2-3.カレン
エリザベス・・・昨日倒したレッドドラゴンの名前か。
ヨウはドラゴンの目の涙と、(ゆるして)という思念を思い出す。
そして・・・。
不意に記憶が真っ白になり『窓』のメッセージが浮かぶ。
[記憶と、思念の繋がりを止めた]
[『交渉・解明・冷静』を使い、順を追って話せ]
[決して屈するな、折れるな]
『交渉・解明・冷静』を強く意識した。
だが。
怒りに満ちたドラゴンの狂暴な爪が目前に振り下ろされようとしていた。
加速状態になり、ほぼ止まっているが。
前に試したように、速めの通常加速により考える時間がある。
[彼は察して、あと2人の記憶を読んだ]
[すまない、間に合わなかった]
[2人を逃し、3匹個別に戦え]
先程の作戦(指示?)は消えた。
間に合わなかったも何も、ヨウ自身が思い出してしまったのだ。
『窓』の指示は的確だが、予言でも万能でも無いようだ。
出来ることを考える、スキルの力も借りて。
最大自己加速で、片翼付け根を斬りつける。
3匹とも順番に。
減ったスタミナを左後ろのドラゴンから・・・奪えた。
使用分以上は奪えないがどうせヨウより劣る量だ、ほぼ無くなった。
『解明・冷静』でやるべきことを探る。
痛みを与えつつ、致命傷を負わせないよう、ボスドラゴンを何度も『防御無視』で斬りつける。
ブレスを吐く暇も与えない。
討伐目的ではない、可能ならば徹底的にやって優位を見せつけるのだ。
既にリーナはキリカと一緒に後方にテレポートしていた。
キリカも敵の力量が分かるようで、手は出さない。
自己加速を存分に使った分、右後方のドラゴンからも奪う。
やはりスタミナは尽きたようだ。
一応後方の2匹に『威嚇』を飛ばす。
襲うならこっちに来い。
左の方が下半身からブシャーと何か噴き出した、お漏らしか。
ヨウは声の限りに叫んだ。
「話をするんじゃないのか!
俺が3匹とも倒す、誇りを持たないドラゴンごとき!」
大見得を切った。
「俺」なんて言ったのは初めての気がする。
ドラゴンの言葉のはず、キリカやリーナには聞かれていないだろう。
ボスドラゴンの動きが止まった。
「どうする!」
(・・・ハナシヲキコウ)
人間がドラゴンの住処を襲ったり傷付けたりなど普通はありえない。
それどころか、ドラゴンは神聖で畏怖するべき存在だ。
「その人間達が来たのはいつだ」
(2シュウマエクライダ)
人間の時間で2週前?
そういえば、時間や単位などは前の現代に合わせて自動変換される。
普通に2週前位で合っているだろう。
そんなバカな事をするイカれた人間達。
あの金髪イケメン達を思い出す、大規模盗賊団。
思考を探られているのが分かるが、全てさらけ出す。
奴らにリーナの事で因縁をつけられ、卑怯な手を使ってきた事。
そして・・・。
燃える小屋。
焦げたゴリの姿。
涙さえ出ず、呆然とするリーナの姿。
そしてなぜか、捕縛時押収した「大きな光る腕輪」を思い出す。
(ウム)
ドラゴンが反応した。
続いて襲われた城、転がった多くの騎士たちの死体を思い出す。
《ユルシテ》
涙を見たあの時、残酷なあのドラゴンを赦すべきだったのだろうか?
無理だ。
ボスドラゴンは何かに反応した。
【竜の涙】が点滅している。
(オヌシハ、エリザベスノ ナミダヲ ウケトメテクレタ)
(レイヲイオウ)
(ソシテ、ワビネバナラヌ)
「奴らは絶対許さない・・・時間が欲しい。
復讐は果たす」
よく考えればおかしい話だ。
無礼を働いたのはドラゴンで、ヨウはそれを許す立場だ。
彼らに共感したのは、それが正しいと思ったから。
【竜の涙】は消え、【竜の同盟者】に変わった。
あの腕輪はエリザベスが持っていた記憶があると言う。
反応したのはその記憶で、盗賊団との結びつきが明確になったのだ。
「リーナ、もう大丈夫だ。
ドラゴンが治療できるか、最低翼だけでも」
「どういうこと?」
2人共、ドラゴンの思念は一部分かったがヨウの思念は見えていない。
言葉も分からなかったのだ。
成り行きを説明する。
2000近い魔力と知力で治癒は問題なかった。
更に練度が上がり、消費も減っているようだ。
(ケンガホシイカ、ワビニウケトレ)
巣に戻らないと無いようだ、ボスの背中に乗る。
強者と認めないと乗せることは無いと言う。
「2人も連れていけるか?」
(カレン ト エカテリーナ シダイダ)
「剣をくれるそうだけど、皆で行けないか聞いてる」
リーナとキリカに説明する。
右のエカテリーナはそっぽを向いている。
左のカレン――お漏らしした方――は答えた。
(いいよー、のってー。ただし治してくれたほうだけー)
ドラゴンが消えて裸の女の子がうつ伏せになっていた。
「のってー」
リーナが走り寄り、遠慮がちに跨る。
ドラゴンに戻った。
ドラゴン2匹のスタミナが多少回復、北へ飛ぶ3匹と2人。
キリカは呆然と見送った。
速度は想像もつかなかった。
山脈を幾つか超え、ボスドラゴンの巣穴に入った。
ドラゴン自ら光球で照らしてくれる。
バカでかい宝石などあるが、特に良い武器は無いと思えた。
莫大な数の宝物を見たせいか、初級だったのが『上級鑑定』になった。
エカテリーナも数は劣るが、同様だった。
後はカレンだけだ。
(ふふふふふ)
カレンのキモい笑いが響く。
今更だが、カレンの言葉はリーナに通じていた、普通の言葉だ。
カレンの巣には、人間のようなコレクションが。
刀剣も相当ある。
迷うほどあった。
3本、3振りというのか、明らかに良い物があった。
全て、剣というより片刃の日本刀のような物だ。
「これ3本使ってみたいけどいいか?
不要なら返す」
(ぜんぶあげるよー。そのかわりアレだまっててねー)
アレってお漏らしの事だろうか。
そうみたいだ。
誰に黙るのかは知らない。
良さげな一本を以前の紐を使って腰に吊るす。
後はストレージへ。
(カレンヲツレテイケ、タスケニナル)
洞窟から出るとボスがとんでもないことを言う。
(わたしだけにんげんみたいになれるからあっちこっち行ったことがあるからだいじょうぶ。
かたなもそれでとってきたのー)
独自の能力か、『窓』では見えなかったが。
(種族のとくせいらしいのー)
種族や名前、性別など見えないと今後不便が起きそうだ・・・。
ドラゴニュートと言うらしい。
ネットで絵を見た気がする。
緑のドラゴンに手足が生えたやつだった・・・。
泥棒はしてたが悪い子では無さそう?
帰りは裸の少女に跨るというのは無しで、ヨウがリーナを抱いて跳び乗る。
カレンは本当はカレリーナだが、面倒くさくて縮めたそうだ。
城下町の手前で降り、ヨウの予備の古着が何とか着れた。
改めて見ると、12歳くらいの女の子だ。
人型だと口で喋るので違和感はない。
宿に着くとキリカが騎手とティータイムを満喫中だった。
「ひとりだけ置いて行きおって。
ギルドにはヨウが追い払ったから大丈夫と言っておいたから安心せい」
「済まなかった」
「ヨウはでかいドラゴンに会ってからなんか逞しいというか、ふてぶてしくなったのう。
で、一人増えておるが、まさか・・・」
何が違うのかははっきりしないが、人型だとワイバーンも怯えない。
ヨウも2千超えステなのだから、ドラゴンという姿での何かの特性とか関係あるのかも。
「少しめんどいが、南にでかい城壁のあるラダっていう町があるからそこで合流して納品しようぞ。
詳しい説明もそこがいいのう、昇格試験も行う大ギルドじゃ」
現在スキル・称号:
『会話』(初期設定)
『リワインド』
『治癒』
『加速』『自己加速』
『回復』『簒奪』
『剣王』『防御無視』『魔断』『跳躍』『空壁』
『感知』『威嚇』
『解明』『交渉』『尋問』『冷静』
『模倣』『解体』『騎乗』『上級鑑定』(NEW)
【多くの信頼】
【剣の心】
【竜の同盟者】(NEW)
ステータス:レベル125(37回目)
体力2368、魔力1352、スタミナ2368
強さ2368、素早さ2368、知力1921、運100
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