刺激が欲しかった男
いつまで続くのかと思っていた。
このつまらなくて理不尽が降り注ぐ日常が。
何をしても何も変わらない、つまらない一日が流れていく。
目の前に鏡がある。
鏡には1人の男が映っている。
首元にはロープが添えられていて、台の上に力なく立っているのがわかる。
僕はフッと自嘲気味に笑った。
これで退屈な日々から抜け出せる。
遺書もしっかり用意した。
最後の確認を終えて台に近付いていく。
さあ、さよならつまらない日常。
僕は足で台を蹴り飛ばした。
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「昨日、マンションの一室で男性が死亡しているのが見つかりました。警察は自殺と他殺両方の線で捜査を進めているそうです。」
テレビに死んだ男の顔が映っている。
見た事のある顔。
見た事のある家。
見た事のある部屋。
「いやー、思い詰めてる様子は無かったと思います。うん、この間もライブのチケット当たったって喜んでましたし。自分から死ぬようには見えなかったですね。」
知人へのインタビューも流れている。
それはそうだろう。
なんたって俺が殺した。
遺書を捏造し、首を絞め殺して首吊りに偽装した。
思い付く限り自殺に見せかけたのだ。
まあでもすぐにバレるだろう。
警察はプロ、こっちは素人。
見つかる前にさっさと逃げようか。
逃げて隠れて殺して、また逃げる。
警察との鬼ごっこの始まりだ。
あぁ、さよならつまらない日常!
こんにちは、刺激的な日々よ!