第二十一話 テンプレ·····?
全体の造りは中世のそれと酷似しており、人が賑わい、これを見るとやはり、異世界に来たことを強く思わせれる都――王都クレファンス
そんな都の傍にへと転移を果たした雪たちは、早速、都に入ろうとしたのだが、ここである驚愕な事実に気づく
「まって? ハクお前ステータスどうするよ? 後、俺らも結構ヤバくね?」
そう、ステータスである。
西の神殿を攻略したはいいもの、それ相応のステータスを雪とセラは所持しており、更にはハクは神であるのだ。
確かに、異世界に来て俺TUEEEEチートなどを、手に入れたが、正直そんなものはセラの幸せには直結しないだろう。
どちらかというと、それは雪にとっての幸せであり、セラのでは無いのだから
「ふふっ、主様、安心してくださいな。私、ハクに不可能の三文字はございません」
そう言うやいなや、淡くハクの瞳が輝き始める。
「<偽造>」
その一言で何の変化も感じないまま、瞳の光は衰えていった。
「あれ? ハクさん? 何の変化もございませんよ?」
「変な喋り方をしないで、主様、しっかりとステータスプレートを出すの」
急かされ、プレートを形成すると、そこには明らかに違うステータスが表示されていた。
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オクムラ ユキ 17歳 男
種族 人間
職業
レベル 15
体力 700
筋力 1000
脚力 700
防御力 800
魔力 50
抵抗力 1000
能力
適応
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「うぉ、すげぇめっちゃ弱くなってる!」
「いえ、正確にはステータスの表示をバグらせたのであって、主様は弱くなってないよ?」
偽造――ステータスなどを隠す際に使用される能力の一つ
「へぇ、じゃあなんなら職業欄のところ空白を直して欲しかったんだが」
「さすがに、偽造する対象が無ければ偽造は出来ないよ」
この一言は結構グサッと雪の心に刺さった。
「くそぉ、俺はニートじゃねぇからな」
魔術しか使えない雪にとって、残された職業は冒険者だけだが、正直に言うと冒険者は職業では無い。
セラを見れば分かると思うが、セラの職業は剣士であって、冒険者では無い。
だが、セラは確かに冒険者だ。
冒険者とは国が作った機関――冒険者ギルドに所属している人を冒険者というのだ。
なので、このまま行くと雪はニートではないが、職なしは免れないだろう。
これには雪は四つん這いで絶望するしか無かった。
「何、馬鹿な事をやってるの? ほら、さっさとクレファンスに入るわよ」
セラにより、雪は泣きながらクレファンスの門を潜ることとなった。
当然、門には衛兵がいるわけで、ステータスを開示しないといけないのだが
「まぁ、なんだ? お前にも未来はあるよ。うん、最悪冒険者だって言ってればなんとか生きられるからな? ほら元気だせ?」
そう言って、お金を出してくれた衛兵さんに、思わず雪は叫んでしまった。
「·····師匠·····師匠と呼んでも? いや、あなたは聖人様だぁ! ありがとう」
そんなこんなで、ようやく入ることが出来たクレファンスに未だ涙を流しながら雪が第一声をあげる。
「とりあえずギルドいこ? 師匠にご報告しなきゃいけないから」
その言葉に苦笑いを浮かべる後ろの二人には気づかず、雪はギルドにへと向かった。
外からでも聞こえる男の声に雪はゴクリと息を飲む。
現在、時刻は真昼間である。昼間から酒を飲んでいるであろう冒険者たちのテンプレ的な展開を望んで、そしてそのドアを潜ると
「あぁ!?」
当然の如く、やって参りました。
モブキャラ第一号、これから起こるテンプレ的な展開を、しかし雪は求めていたのだが
「いらっしゃませぇ! ギルドへと登録ですか? あら! 綺麗な子達ですねぇ、大切にしてくださいよォ」
巨漢が体をくねらせて接待をする姿には、雪は引いてしまう。
だが、そんな男の横をするりと入っていくセラ
「ほら、何してるの? 早く行くわよ」
「あらぁ、セラちゃんじゃない?」
「久しぶりね、ギルド長」
「ギルド長!?」
えっ? このオカマがギルド経営してるの? 今のところ信用ゼロなんですけど!? とその心が余すことなく顔中に表れている
「そう、冒険者ギルド本部、ギルド長はワタクシ、カマー=ネェよ」
よく見ると、服装はしっかりとした装備なのだが、所々にハートマークやら、何やらが施されている。
「あら? リリスちゃんたちは?」
「·····」
「そう·····」
いつもはいるであろうリリスの姿が見えないことにカマーは首を傾げたが、セラの沈黙で察したらしい
「なら、あなたがセラちゃんを助けてくれたのね? ワタクシからも礼を言わせてもらうわ」
そして、ありがとうと言いながらウィンクをする姿は非常に気味が悪かった
「いや、それもそうなんだが、とりあえず冒険者登録してくれるか」
すっかり、出鼻をくじかれた雪は、用件をさっさと済ませようと、カマーを急かす
「それも、そうね。ごめんなさいねぇ、柄にもなく辛気臭い雰囲気をだしちゃったわ」
カマーにとって、余程この姉妹はお気に入りだったのだろう。涙をホロリと流しながらも、雪をカウンターまで案内する
「彼女の名前はカナと言ってね、とっても優秀な子なの。元々、セラちゃんたちを担当していた子だから、あなたの担当にしちゃうわね」
そして、視線を向けると、こんなギルド長にも関わらず、美人さんが受付嬢を担当していた。
「よろしくお願いします·····あれ? あなた何処かで·····」
見ると、茶髪を後ろで三つ編みでまとめた、あの時の受付さんであった。
「あっ!? 新人さんでしたよね? 確か」
これには内心舌打ちをするしか無かった。
(マジか! ここでコイツに出会うのかよ)
これでステータスの開示をしてしまったら、矛盾が生じる。
新人として、彼女にあったからにはステータスの職業欄には騎士と書かれてないとおかしいのだ。
しかし、自分は職なしである、どうやって誤魔化すか、ある意味魔腕を使う時よりも思考を加速させていく
(オーディーに辞めさせられたって言ったらオーディーの株が下がっちまうし、だからといってなぁ)
オーディーの性格上、騎士団脱退はまず無い。しかし、ここで死んだことを言うと、大事件になってしまうが、しかし
「オーディーさんの事は聞きましたよ」
はぁ? と驚く雪。
「あの後、王国の勇者さまたちが、帰りが遅いオーディーさんを心配しにダンジョン潜ったところオーディーさんの死体を発見したって」
俯き、顔を暗くさせるカナ。
「そうだったのか·····」
もちろんずっとダンジョンに潜りっぱなしであった雪は、そんなニュースなど知る由もなく
(勇者たちってアイツらだよな)
そして、慧馬たちにオーディーの死が知れ渡っているのを知って、雪は焦る
(俺が殺したものだから·····ヤバい)
次第に汗が滲みでており、カナが心配そうに見つめる。
すると、不意に左手に温もりが
「大丈夫よ·····」
「あぁ、そうだな」
そう、慧馬たちはこんなことで変わるはずない、それを信じ、前を向くとあの時決めたのだ
過去は振り返っても、変わらない。ならと、必死に未来に向かって歩くと決めたのだ。
「確かにオーディーは死んでしまったけど、俺は死なないよ、カナ·····」
今なお、顔を暗くさせるカナに、雪は精一杯慰める。
「私もそう願うばかりです」
今なら分かる。あの時の笑みの真実が·····星の数ほどいる冒険者が、顔見知りの冒険者が、担当の冒険者が日に日に減っていくのは、辛いものなのだろう。
「ほぉら! この話はおしまい! 冒険者登録をしましょ?」
パンっと手を叩き、わざと大きな声でカマーが場を占める。
「そう、ですね。ではユキさん。ステータスを開示してください」
言われた通りに従い、雪はステータスを見せる。
「あなた職業が·····」
当然の如く、指摘された職業に、しかし雪は本当の事を言う。
「オーディーに職業を貰う前にオーディーが死んでしまってね」
「そうですか·····分かりました。では、これで登録させてもらいますね」
そう言って、ハンコを出したかと思えば、思いっきりステータスプレートに向かって押す。
赤色の魔力粒子がステータスプレートに吸い込まれていくと
段々とそのプレートの色が変わっていく、青から光り輝くプラチナへと
「えっ?」
これには、カナも首を傾げる。
「えっ!?」
カナよりも、幾分か驚きが増した声で雪も驚く、そしてギギギっと音を鳴らしているからのように、ぎこちない動きでハクに顔を向けると
「すみません、そこまでは私も予想してなった」
てへぺろっとハクが可愛く舌をだすが、それどころでは無い
「あの? カナ?」
ずっと黙りこくっているカナに視線を戻すと
「これ、シルバーですよ! プラチナじゃないです!」
現実逃避をするように、苦し紛れにそう口にする。
しかし、言い出したらそう見えてくるのが、恐ろしい。
「そうだよな、これシルバーだよな?」
「はい! シルバーですよ! じゃあシルバーランク冒険者として、これからのユキさんのご活躍期待してますね!?」
こうして、半ば無理やり、冒険者登録が幕を閉じたのであった。
どうだったでしょうか? このように日常編は少し、ギャグみたいにしつつ、ダンジョン攻略の時はしっかりとシリアスに展開していこうと思います。




