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1-7.狂気

寝てしまっていた。

こんな路地で、危なすぎる。


宿屋は無理、貰った金で飲みに行くのも気が引けた。

暫く時間を潰すつもりだったが、なまじ規則正しい生活をしていたせいでそのままウトウトしてしまったようだ。


日が昇って結構経っている、もう7時くらいか。


明るくなったので改めて本をめくる。

ちょうどいい難しさの本だ、リナに選ばせたのか。

右下、ページ表示があったらしき部分が結構雑に、くり抜いてある。


紙が落ちた。

最初のページに挟んであったようだ。


読んだらまた泣いてしまうかもと思いつつ、2つ折りを開く。


  大金貨はギルドに預け、両替して使え

  あぶない


下の方に、“預ける”と“両替”の意味が辞書のように解説してある。

おかげで完全に理解できた。



大金貨? 以前の話には無かった。

リナ相手だったのでそこまで話さなかったんだろう。

恐らく10ゴールドだ。


飲み屋なんかで使えばヤバかった・・・


こんな大金大丈夫なのか、裕福ではないのに。

色々想像するが答えは出ず。

とにかくギルドへ行くことに。




ギルドはごったがえしていた。

受付らしいところには3列になって並んでいる。


奥の方にも受付らしいものがある、天井から下がった看板には『悩み』だっけ、文字が書いてある。

悩んでいるので行ってみる。


「ご相談ですか?」

耳が尖ってる、エルフの人かもしれない。

「登録はどこでできますか?」


「はいここでできますよ、登録は5シルバーです。

ここに手を乗せてください、お名前は?」

「ヨウ・タキウミです」


板に手を乗せ5秒で終わった。

カードのような物をくれる

「読みましょうか?」

「はい」


「ヨウ・タキウミ ヒト 男 18歳 ランクF ですね。

いつでも脱退できます。

ギルド内の暴力は即資格剥奪です、他に説明は要りますか?」


「あっ預金と両替を。

預金って大丈夫なんでしょうか、変なこと聞いてすみません」


「町に来たばかりですか、ギルドは鉄の掟で動いていますから」


「これで、えーとひと月程暮らせる程度両替を」


「防具をお持ちでないならまず買いに行かれては。

初級用ならお釣りの9ゴールド95シルバーあればいいでしょう。

すぐ隣がうち直営で信用できます」


よく考えれば両替しなくとも登録のお釣りがあった。

大金貨4枚預かってくれたが、通帳など何もない。

ギルドを信用するしかない。



防具は「動きやすいもの」を探し、一揃い4ゴールド。

依然物価は不明だが、食事付きの宿が30シルバーだから半月は保ちそうだ。

宿は食事のレベルだけで決めた、ギルドの向かいだ。



「お前、昨日みたいな事してたら追い出すぞ!」

綺麗だがキツそうな目の女だ。

「そのくらいにしとけ、本人が一番落ち込んでるから」

リーダーか、なだめている。


横目で見ながら通り過ぎる。

女に睨まれた、というかエディーに貰った剣を目で追っていたような。



まず宿の外部兼の食堂で味見してみよう。

「えーと、おすすめのを」

若いウエイトレスだ。


毎日2人の女性といたのに、やはり若いと意識する。


野菜、肉、パンとバランス良く揃っている。

味付けはエリスには悪いがこっちの方が好みだ、味が濃いだけかも?

宿はここで決定だ。


食事は6シルバー。

宿泊は1週分、2ゴールド10シルバーを先払いしておく。


鍵や金、その他を失くさず持ち歩けるように袋類を買わないと。

リュックは持っているがここでは目立つし、飛ばされてきたときの革ジャン他で一杯だ。


雑貨屋で色々見てみる。

大きめの背負い袋しか無いが、肉など大量に持ち帰るためだそう。

身につける革袋や小さなナイフ、非常用の干し肉など思いつく物を買う。


リュックは宿に置くが、革ジャンとスマホ程度の大事な物だけ持っていく。

盗まれなければ置いておくようにしてもいい。

スマホが大事かは迷うところだが、とりあえず持っておきたい。




とりあえず、こういう世界では、いやもちろん元の現代でもよくある『初心者いじり』には遭わなかった。

いじり程度なら何でも無いが。

心はおっさんだから・・・。


無茶をしてはシャレにならないが、どこからが無茶なのかが分からない。

周囲の冒険者に混じり、似た方向に歩く。

そのうちまばらになり、周囲には誰もいない。


ギルドの者が知っていれば間違いなく止めただろう。

無知の知、ならぬ無知の無知だ。



山へ入ると、いきなりイノシシがいた。

ブモォォ

自動的に加速する、木が邪魔で避けながら脳天に剣を振り下ろす。

終わった。


気配など感じる間もなかった、魔物もこういうふうに現れるのだろうか。

『血抜き』といった話は聞いたことがあるので逆さに抱えながら戻る。

さすがに背負い袋には入らず、血も垂れている。


ギルドに戻った時には血も止まり、普通に納品できた。

「ひとりでやってんのか?」

解体担当が聞いてきた。

「はい」


「基本くらい習ったほうがいいぞ、無駄が多いからな。

暇だから教えてやるわ」

血抜きから、無駄なく必要部位を切り分ける方法など、親切に教えてくれる。


「解体料もかかるしな・・・教えちゃ商売あがったりだな、はは。

腕はいいから、良さげなパーティーで大物狙ったほうがいいぜ」


スキルに『感知(気配・音)』が増えている。

そういえば、さっきは交渉が働いたのかも。



再び狩りへ。


どんどん森の奥へ入っていく。

ヨウがこうしているのは金がどうとかではなく、『恩恵』を増やすためだ。

強くならなければいつまでもビクビクしていることになる。


この世界で『治癒』を持ち、現実感の薄いのは分かっている。

フレディーの家にいた時と同じで何もせずにはいられないのか。

どれだけ危険なことをしているか、薄々は気づいていたが・・・。


何かがおかしい。



ギャァァァ

だめだぁぁぁにげ


夢中で気配の方へ走った。


捻じ曲がった人間と、体が2つに千切れた人間がいる。

地面にいて動かない。

人間だ、間違いなく。


叫びこそしなかったが、逃げなければ・・・

「いやぁぁ」

まだ声がする。


スキル・・・『加速、自己加速、剣技』『洞察』が点滅している。

『冷静』が増えたのが分かった。

増え過ぎだ、冷静になれってことか。

無茶苦茶だ、理不尽だ。


自分のせいだ。


走る。

加速を『洞察』で最大自己加速と同等速度にしておく。

遅くしか動けない、が、確実に普通より早い。


でかい緑の変なゴリラがいた。

誰かまだいる。


近づくと木の巨大な棒を振ってきた。

コケそうになりながら避ける、ギリギリだ。


背が高すぎる、デカすぎる。


『跳躍』が増えた。

とこまで増えるんだ、これは。

やれと脅迫されているのか。


剣を抜き忘れていた、抜く。

棍棒を避けながら身を引くくし、一瞬だけ『自己加速』にして斬る。

緑ゴリラの腕が切れた。

型がなっていない、フレディーがいたらどやされそうだ。


加速が入ったまま、『跳躍』を意識して跳ぶ。

いつもの最後の型、そのままだ。

断然高いが。


『自己加速』にして剣を振り、分かった。

何も考えず真似ていたが、跳びながら腰を捻り剣の振りを増す技だ。


『冷静』に自己加速も加速もオフにする。

魔物の首が飛んだからだ。


何が『冷静』だ、おかしい。

冷静でも何でも無かった。


まだ続いている。


「2人死んでる。何かすることはあるか」

「形見を持って帰る。家族に」


見守り、終わったようで一緒に連れて帰る。


『感知(気配・音)』で、何かいれば迂回する。


ギルドに着いた、報告をするようだ。

遺品を全てギルドに渡していた、金も。

聞かれたとおり、ありのまま報告した。


「よくやった」といわれた気がする。

助けたのは女だった。見たことはある。


宿へ帰った。

汚れていると言われ、鎧と上下を脱ぎ袋に詰め部屋に戻る。


ベッドに横になった。

何もかもがおかしい。


狂ってしまったのか。


現在スキル:

『会話』(初期設定)『治癒』『加速』『交渉』『洞察』『自己加速』『模倣』『剣技』『感知(気配・音)』(NEW)『冷静』(NEW)『跳躍』(NEW)


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― 新着の感想 ―
[良い点] サクサク進んでいて読みやすくて好きです。 [気になる点] ギルドに戻って解体のことを聞いて、その後森?に戻った描写とかが飛んでるので少しわかりにくかったです。
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