1-18.尋問
オーガーの生態は謎だ。
ある程度の距離に近づけば何らかの方法で気づき、突進してくる。
イノシシなどとは違い、弱そうな個体から狙う。
新ウインドウで敵スキルが分かればいいが、余裕なので贅沢は言うまい。
味方のスキルやステータスも知りたいが。
新ウインドウにあるとは限らないのだがまどろっこしい。
既に森の奥、というか高地になるに連れて木が減り岩が多くなった。
完全にオーガー生息地である。
2匹が時間差で襲ってくる。
ヨウ、ガデスの順に一匹ずつ対処するが、実際はヨウ単独でいける。
連携して襲ってくるわけではなく、単に気づけば狩るようだ。
こんなのが麓に降りて来ないのは助かるが、理由があるのだろう。
そういうもんだと言うことで、全くどうでもいい事だが。
踏み込みすぎたせいもあり、もちろん敵位置に注意はしている。
だが次も2匹出た後、リーナ側にも3匹目が廻り込んで来た。
リーナ自ら火球で応戦するが、避けられ・・・爆風が凄まじかった。
ヨウが応戦する間もなく、続いて連続で放った氷槍の一つが命中。
魔石を取っているが、周辺のオーガーがどこかへ逃げていた。
訳の分からない事への警戒心はあるようだ。
頭はいいのに狩猟本能には従順、といったところか。
「魔力は大丈夫?」
「3分の1くらい減っちゃった・・・腹、じゃなくておなかすいた」
反省会というか、おやつタイムというか、一旦戻った。
アイテムボックスからリーナ弁当を取り出す。
こっちから「処理」しておきたいそうだ・・・。
「日曜にお料理教室やってるんだって、行けたらなあ」
「行けばいいんじゃない」
ガデスはそっぽを向き、体がビクビク痙攣している。
失礼なやつだ、ヨウはちゃんと耐えたというのに。
肝心な反省会をしなければ。
「近づきすぎなければリーナも行けるね。
火球は有効だけど、全部周囲のが逃げたから無しの方向で行こう」
「ごめん、知ってる魔法が少なくて。
本はバカ高い、あ、とても高いしギルドに聞いてみようかな」
ガデスが窒息死寸前だ。
「まだ時間が早いからギルドに寄ってから飯にしようか」
ヨウに2人共同意した。
「何してるんですか、朝はギルドに寄ってください!」
リリさんだ。
「なんかあった・・・出たんですか?」
「冒険者の基本中の基本です、何かあってからでは遅いんです!」
オーガー一択だったので、今日は寄らなかった。
忘れてた。
「マスターが話があるそうです、あとギルドカードを預かれますか?」
カードを渡し、2階へ。
2人は自分でそれぞれの事をやるだろう、ガデスは暇かも。
「お、見違えたのう。
わしも分かるほどとは、一体どこでドラゴン退治したんじゃ?
まあいい、誤解を解いておきたくてのう」
南の勇者以来、同じ力を持つものは警戒されるはず。
たとえ一部しか知らずとも、それが権力者などだとしたら・・・。
強く警戒したからか『尋問』が生えてきている。
大袈裟過ぎるが、今後のためにもここで事実を確認すべきだろう。
「一部の者は君の力を警戒する可能性も無いとは言えん。
じゃが、わしや仲間は君の味方じゃ。
君に直接会ってから、そうすべきだとますます確信した」
「信じていいんですね?」
言葉がきつくならないよう気をつけつつ、心では『尋問』オンに。
「ああ、間違いない。
表立っては無理じゃが、君を邪魔するものが現れぬよう裏でサポートする」
マスターは名前のリストをテーブルに置いた。
「かつて志を同じくした者達じゃ。
君の名は明かさず、可能性だけは手紙で遣り取りしておる。
各地に散らばっているが、何かに役立つかもしれん、持っておくがいい」
ヨウは鎧の裏へ紙を入れるが・・・。
「おお、ストレージじゃな!
勇者研究しておれば常識のようなもんじゃ、気にせんでいい」
ストレージってこの世界で存在する言葉なのかは知らない。
南の勇者が伝えたのかも。
「あの本も持って帰って読むか?
光の事も含む勇者伝じゃが、そこに入れておけば安全じゃからな」
「まだ字の勉強中で、そのうち・・・。
そうだ、リーナが魔法関係を調べているんですが参考になる物があれば」
「もちろんじゃ、娘に言っておこう。リリの事じゃ」
なるほど、傍若無人なのは娘だからか。
『尋問』のせいか、どうでもいい情報もポロポロ出てくる。
充分だ、感謝を述べて退室する。
リーナは資料室にいるという。
行くと十数冊の本が積み上がっていた。
火、水、光、風の基本から中級程度でもこれだけあるそうだ。
必要なのは内容の一部であるが、メモするにも多すぎるようだ。
リリさんに貸し出し許可の旨を伝え、『ストレージ』に放り込む。
枠は使うたび一行単位で増え、もう200くらいある・・・。
ソーティング(分類)機能が欲しいところだ。
1階に降りるとガデスがニヤついていた。
例の捕縛と、それが窃盗団の手がかりとなった事で報奨金が出たらしい。
「これ、忘れないように」
リリさんがギルドカードを返してくれた、Dランクに上がっている。
「事件解決時点でDランクの扱いにしたんですよ。
功績自体すごいですが、ランクで報奨が変わってしまうので」
「ありがとうございます」
ガデスはCランクなので500ゴールド。
ヨウは自ら戦闘して事態収拾した主役、同じく500。
リーナは当事者であり協力者、100と少ない。
「ほぼ何もしてない俺が500も貰うのは申し訳ないが」
「いや、証言があるからこそ奴らはわざわざ出頭したんだから。
覚悟も必要だったはず、感謝してるよ」
ガデスは証人として免責されただけでなく、貢献者として名誉回復だ。
報奨を断るわけにはいかない。
「必ずギルドには顔を出しなさいよ!」
相談窓口から叫ぶリリさんに軽く手を上げて出ていく・・・。
「作りたてのお昼にしましょ」
ストレージの今朝買った3人分も出来たてのはずだが。
折角なので宿で食べていく事にする。
午前はオーガー1匹倒すたびにリセットされている。
レベル25(11回目)
体力617、魔力355、スタミナ617
強さ617、素早さ617、知力498、運100
オーガーの効率は凄まじく(倒せればだが)、既に昨日の2倍弱だ。
「一緒にいるから感覚が鈍ってるが、確かにすごい威圧は感じるな」
威圧は使っていない、ガデスの正直な感想なのだろう。
ヨウには2人の成長度が気になるが、特にリーナが。
オーガーが出たが、感覚が変だ。
そのまま普通に首をとばすが・・・加速を使っていない。
無意識に、脅威に感じていないという事か?
狩場なので報告は後にし、最初のフォーメーションを保つ。
ずんずん進んでしまうが、油断しないようにしなくては。
それより、この調子で狩ってオーガーは絶滅しないのか。
『感知』を広げると、広範囲にいるのが分かる。
こんなにいるのに生息地が限られるのは面白い・・・
朝にもこれ考えたな。
エリア中央を直進し狩り、時間を見て帰りつつ狩る。
オーガーは常に縄張りを広げようとしていて、平均的に分布するのか。
死体を残した場所だけは避けられる、夜には他の獣が食って消えるのだが。
ラストは背後からも来て、3匹だ。
1匹はリーナが誘導弾のような氷槍で一撃で仕留めた・・・凄い。
覚えたてのはずだから尚更だ。
加速を使わなかった事を言うが、同じに見えたと言う。
「俺もこれだけ成長を体感したのは初めてだ。
ヨウお前は・・・、よく分からん」
「ヨウはヨウだから、前よりかっこ良くなったと思うよ」
「リーナに比べれば・・・あっ、げふんげふん」
とんだバカップルだ、ガデスに逃げられないうちにやめよう。
ラスト3匹も加え、午後だけで計7匹だ。
レベル25(18回目)
体力803/1031、魔力443/588、スタミナ803/1031
強さ1031、素早さ1031、知力782、運100
大丈夫なのか、これ。
やっとリワインド終了か。
まだ消えてない。
現在スキル・称号:
『会話』(初期設定)
『リワインド』
『治癒』
『加速』『自己加速』
『回復』『簒奪』
『剣技』『跳躍』『魔断』『感知』『威嚇』
『洞察』『交渉』『冷静』『尋問』(NEW)
『模倣』『解体』
【多くの信頼】
【剣の心】
ステータス:レベル25(18回目)
体力1031、魔力588、スタミナ1031
強さ1031、素早さ1031、知力782、運100
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