第2話 ヒトリノ夜
マスターの拳が、脚が、光の曲線を描く、思念体は耐え切れず悲鳴を上げる。
攻撃が徐々に効き始めている証拠だ。
「マスター!そろそろ頃合や!」
ヤマグチがマスター向かって吼える。
マスターはうなずくと腰から一本のサバイバルナイフの様な物を取り出し構える。
鞘から抜かれたそのナイフの刀身は青白く光り、手元を少し照らす。
「今、解放してやる・・・・!!」
ナイフを構え躊躇無く突進する・・・・
しかしマスターの動きを牽制するように3発の銃弾がマスターの足元を攻撃する。
間一髪それを避けると銃弾が飛んできた方向へ目を向ける、世界が停止し思念体とマスターとヤマグチ以外動くものがいるはずがないのに、そこにはもう一人存在していた。
その姿はまるで機械仕掛けの忍者のようなフォルムをしていて口元にはナイフのようなものが付いており、その身体は真夜中に溶け込むように黒い。
そして手元にはサブマシンガンほどの大きさの銃があった。
「よぉ、兎!相変わらずチンタラやってんなァ!」
謎の男がマスター向かって叫ぶ
「・・・・ハイフィールドHigh Fieldか」
攻撃を寸で避け、手をついた体勢から起き上がりハイフィールドと呼んだ男を見上げる。
「お前また来たんか!帰れ!!」
ふいにヤマグチが吼える。
「なんだァこのクソダサい犬まだ生きてたのかァ?」
肩を揺らしハイフィールドが嘲笑う
「なんやと?!お前!・・・・なんや!!かかって来い!!」
ヤマグチが吼える、完全に挑発に乗ってしまったようだ・・・・
突然会話を遮るように思念体がハイフィールド目掛けて攻撃を開始する。
「アァ?」
飛び交う触手を逃げる様子を見せることなく首を傾げ見つめる。
・・・・思念体の攻撃は確実にハイフィールドを捉え、攻撃したかに見えたが、ハイフィールドの目の前で弾ける。
「ウ、ウギイィギイllflf!!!!!11イタイいタイアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
悲鳴を上げる思念体
「ゴミが、戦う相手を間違えんなヨ」
両手を上げ、呆れたポーズを取るハイフィールド
「・・・・今何が起こった」
「わからへん・・・ただ相変わらずヤバイやつなんわ確実や」
マスターとヤマグチが会話をする。
「ところで兎!お前にいいもの見せてやるヨ」
「・・・なんだ」
「これはァなんでショー???」
ハイフィールドは懐からマスターが持っている物と酷似している鍵を取り出す。
「?!なぜお前がそれを持ってるんだ・・・・」
驚きを隠せないマスターにハイフィールドが畳み掛ける。
「面白いのはこっからだよ兎ィ・・・」
ケタケタ笑いながらハイフィールドが悲鳴を上げ、苦しんでいる思念体の近くまで行く。
「ラストダンスだ・・・まっ踊れヨ」
手に持った鍵を思念体目掛けて突き挿し捻る。
憎悪が増大する。
思念体の悲鳴が増し、形を変え始める。
「おいおい・・・・なんちゅーことしよんやアイツ・・・・」
ヤマグチが驚きが隠せなく思わず出てしまったかのように小さな声でつぶやく
思念体はまるで卵のような形になる
「・・・・なんだ、何が起こる?」
マスターがナイフを構え直す。
「アーーーーハッハハハ!!!!さぁ!兎!大好きなこの街を守ってみろヨォ!!!!」
腹を抱え笑う
卵のような物体がひび割れ、中から人のような『何か』が現れる。
「------------------------------!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
耳を覆いたくなるほど咆哮を上げるかつて思念体だった『何か』
その目は確実にマスターを捉えている。
「な、なぁマスター?あれなんや?完全にヤバイんやけど」
引きつった声でヤマグチが尋ねる
「わからん、だが3rd以上の何かには違いない」
じんわりと汗が浸る
脳が、身体全体が「アレはやばい」と伝えてくる。
気を抜くと逃げ出してしまいそうになる
しかしここで引く訳にはいかない
「祖父が守ったこの街を私が!このシャーロットCharlotteが!!守り抜く!」
高らかに笑い上げるハイフィールド
生み出されてしまった悲しき『何か』
シャーロットは構える。