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魔王討伐、引き受けます  作者: ユウグレムシ
特別編 ユゥラ 対 機械騎士軍団
13/21

その二

 機械騎士の特徴については、ユゥラが持ち込んだ手土産のおかげで、くどくどと聞かされずに済んだ。女の身ながら既に一度倒した経験あり、ということで王の信頼は厚く、契約は無事成立した。ひとつ、機械騎士を排除し、王を都へ帰還させること。ふたつ、王城を偵察し、被造物量産計画の責任者である宮廷魔術師と連絡を取ること。これが今回の仕事だ。ユゥラとフェイは、その晩は城の客室の清潔なバスタブや分厚い羽毛布団を満喫し、翌朝、二人乗りのウォレンで王都へと向かった。クロルク王が脱出に使った地下通路の位置は教えてもらえなかった。

「王様ずいぶん気前よかったねー。傭兵が二人しか来なかったからかな?」

「斥候を送り出すにしたって、部下から選ぶとなれば、家臣の顔を立てなきゃならない。“A家の騎士を使うとB家が妬むかな”とか“同じ家の者ばかり使うとつけあがるかな”とかね。人間関係でがんじがらめの貴族様は、あたしらみたいな捨て駒はいくらでも欲しいのさ」

「捨て駒ねえ……。同業者はみんな警戒したってわけか。このまま前金持って逃げちゃう?」

「信用に傷がついても構わないなら、お好きにどうぞ」

「あっ、いじわるー!ウェイナーくんを置き去りにするはずないじゃん!」

 車体を左右に揺すって振り落とす真似をするフェイの前傾姿勢の背中にユゥラがぎゅっと抱きつくと、一騎の白馬が追いすがってきた。

「君達ー!!盗み聞きをするつもりは無かったのだが!!密命を帯びて!!都へ潜入しようとしているね!?」

 ウォレンの最高速度なら馬を振り切れる。が、これ以上加速するとユゥラはしがみついていられなくなる。

「私は勇者ディナス・ディルナイン!!」騎士はフェイに無視されても構わず続けた。「この地は、やはり何か災いに見舞われているのだね!?」

「ねえフェイ?騒がれると面倒だから、停まって話つけよう」

 フェイは溜息をつき、通行人の邪魔にならないようにウォレンを路肩へ寄せた。すぐに白馬が追いついて、ディナスは手綱を引くと鞍から颯爽と降り立った。


「ふう。聞いてくれる気になったか。待ってくれたまえ……神よ、彼女達に出会わせたもうたことを感謝します」

「勇者様、ここらじゃ魔王退治は間に合ってるってよ?どっかよそを当たったら?」

「では君達は都で何を?」

「あたし達は……」

「あんたには関係ない」

「そう。関係ない」

「関係ないことはない。なぜなら私は勇者だから。……疑っているね?見たまえ」

 ディナスは鞍にぶら下げた荷物袋から巻物をいくつか取り出し、紐をほどいてユゥラに見せた。黄ばんだ巻物は魔王討伐の功績を讃える感謝状であり、各地の王侯の署名とともに、古いものでは大陸暦で十年から二十年近く前の年月日が記されていた。ディナスがこんな紙切れをいつまでも大事に持ち歩いているのは、功労者として国境や街門の通行料を免除してもらう際の身分証明に使えるからだ。サー・ディナス・ディルナインは、れっきとした城持ち貴族だった。ユゥラは反射的にかしこまった。

「傭兵のユゥラ・ブレインズです。こちらはフェイです。失礼しましたっ」

 ユゥラの肩に手をかけてフェイが身を乗り出し、巻物に興味を示した。

 騎士の家に生まれたディナスは十代の頃、勇者にあこがれて単身、冒険の旅に出発した。それから攻略した魔城・魔窟は数知れない。しかし訪れる先々で魔王の手から美少女を救えども救えども、ディナスに惚れて将来を誓い合う仲に進展するほどの相手は無く、現在に至るまで運命のヒロインに巡り会えていないのだった。人はディナスを“恋人知らずの三十年勇者”と呼んだ。

「魔王討伐も確かに大事だが、災いの渦中にある城とくれば、囚われのプリンセスが付きものだろう?亡き父母に孫の顔を見せることさえ叶わぬまま、ずるずると三十余年……。今度こそ、あの暗雲渦巻く王城にこそ!プリンセスが助けを待っているはず!」

 今日は快晴だ。

 貴族様ならぼんやりしていても縁談のひとつやふたつあったろうに、とユゥラは思ったが、ディナスは何やらロマンチックな出会いにこだわっているようだった。フェイの口車に乗せられて、最新の国際情勢や辺境で見聞きした珍しい事物を、情報屋の仕入れ先にされているとも知らずに無料でペラペラと喋ってしまっている。ディナスは男前で、正直者で、お人好しの馬鹿だった。


 こうして便利な肉壁役を手に入れたユゥラ一行だったが、城への道のりは潜入どころか強行突破するはめになってしまった。行商や巡礼やその他の旅人達が誰ひとり見咎められずに街門を通過してゆくので、フェイも徐行で通り抜けようとしたとき、崩れたアーチの左右を守る機械騎士が動いたのだ。巨大な鞘から剣を抜き放ち、足元の人々も路地の建物も無視して、なにもかも踏み壊しながら目貫き通りを追いかけてくる。

「あいつら誰から誰を守ってるの!?あたし達の何がお気に召さないの!?」

「知るか!そいつが分かれば一件落着大団円だよ!」

「ハハハ!!察しがついたぞ、あれを倒しに来たのだね!」ディナスは馬の腹を蹴りつつ剣を振り上げた。「この場は私が囮になろう!健闘を祈る!!」

「ディナスさん!!」

「跳ぶよ!しっかり掴まって!!」

 高笑いとともに路地裏へ消えた白馬を見送ってウォレンは爆走した。通りの左右から駆けつけた機械騎士の増援が繰り出す刃の下をくぐり、上を跳び、最後に城門で待ち構える機械騎士が持ち上げた足裏と地面とのわずかな隙間から、滑り込んだ前庭で数回スピンしながらも、噴水に激突する寸前でどうにか制御を取り戻した。

「ホイ到着。生きてる?」

「寿命縮んだ……」

 たちまち二人は衛兵に捕まったが、ユゥラが王から預かった宮廷魔術師宛ての手紙を示すと解放してもらえた。

 機械騎士は城壁を越えてはこなかったが、その代わり城内に大勢の廷臣と召使いと負傷兵が閉じ込められていた。人々は戦のための備蓄食料を切り崩し、今のところ冷静に日常を続けているようだった。こちらの事情を説明すると、宮廷魔術師に仕える召使いが衛兵から案内を引き継いだ。召使いは宮廷魔術師のことを過去形で話した。その理由はすぐ判明した。

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