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プロローグ 〜絶望〜

プロローグです

 

 ──俺たちが一体何をしたってんだ?


 しかし、その問いに答えてくれる者はいない。否、いなくなったという方が正しいか。


 ここはダンジョンと呼ばれる場所。財宝、又は名声を求めて来た者に〝死〟を与えてきた場所。


 この場を照らすのは亡き冒険者たちの松明の火のみ。その淡い光だけが、今にも消えそうな儚い火が少年を──ユキを照らしている。


 そんなユキの眼前には〝惨状〟と言える程の光景が広がっていた。

 ミンチにされた少年と少女。リーダーとして皆を引っ張っていた少年に加え、更に自分の恩師に当たる人物までもが殺されていた。


 それをただ呆然と見つめ、酷い現実から目を背けようと切に願う。


 ──誰か·····誰か助けて·····俺をここから·····


 しかし、ユキの願いはダンジョンの深層で虚しく消えていく。


 そんなユキの脳裏に浮かんできたのは彼らの姿。

 最も近くて、だが最も遠かったクラスメイトの姿が鮮明に浮かんできたのだ。


 ユキを助けると約束してくれた少年も、ユキには凄い力があると豪語した少女も、ユキより遥かに高いステータスを誇っていた彼や彼女も、しかしここに居ない。


 無意識に自分を見た。

 肩からスッパリと消失した右腕、危機を救ってくれるであろう魔法も、しかしユキにだけは使えない。


 必然的に浮かんでくるのは〝死〟という一文字。

 それをまるで具現化しようと近づいてくるのは全ての元凶。ユキにとって、死の象徴。


 アイツが近づく度に心に亀裂が走る。


 朧気に目線を向けると、しっかりとアイツの姿を捉えた。

 その瞬間、自分でも分かるほどに心が壊れた。


 それは割れた硝子のように。二度とくっつくことの無い破片となって散らばっていく。


 神という者がいるのなら、ユキが余程嫌いなのだろう。壊れた心の隙間に、目の前の惨状が、ユキにとって背けたい現実が漬け込んでくる。


 次いで襲ってくるのは孤独感だった。

 そしたやがて、ユキの心をダンジョンの暗黒が堕としていく。


 遂に目の前にまで接近したアイツに、ユキは全てを人生までも諦め、目を閉じた。

 

(最初から、俺なんかが生きてちゃいけなかったんだ)


 その反応を見て、気を緩くしたのかニタァと気味の悪い笑みを浮かべる化け物。


(もういっそ·····殺してくれ·····)


 完璧に諦めた瞬間、後悔にも似た走馬灯が駆け巡っていく。


 化学の世界──地球から、魔法の世界──ファンタジーに来るまでのあれこれ。

 ファンタジーに来たユキを迎えた辛い現実。


 そして、こうなるまでに至る全ての経緯が──

次回から本編です。

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