹き飛ぶ。


 血反吐を吐き出し、震えながらも手を付き、立ち上がろうと力を入れるがどうしても立てない。


「無理をするな。お前の体が壊れるぞ」


 雪がエルにへと足を歩ませる。


「さて、時間もない。お前の知っていることを話せ」


 そして、雪がエルの体に触れた瞬間、エルがガバッと抱きつく


「ッ! お前何のつもりだ!」


 彼女の首には、ネックレスがぶら下がっていたのだが、そのネックレスが淡く光出した。


「ようやく、捕まえました」


 その光は赤黒く発光していき、その強さも段々と強くなっていく·····


「これは、自爆用の起爆術式です」


 聞こえるはずのない幻聴が雪の耳に入ってくる。カチカチと時を刻む時計のような音が·····


「後、数秒後にはドカァーンですよ?」

「チッ、馬鹿か! お前口止めとしてこれを付けられただろう?」


 契約として死神を雇った海斗は少なからず計画を話したのだろう。それを拡散されるのを防ぐ為にここまでするのか


「あの馬鹿野郎が! そしててめぇも十分な馬鹿野郎だ!」


 カチカチと段々と時の刻む音が早くなっていく。そしてエルの瞳はそっと閉じられた。


――ああ、ようやく楽になれる·····


 そんなエルの声は激しい爆音でかき消されたのだった。

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