1-12.巻き戻し
負けるわけにはいかない・・・。
・・・リーナのためだ!
前の世界の記憶? くそくらえだ。
絶対勝つ、守る。
炎の球が10センチほどに近づいた瞬間、剣が光り自己加速全力で振る。
炎は切断され、消えた。
瞬間で自己加速オフ、減った分を全力でイケメンから奪う。
殆どスタミナは減っていないが、全ての数値が満杯になった途端イケメンがぶっ倒れた。
こいつのステータスがしょぼいのか、奪うには量が必要なのかは不明だ。
「まだやるのか!」
精一杯声を張り上げて言った。
「冒険者ヨウの勝利です。異論はありませんね」
リリさんだ、とんだ野次馬・・・助かった。
さっきのでかい奴・・・でかい人が群衆から現れイケメンを片手で担いだ。
弓と魔法師に顎で向こうへ行くよう促す。
背後からアタックが来た。
敵意は無い、逆だ。
柔らかい。
「ごめん、ごめん」
ウッウッという嗚咽が聞こえる。
周囲の冒険者が、手を広げ呆れて去っていく。
近くで見ていた者は色々気づいた、というかいつもの誤解『凄い騎士』として見ているようだ。
剣を抜くのも振るのも見えなかった、上級魔法を斬った、と。
まあそうだろう、ただ速くて意味のわからない『騎士』と思ってくれればいい。
魔法を斬ったのは『魔断』らしい。
自己加速中に使ったせいか、消費は全く感じなかった。
新たに『剣技』の列に分類されている。
背中に抱きつかれたままも変なので、一旦離れる。
リーナは「あっ」と一瞬自分に戻ったようだ。
改めてこちらから、抱くというより肩に手を回して受け止める。
「リーナ、あれってすごい魔法なの?」
「うん、かなり強い」
さっき上級魔法と周囲で言っていたが、適当な答えが返る。
「あんなの使えたら無敵じゃないか」
自分で斬り消滅させたのを忘れて、不満を言ってしまう。
「あれたぶん、今日半分以上何もできない」
今更だが、リーナは17・18くらい。
可愛い、この世界で一番可愛いんじゃないか。
いつものツッパリを思い出すが、あれもいいんじゃないか。
ゴリの知るルートでそこそこオークが狩れた。
ある程度の距離にいれば『感知』で分かるのですぐに遭遇できた。
2匹で1レベルずつ、もう1匹では上がらなかった。
もう普通の加速で、剣技と跳躍で倒せる。
そのうち加速無しで倒せるように・・・まだまだ無理かも。
昼にしようかと話している最中にもう一匹発見、討伐。
レベル30。
敵のステータス表示らしきウインドウが出た、もう驚かない。
敵がいないので表示が無いがはっきり分かった。
これで強奪の細かい挙動や避けるべき敵も分かるだろう。
もう一つなんか出た。
『リワインド』、出た瞬間効果が現れたようだ。
ん?
レベル1?
ちょっと待って!!
表示はレベル1、他の機能やスキルは全く変わらず、ステータスも下がらない。
洞察と冷静をフル稼働して考える。
魔石回収はさっきやってみせたので、今はリーナがやっている。
腕を組んで考えているが、リーナもゴリも放っておいてくれる。
『リワインド』は『治癒』より上の段に現れた。
規定の、あるいは何かの意思で組み込まれたということか。
デメリットは・・・未知のウインドウを開く事ができないだろう。
今までのは敵ステータス含め支障は無い。
レベルによるものといえばそれくらいか、補正に関しては不明だ。
メリットは・・・もしかして再度オークで6レベル程度、オーガーで20前後上がるのだろうか?
レベルが上がり続ければステータスは増えるが、それは正比例だろう。
確実に強くはなるが、高レベルほど必要な『恩恵』は増す。
さっきオーク1匹で1レベルが、次には2匹必要になったように。
上がりやすくなることにより、ステータスをどんどん上げられる?
最初のオーク事件の時は意識の誘導のような恐怖感があったが、今回は計算ずくのような。
あの青い光か、夢で少しだけ声を聞いたがちゃんと話してみたいものだ。
そういえばギルドマスターの情報もまだなのか・・・。
昼飯だ。
リーナが2つ包みを出したので何もせず待つと、やはり渡してきた。
「食えよ」
やっぱりというか、昨日こっそり入れられてたから当然か。
「実は昨日体力切れであれ食って助かったよ、ありがとう」
リーナは俯いているが、口が思い切りニヤけていた。
弁当は何気に袋にしまうふりをしてアイテムボックスに入れる。
非常食だし、アイテムの保存性のテストにもなる。
宿屋の美味い方の弁当を取り出す、ごめんリーナ。
冷たい目を向けられる前に機先を制して言う。
「リーナのは1人で楽しんで食うから」
彼女は既に肉を食いちぎるモードになっていた、目を潤ませながら。
「ションベン」
リーナだ・・・。
安全エリアに戻っての休憩なので木の陰に入ってゆく。
すこし声を落としながらゴリが喋りだした。
「ずっとあんな調子だ。
格下で女と縁の無いメンバーを選び女を意識させないようにしてきたんだ。
イケメンが嫌いでな、ヨウのようなヤツが現れて良かった」
ディスられてるのか喜ばれているのか、複雑だ・・・。
「あれは魔法の才能があるが、外見的にもあちこち引っ張りだこだった。
上り調子のイケメンパーティーに誘われてな・・・話した通りだ。
リーナを貰ってくれ、お前次第だが」
後はリーナが戻るまでふたりとも黙っていた。
数字はレベル1だが、全く変わりなかった。
オーク一匹でレベル6に達し、ステータスは確実にその分増えた。
レベル1(30からリワインド)
体力82/82、魔力50/50、スタミナ82/82
強さ82、素早さ82、知力65、運100
↓
レベル6(2回目)
体力82/96、魔力50/58、スタミナ82/96
強さ96、素早さ96、知力80、運100
各ステータスは知力以外一定に増えるようだ。
次は瞬時に自己加速を使い一旦減らし、相手スタミナを奪ってみる。
オークは各50行くか行かないか、1だけ減った体力と魔力も奪う。
調整は出来るが、一気に奪って行動不能に出来た。
これはズルすぎる、必要以外はやめておこう。
剣技の向上もできなくなってしまう。
レベルはオーク4匹で6、5、4、3と伸びて現在18。
リーナがはしゃいでいる。
「一日でこんなに力の上がりを感じたのはすげえ」
ゴリは今更上がっても、という顔だ・・・。
そういえば、倒した本人だけなく『恩恵』が入るようだ。
「パーティーも組んでないけど?」
尋ねると、一緒に行動して絆っぽいものが出来るだけで良いそうだ。
レベル18(2回目)
体力103/124、魔力70/74、スタミナ103/124
強さ124、素早さ124、知力92、運100
主なステータスは100を超えて運を追い抜いてしまった。
ギルドにも寄ってマスターの情報を確認したいが、まずはリーナの小屋で情報を確認してみる。
体力の増加により空腹感もあった。
ゴリは「用事を思い出した」と出て行く、わざとらしい。
リーナと向かい合って、日本のように床に座る。
リーナ弁当を袋から取り出すふりでアイテムから出す。
「傷んでないか?」
リーナが膝の上に乗せた弁当を嗅ぐ、弁当が無ければ危ない体勢。
いやいやいや、妄想し過ぎだ。
「昼のままだね、不思議」
いつもと口調がちょっと違う、近づいたまま見上げる顔が可愛い。
衝動的にリーナの両肩を掴んだ。
ずっと見ていたい、多分それだけだったが・・・
リーナが目を瞑った。
彼女の唇に唇を当てた。
子供のキスだ、唇で唇を撫でる。
ちょっとだけ出した舌で軽く中央に触れた。
リーナが体を起こして見ている。
膝には弁当、動けない。
大失策だ。
弁当を頑張って7割減らせた、袋経由でアイテムに戻す。
あ、アイテムというか収納関係について聞くことがあった。
主にそのために来たんだった。
「ねえ」「あの」
「何? お先にどうぞ」
「明日だけど、どっかに出掛けないか? 一緒に」
「うん、いいよ」
明日が土曜か日曜に当たる日か、フレディーは無休だったが。
時間を決め、こちらからも聞く。
「あのー、魔法で収納とかある?」
「あるけど、小物しか入らない。
魔力も使うし役立たずだけど・・・あ、今日色々増えた気はするな。
何かに使うのか?」
「いや、気になって聞いてみただけだから」
最後はリーナの口調も調子を取り戻していた。
ゴリが家の前にいるかと思ったが、本当に出掛けたようだ。
ギルドで情報を確認しておかなければ。
リリさんにもお礼くらい言っておこう。
途中ステータス:レベル1(30からリワインド)
体力82、魔力50、スタミナ82
強さ82、素早さ82、知力65、運100
↓
最終ステータス:レベル18(2回目)
体力124、魔力74、スタミナ124
強さ124、素早さ124、知力92、運100
現在スキル:
『会話』(初期設定)
『リワインド』(NEW)
『治癒』
『加速』『自己加速』
『回復』『強奪(敵専用)』
『剣技』『跳躍』『感知』『魔断』(NEW)
『洞察』『交渉』『冷静』
『模倣』『解体』
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