第二十六話 思わぬ再会
「久しぶりだね。奥村」
現れたのは海斗だった。
「お前なんの用だ!」
思わぬ再会に怒気を強めた叫びをあげる雪。
「久しぶりなのに、なんでそんな怒鳴っているんだい?」
他人をおちょくっているかのような話方に苛立ちを感じながらも、落ち着いた声音でもう一度尋ねる。
「なんでてめぇがここにいる?」
「何故って僕が雇い主だからね」
呆気からんと答えるクラスメイトに更に怒りが湧くが、しかし抑え、冷静に情報を集める。
「なんで殺し屋なんてもんを雇ったんだ?」
「君がオーディーさんを殺したからだよ」
「は!?」
確かに間接的には殺したと言っても過言ではないが、しかしそれを海斗に言われる筋合いがない。
「何をそんなに驚いているんだい? あのダンジョンで唯一死体がないのは君だけなんだよ」
だからといって殺し屋を雇う理由がない。
「だから?」
「だからって、だから君が殺したんでしょ?」
そう言って海斗が浮かべた笑みは、あの憎きヒトガタを彷彿とさせる笑みそのものだった。
(どうなってやがる。こいつは明らかに嘘をついている)
誰よりも信じれる勘がそう感知している。
「お前誰だ?」
少なくとも、自分の記憶している海斗とは違いすぎる彼に疑惑の念が湧くが、彼は眉を少しひそめただけで、肩を竦め声色一つ変えずに語る。
「誰って不思議なことを言うね。僕は正真正銘海斗、佐々木海斗だよ」
確かに彼の見た目、声、全てが記憶している海斗と一致しているが、やはりどこか違う。
「そうか、疑って悪かったな。じゃあ、最後に聞きたい。俺をどうするつもりだ?」
いくら言及しても変わらないだろう彼の態度を察し、雪が別の質問をする。
「んー、とりあえず、みんなの所に連れていくかな。死神を雇ったのはその後に仕事があるからさ」
恐らく殺すのだろう。死神と呼ばれたエルが瞬時にその瞳に殺気を孕ましている。
(しかし、俺の知らない間に変わりすぎているな)
すっかり落ち着きを取り戻した雪は、海斗の変貌に疑問を持ったので、今のところ抵抗することをしない方針で言葉を選ぶ。
「分かった。じゃあ、さっさと運べよ。オーディーは確かに俺が殺したからな」
それは嘘じゃない。オーディーを殺したのは間違いなく雪の弱さからだった。
大方だが、海斗は何かしらの形で雪を陥れようとしている。
なら、話を合わせるのが得策だ。最初は海斗の狙いを探らなければならない。次に殺し屋――死神ことエルの勧誘だ。
金さえ払えばエルは言うことを聞くだろう。二人になる時間を狙ってそれとなく話を進めとけば簡単に海斗を崩せる。
「ふーん、案外早く認めたね。じゃあ早速行こうか」
そうして指を鳴らしたかと思えば、エルが雪を担ぐ。
「みんなはもう集まってるよ。王城の謁見の間で·····」
そこで雪の意識が絶たれた。




