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Mr. midnight Hero  作者: nimono
1/3

ツキアカリのミチシルベ

ここは月が見える頃にオープンする喫茶店「midnightミッドナイト


疲れ果てた人々が一杯のコーヒと共に心の重荷を少しだけ下ろせる珍しい場所


今日も数名のお客さんが来てくれている


・・・ここに来るお客さんとはそんなに話はしない

皆それぞれの思いを夜空に思いを馳せているからだ。


私がカップを拭いていると声が聞こえてくる。

数年前からここで働いてくれているアルバイトの悠里君だ、歳は二十歳になる。


「マスター、コーヒーの発注書、全部書いておきました♪」

そう言って私に微笑んでくれる、いつも素敵な笑顔で接客もしてくれるのでファンも多い


「ありがとう鈴木悠里君、ではきゅうけ・・・」


不意にポケットに入れているガラケーのバイブレーションが鳴る。


あまりお客さん前で開くのはどうかと思い、カウンターの下から画面を開く

液晶が現れ[新着情報一件あり]の表示、私は暗証番号を入力して中身を確認する。


【○○地区ニテ思念体発生、至急対処セヨ】


「そうか・・・もう溜まる頃合か・・・」

携帯を閉じ、少し溜め息をつく

私自身、綺麗な夜空と店内のオレンジ色の照明が好きでリラックスできるのだが・・・

そうも言っていられない状況なので致し方ない。



「悠里君、すまないアイスにつけるウエハースを切らしていたようだ」


「え?ウエハースなら先週・・・」


「いや、余分に買っておいたほうがいいだろう、すまないが少しの間、お店をお願いできるかな?」


「え?はい、大丈夫ですけど・・・」

悠里君は首を傾げながらも了承してくれる。


私は悠里君に『ありがとう』と言い残しドリップしているコーヒーと店を託し裏口から外へ出る。


ここから○○地区へはそう遠くない

しかし歩いていくとなるとそれなりに時間がかかる。


「ふむ、少し急ぐか」

私は裏口に停めてある黒のクロスバイクに跨る。

すると自分の頭より少し高い所から声が聞こえる。


「お、マスター今から女のとこでも行くんかいな」

裏口の階段の上から小さい狛犬のような生き物が独特な訛りで私に話しかけていた。

この生き物の名前は「ヤマグチ」なんだそう・・・

自分でそう言っていたが、本当かどうかは私にはわからない


「それならどんなによかったか・・」

私は呆れたように溜め息をつく


「はっはっは!思念体ちゃん移動してんで?まっ、着いて来なさい♪」

ヤマグチは階段から飛び下りて華麗に着地しそのまま走っていく

その後を追うようにペダルに足をかけ踏み込む。


---------------------------------------------------------------


「マスター!あれや!!」

ヤマグチが立ち止まって叫ぶ


「あぁ!私にも見えている!!」

少し離れた所に真っ黒なモヤのかかったような人型の何かが蠢いている。


「まずいな・・・人型にまで成長している・・3rdまで時間が無さそうだ!」

クロスバイクを近くに停め、思念体のところまで走る。


「ヤマグチ!!頼む!!!」


「あい!任せといてー!時間・・・止めるでー!!!」

ヤマグチはその場で立ち止まり尻尾を立て、目を瞑り念じる。


するとヤマグチの足元から景色が灰色に広がっていき時が止まる。

時間が停止した世界・・・正確に言うとヤマグチがいた場所から一定距離を切り取って[世界を反転]させる

ヤマグチが使える不思議な力の一つだ。

これによって誰かに被害が及ぶのを塞ぐことができ、マスターも思う存分戦える。


そしてマスターが思念体の元まで辿り着く


[イタ、イ、、ツ、、、ライ、、、モウイヤ、、、、]


「思念体」と呼ばれる物体から人の言葉のような物が聞き取れる。


この思念体とは人の不の感情から生まれ、最初は小さなモヤのようなものなのだが

それが集まっていくと徐々に人の形になり最後は怪物化し人を襲ったりする。


マスターとヤマグチはそのモヤを段階で呼んでいる。


小さなモヤは1st

モヤの集合体から人型までは2nd

怪物化が3rd


その先は・・・見たことがない・・・できればこの先永遠に見ないこと願っている。


私はこの不の集合体、いわば「感情」と戦っている。

--------この町を、この綺麗な夜空を不の感情で多い尽くさない為に



蠢く思念体を前に私はポケットから少し大きめでレトロな鍵を取り出し正面に向け念じる。


「---イマジネーション」


すると目の前に月の光に照らされた扉が現れる。


2,3歩前に進み、扉の鍵穴に手に持った鍵を挿しこみ、捻る。


「・・・その感情、解放する。」


そう呟くと同時に扉が開き光と共にマスターを包み込む



---------------------------------------------------------------




--------------まばゆい光が夜に溶けこむ。


月の光が反射してマスターの姿が鮮明に浮かび上がる

真夜中でも際立つ白のボディにウサギの耳を模ったような頭部

そして首元には黄色のマフラーのようなものが巻かれている。


マスターは獣と機械の融合体のようなしかし荒々しさは無く、洗練されたフォルムに文字通り[変身] していた。



「---ヤめ----タイ-----いy----クル--na---!!!」

思念体が悲鳴をあげ、腕のような部分を触手のようにしてマスターを襲う。


「マスター、危ない!!!」

ヤマグチが察知して変身したマスターに呼びかける。


「問題ない!」

襲い掛かってきた思念体の腕を払い除け、そのまま蹴り上げる。

ズルズルと腕が思念体の元へ戻っていく。


そしてマスターはその場で深く腰を落とし、戦闘態勢を取る。




-------------静寂に包まれる。





マスターは思念体に向かって翔る。





時間は1時になろうとしている。

今ここに誰も知らない・・・いや、知らなくていい戦いが始まる。






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