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第十八話 神獣


【西の神殿(ダンジョン) 九十九階層】


「ここの階層に入ってから、ガラリと雰囲気が変わるな」

「うん」


 九十九階層にへと続く階段を降りた先で迎えていたのは、遥か高くそびえる大きな扉であった。


 中心部分には、時計のようなデザインが施されているが、あまりにも時間が経っているせいか、所々錆びれたり、つるが張っている所もある。


「ここが本番ってところか?」

「そうみたいね。でも、あれから結構私たちレベルアップしたわよね? なら、行けるんじゃ?」

「そうかぁ?」


 現在の雪のステータスはこのようになっている。


====================================


オクムラ ユキ 17歳 男

種族 人間

職業

レベル 99

体力 50000

筋力 100000

脚力 60000

防御力 70000

魔力 100

抵抗力 100000

能力スキル

適応 魔法適正ゼロ


====================================


 人間の成長限界は99レベルであり、雪はカンストしている。


 そのせいか、明らかにステータス値が桁違いに仕上がっている。


 ちなみに、セラもレベルやステータスなどは遥かに上昇している。


====================================


セラ=ミカエル 13歳 女

種族 狼人

職業 剣士

レベル 99

体力 70000

筋力 100000

脚力 50000

防御力 60000

魔力 10000

抵抗力 100000

能力スキル

武具生成 鋭利化 魔法適正・木


====================================


 見てわかる通り、セラは現時点で()()()()()()()雪よりも強いのだが、


 それはあくまでステータス上の話で、実際戦うとなると、セラの一方勝ちという訳でもない。


 何度も言う通り、雪には魔術があり、その効力はセラが言うには非常識なのだ。


 そして、セラには家族を失ったという心に弱さを抱えている。


 しかし、だからこそ二人は信じあっているのだ。


「まだ改良が必要だからな()()を使う訳にもいかない」

「分かってるわよ。私がユキの右腕になるから」


 そう、セラの心を雪が支え、雪の右腕をセラが代わりを努める。


 そして、ギギギッと音をたてながら、重い扉を開けたのであった。


 開けるとそこには、奥に続く通路があるのだが、その前に広間が広がっていた。


 その中心部にはいかにもな魔法陣が広がっている。


 そして、雪たちが部屋に入るやいなや、突如赤黒い粒子を放出し始める。


 普段の魔力粒子とは違った、異様な光景に二人は即座に、雪は魔術の準備を、セラは剣を構える。


 段々とその姿が現れていく、やがて、そこには虎が出現した。


 真っ白な毛並みに所々に黒の線が縞模様になっている。その瞳はどことなくヒトガタに似ていて、赤黒い。


ここまでなら、普通の虎と見えなくもないが、異質なのはその腕である。


 白虎にも似たごつく、金属製の腕や爪は容易く人間を切り裂くであろう切れ味があると思わせるほどに煌めいていた。


それは、どうやら腕に纏われているという感じで、一種の武具のようである。


 そんな虎から発せられる”圧”は、雪の魔圧を軽く超えるほどであった。


 何処か、神々しいオーラを放つ化け物に雪は舌打ちをする。


「チッ! これが最後のボスかよ! セラやるぞ!」

「言われなくても分かってるわ!」


 突如、虎から放たれる怒号により、戦いの幕が開けた。


「ガァルルァッ!」


 急接近して切りつけるセラ。しかし、その刃は虎には届かない。


「えっ!」

「危ねぇ!」


 切りつけた剣を、すぐさま避け、虎の爪がセラを襲う。それを危機一髪の所で雪が蹴空で助ける。


そのまま振り向きざまに魔弾を放つ。が


「うっそだろ!」


 後ろにでも目がついてるかのように、明らかに意表を突いたであろう攻撃を虎が避ける。


「じゃあこれなら! <連魔>」


 そして、無数の魔弾を出現させるが、一閃


「ガァ!」


 放たれた斬撃が魔力の塊を破壊する。


「マジかよ! セラ悪いが虎の気を引いてくれ」


 しかし、雪も諦めない。直ぐに作戦を考え、セラにへと伝える。


腕の中で抱かれたセラは無言で頷き、剣に力を込める。


「<鋭利化>」


 途端、剣に薄く魔力が纏われる。


「行くわよ!」


 勢いよく、雪の腕を飛び出し、虎にへと接近する。


「はァ!」

「ガゥ!?」


 セラから振り下ろされた剣を虎は爪で迎えようとしたのだが、鋭利化とレベルカンストしている力に接戦となっていることに驚くように声をあげる。


「よしっ! <魔砲>」


 生じた隙に、雪が、蹴空で距離を詰め、左手を虎に突き出す。


刹那、体がバラバラになるような強い衝撃が虎を襲う。


「キャウ!」


 弱々しい声をあげ、後ずさる。しかし、攻撃の手を雪たちは止めない。


「はァ、ゼィヤッ!」


 勇ましい声と共に、剣技を放つ。


狼人暗殺術<隼剣>――目にも止まらぬ速さで、切りつけ、一瞬で絶命にへと陥らせる剣技


 もちろん、これでは虎の堅い皮膚を破ることは出来ない。


そこですかさず、雪の魔弾


「ギャァウ!」


 悲愴の増した声音で虎が突っ伏す。


これには、雪たちもようやく息をついたのだが、しかし今回のボスはそう上手くいかないらしい。


「グ、グルルル」


 弱々しく、だがちゃんとした脚で地面から起き上がる。


そこで、更に雪が魔術で畳み込もうと連魔を出現させるが、しかし直後放たれた尋常ではない殺気に思わず、それを中断してしまう。


「ガァァルルッ」


 赤黒い魔力が虎から発生している。それは段々と渦巻いていき、形状をハリケーンのように変形させていく


それが突然止んだかと思えば、次は遥かに雪たち人間を超越しているであろう魔力を高密度で圧縮させていく


 あまりの密度にプラズマが発生し、その凄さが迫力を増す。


(クソッ! まだ隠していやがったか)


 そして、雪は既にない右腕にへと視線を向ける。


(やるか? いや迷ってる場合じゃない!)


 目の前にはほとんどの準備が整っているであろう虎が、自分でも分かるほどニヤッとこちらを馬鹿にしていることが分かる。


すなわち、お前ら人間ごときにこれを超える魔力を扱えるか? と――


 だが、雪は決意する


「セラ、アレを使う。あの化け物を殺すぞ!」


 そして、思考を加速させていく、同時に複数の事を成し遂げなければ実現しない技に意識を集中させる。


「魔ノ術 終ノ型<魔腕>」


 眼前の赤黒い魔力とは違い、対象的な青白い魔力を放出させる。


形状されていくのは己の右腕、数秒という僅かな時間を要して、完全な右腕を形作る。


神経部分は魔力によって接続し、久々に見た、あまりにも変わりすぎている右腕を見て、雪はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


 眼前に佇む強者を、地を這う弱者にへと変えさせるがために――


「魔ノ術 終ノ型二武<紅魔(こうま)>」


 今もてる最強の技をもって、虎の最強を上回る。


魔砲、魔弾、連魔·····全ての魔術を一つの舞にも似た連続技にへとまとめあげた、最終となる技――紅魔


蹴空にて間を詰めようと、脚に力を入れる。


 そして、蹴空で動いたのと、相手の高密度の魔力の塊が発射されたのは同時だった。


ぶつかり合ったことによって発生した強烈な風がセラに襲いかかる。


 そんなセラが目を開けた先に広がっていたのは、瀕死の雪と、絶命した虎だった。


所々、傷が開かれ、血が流れている雪は既に満身創痍と言っても過言ではない。


しかし、そんな雪の目の前には腹に大きな穴が開き、絶命している虎の姿が


 これには、思わずセラが叫ぶ。


「ユキ!」


 立っているだけでも奇跡と言えるであろう瀕死の雪が笑顔をセラに向ける。


「良かった。お前に傷が出来なくて」

「そ、そんなことより、早く治療を·····」


 急いで、治癒(ヒール)をかけるが、傷だけが塞がり、大量に出血した血は元に戻らない。


それもそのはずだ。あの時、紅魔の技を発動させるために、あの魔力の渦にへと飛び込んだのだから、


高密度に圧縮された魔力が雪の皮膚を焼き、発生したプラズマは雪に傷を負わせた。


 しかしながら、そんな時にでも勝つことを諦めなかった雪は、お返しとばかりに、連魔を放ち、


魔弾で目を潰し·····最後には魔砲でその皮膚に風穴を開けるほどの魔力を注ぎ込んだ。


崩壊と同時に風穴を開けたのだ。いくら魔力が回復するからと言っても、その疲労も含めて雪の様態は危険に瀕していた。


 だが、ここで倒れる訳にはいかない。この先に待っているであろう白虎の封印を解くまではこの意識は離さないと、唇を噛む。


その行為にセラは泣きそうな顔になるものの、雪の思いを無駄にするまいと、歩くことすらままならない雪の左手を握り、出来るだけ明るい声で


「行こうか? ユキ」


 力なく頷く雪。そして、奥にへと進んでいくのであった。

お分かりの通り神獣とは、この虎の事です。

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