第二十三話 容疑者
数日後――
私たちは、謁見の間にへと呼び出された。
まだ気落ちしている私にとって、正直行きたくはなかったが、国王さまの話という事で仕方なしに集まったのだが、
衝撃とも言える言葉がガシュの口から放たれた。
「オーディーの死は、ユキによるものだと、決定された」
今、この馬鹿はなんと言ったか? 雪がオーディーを殺した?
雪がよく読んでいる小説でも、こんな超展開はない。だってそんな突拍子も無いこと·····
気づいたら私は声を荒らげていた。
「なん、なんでですか!?」
「ユキの死体がなかっただろう? それを不審がり、各地のギルド長に伝達したら、ユキが生きているという報告がされた」
雪が生きている? 確かにそれは嬉しいことだが、なんで? なんで·····
「困惑するのも無理がない。かく言う我も未だ困惑状態だ」
それが真実かのように、国王の顔色は悪かった。
でも、理由が、しかも彼は·····
「そんなことができるのですか?」
私の疑問をありのままに黒木が言葉にする。
「できるとは?」
「そのままです。彼は私たちが言うのもなんですが、弱かったはずです。それに殺す理由も見つからない」
そう、そもそも、彼は弱かったからダンジョンにへと行ったのだ。
しかも、行くきっかけを生み出したのは私。全てが偶然であった。
第一殺す動機が分からない。
「それについては彼が説明するだろう」
そして、国王の隣に立ったのは前髪を長くした彼だった。
「海斗?」
そう、佐々木だった。
「僕もね、こんなことは嘘だと思ったんだ」
眼鏡をかけ直し、続ける。
「オーディーさんは首を切断されただろう? それは、別に奥村でも無理な話ではない。彼でも、寝込みを襲うのは出来るからね」
彼はまるでそれが真実かのようにすまし顔で淡々と語る。
「動機については、僕にも分からないが、大方耐えられなくなったのだろう。この世界の生活が·····」
確かにもしかしたらそのような理由があるかもしれないが、雪があの時見せた笑顔からはそんなことは考えにくい。
「それはおかしいだろ!?」
黒木は食い下がる。茜ちゃんは黙って聞いている。
「なにが?」
「全てが、だ! 奥村がそんなことをしたっていう証明は?」
「なら、やっていないという証明は?」
二人の討論だけが、この一室に響き渡っている。
「奥村が殺してないとなると、誰がオーディーさんを殺せるんだ?」
「そ、それは」
「別に、奥村と確定した訳でもないが、それでも可能性はあるだろう? なら、ここに奥村を連れてくればいい」
そんな佐々木の目は私には狂気の色が写っている気がした。
次回から雪目線に戻ります。




